かくたです。
早く発信しないと、今週末は韓国なのです。 ------------------------------- ヨルダン旅行 2005年7月31日から8月7日 カタール航空、ANAにて、関空より、カタールの首都ドーハ経由、アンマンへ。 天然ガスの備蓄が後250年分はあるという、世界一リッチな国カタール。1948年の天然ガスの発見が、それまでの真珠採り、漁業、牧畜の民の生活をごろりと変えた。いまや国民の6割は移民労働者で占められ、ローカルと呼ばれる人々の8割は公務員。税金なし、教育医療無料。イラク、ヨルダンなどの中東の国々以外に、スリランカ、ネパール、パキスタン、ブルガリア、など行き会った人たちだけでも多彩な国籍の人々が天然ガスマネーに群がっている。街はまるで建設会社のモデルビル展示場。茫漠とどこまでも開発することのできる砂漠地帯に、石油より高価な水を毎日二回水遣りすることで維持されている緑で縁取られて点在する。 天然ガスの8割は日本向けの輸出なんだそうだから、日本の購買力が、カタールをして、カタールたらしめているわけでもあるのだけれど。 さて、なぜカタールから、ヨルダン女性連合のハナシを始めたのか。それは、「移民労働者」の存在が、ヨルダンでも色濃く見られたからだ。中東はいずこも民族と宗教と国籍のモザイクだ。しかし、それ以上に、階層のモザイクが際立ってもいる。ヨルダンで、「いま一番金持は誰?」と尋ねると、「ドーハン」(カタール人)だと言う。そして、それは服装でわかる。 ヨルダン女性連合が女性に対する暴力から女性を守る活動を始めたら、外国人労働者の問題にもかかわることになった。特に、家庭内労働を提供している移民労働者の立場は悪い。家庭内における虐待から救出すると、移民労働者の出身国大使館からは、感謝されることもあるし、資金提供を受けることもあるが、いやがられることもあるという。「彼女たちは働きに来たのだから」と。こんなことで文句言っていたら、働けないじゃないかと 『メンデ 奴隷にされた少女』や『グローバル経済と現代奴隷制』が示すように、現在も奴隷制度は生き残っている。家庭内に「召使」がいる状態に慣れているということは、どういうことなのかと思う。「家族のようなもの」と、たずねた家庭ではどこでも説明を受けた。「家族のように扱っている」と。 空港で、ドーハンの女性たちの周りには、必ず赤ちゃんを抱いたり、手を引いたりしている女性召使たちがいた。ランチを食べに入ったレストランでは、離れた席で赤ちゃんの相手を一人していた女性召使がいた。観光地の暑い日ざしの中を、子どもの世話をしている女性召使たちがいた。わたしたち17名の団体を自宅にまねいて歓待してくれるキッチンに、女性召使が、たちが居た。 拡大家族における家事労働は負担が大きい。特に、ドーハンなんて、5-6人の子どもが数が平均だ。だから召使いが必要だ。応接セットが3つも4つもある家族がホームパーティをするような文化である場合、召使がいると楽だ。ということもわかる気がする。 労働者の側も、自国に子どもたちを置いて出てきていたり、若くして働いていたりする。彼女たちが選んだ職業であり、誇りのある、しっかりとした給料をもらえる仕事なのだと、考えはする。 同時に思う。もしもわたしが日本にもあったかつての『紀ノ川』のような時代の、女主人であれ、召使であれ、そのような状況におかれたら、いまのわたしの精神の均衡は到底保てない。と。 そして思うのだ。いま、こんなにも職業が多様になっている時に、そしてヨルダン女性連合でも、社会福祉関係、弁護士、心理学者などの職業についている女性たちがいる中で、女性が「家事労働」従事者に就職していくことの意味を。『ダウリーと闘い続けて インドの女性と結婚持参金』でも思ったが、「家族」という有り様に、取替え可能性のコンセプトが入り込むことが、女性問題であるのだ。 オールダス・ハクスレーは『すばらしき新世界』1934年で、究極の階層社会を描き出した。卵子の段階からの格差、格差を強調し、格差を容認する育ちと意識の持ち方、そして社会的役割の違い。1960年代70年代は、そのような未来を拒否したところから始まったはずだった。わたしの意識も、そのような影響を色濃く受けている。その思想は未熟ではあったかもしれないが、根源的な問いを含んだものだったと思う。そして、その影響は中東ですら同様であったという。アンマンの街中にミニスカートが闊歩したというのだから。しかし、80年代のイスラムの復権が、ミニスカートを駆逐したと同時に、60年代70年代の希求した普遍性ユニバーサリティも、駆逐したように、わたしには思える。 処女妻がいる天国を描く宗教、神を信じないものを不道徳な存在と決め付ける宗教、女を、夫、兄弟、父が養わなければならないとする宗教が、なぜフェミニズムにとって危険でないのか。わからないままである。ただ、そのことを言うのは、あの環境では無理だということは、とてもよく理解できた。まじ怖かったです。 一方で、中東問題が宗教問題でないことは、よくわかったんですけれどね。事務局長のナディラ・イッサ・ハマさんは、自身もパレスティナ難民だが、イスラム原理主義については、戦うために防衛的になるのだと、解説していた。 帰りのカタール空港でも、成田でも、インドやアラブの民族衣装を着ている日本人女性「妻」たちを多く見かけた。どうやら「女」というのは民族に所属する記号らしい。民族のアイデンティティの復活は中東に限らない。そしてそれは、かえって1960年代70年代のしゃにむな「西洋化」の波、時代の画一性からの解放あるいは距離と精神的余裕にもつながるのは確かだ。 ともあれ、今回、中東で感じた危機感と圧迫は、日本社会のいまにつながるものがある。本当の女性解放運動は、これからなのだと思う。そして、何が女性解放なのかを探る道は端緒についたばかりだったのだということ。本当に、自分自身が解放なんか求めているのかね、も含めてね。時間のかかるプロセスをわたしたちは始めたばかりなのだ。圧倒的な、性急な変化ではなく、ていねいな、自覚的で主体的な変化の波を起こして行こう。
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| 2005-08-18 18:19
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