わが家の母はビョーキです
中村ユキ、サンマーク出版、2008
2361冊目
2010年には続編が出ている。
統合失調症(2002年に名称が変更になったらしい)の母と4歳の時から暮らして来た体験をまとめたもの。
脳の病気である統合失調症は、薬や対症療法などで治癒するものだということ。
トーシツの人の幻聴や妄想は、鏡のようにまわりや人間関係を映している。
EE、批判・敵意・心配のしすぎなどExpressed Emotionが高いほど、再発率が高くなる。
心配事ややらなければならないことなどのプレッシャーが高いと不安定になり、追い込まれる。「大丈夫だよ」ということを繰り返し伝えること。
著者の場合も、百貨店勤務という安定した職を捨てたことが、母親の症状に影響したのではないかという。つまり、経済的な不安。そして、不定期的な働き方、締め切り間近のイライラなどが、鏡のように母の不安を強めていたのだ。
そして、ラッキーなことに、著者の結婚相手が介護士の職についたことで、経済的な安定と介護経験を通した経験値の高さが、家族関係を格段によくした、という物語。
これまでの30年はなんだったのだ?
正しい理解と対処法によって、こんなにも暮らしは変わる。
チョー楽天的な夫の出現によって、お母さんもハッピーになった。
例えば、こんなエピソード。
調子が悪くなった時、母がテーブルをこぶしでたたく。著者は「やめてよ、壊れるじゃない。いくらしたと思っているの?!」といらだつ。夫は「おかあさん、手が痛くなるんじゃない?心配だよ」と対応する。
何日も寝込んでしまう母にいらだつ著者。「サボリ」だと批判する。それに対して夫は「しんどくなったら寝ようねぇ」と対応する。
脳の病気のせいで、普通取捨選択して取り入れられる情報が、全部押し寄せてくるような状態になるのだという。考えただけでもこわいことだが、そのせいでとても疲れるのだとか。なるほど。
疲れたら、休む。なるほど。
たくさんの人の役に立つといいね。親子はどこか似ているから、反応が相乗的に激化するケースもあるはずだ。そこに第三者が入ることで、違う対応が生まれる。
そんな地域支援のネットワークも、活用できることを知っておくのも大事だね。
そんなお母さんも平成25年に他界。晩年がおだやかだったこと、読んでいてとても嬉しいでした。
東京新聞 2015年9月20日