チェルノブイリの祈り
スベトラーナ・アレクシエービッチ、岩波書店、1998
原著1996
2373冊目
2015年のノーベル文学賞受賞。
自分へのインタビューも含めたインタビュー集。
人が住まなくなったチェルノブイリ原発周辺地域に、戦争を逃れて移り住んで来た人々の物語がある。
第二次世界大戦の記憶と原発被災を比較して語る人がいる。
原発被災の被害の「見えなさ」について語る人がいる。
原発事故が起こった時、「火災事故だから」と招集されて出向き、14日でなくなった消防士の妻がいる。
通底するのは不条理か。
いま、著者はプーチン大統領を独裁者と呼んで非難し、海外で積極的に発言しているという。
人類が開いてしまった地獄の門。
原発
戦争
人類は、いつ地獄の門を開いたのだろうか?
「のさり」
「恩寵の谷」
「苦海浄土」
水俣病や足尾銅山の表現の中に、観音様や仏様、浄土、がかいま見える。
からだの不自由な子をして、「仏」をそこにみる。
「祈り」
異質なものはあるにしても、一人ひとりの物語を描き出すことが、共通している。国民動員や国家体制というものは、簡単に達成できるものではないのだと。
『苦海浄土 わが水俣病』石牟礼道子、講談社文庫、1972年、原著1968年、聞き書きの体裁をとりつつ、著者が被者に憑依したかのように縦横無尽に内面を語らせた文章。こんなに饒舌な、無筆の漁民は、いない。では、何も言うことはないのか。その背景にあるものを、同郷のものとして共有しているものとして、語らせる。
『のさり』 水俣漁師 杉本家の記憶より、藤崎童士、新日本出版社、2013
杉本英子さんには一度だけお会いした。網元の親方として10代の少女時代から船を仕切って来たのだという。その杉本家についての聞き書き記録集。
時代をして語らせること。語らせることのできる人が受賞したことに、あらためて感謝である。
北上市「鬼の館」
おもしろいことに、鬼を四つに分類している。
1. 大人 巨人伝説、怪力など
2. 鬼神 神事などに出てくる力をもつ存在
3. 餓鬼 仏教に帰依する鬼
4. 妖怪
鬼女もいるから、両性に存在するという。
■戦争は女の顔をしていいない