戦争犯罪の構造 日本軍はなぜ民間人を殺したのか
田中利幸編、大月書店、2007 2334冊目 日清戦争、旅順虐殺事件、台湾植民地化戦争 抗日義兵闘争に対する「應懲的討伐」 1919年、アムール州における「過激派大討伐」 南京大虐殺事件 中国雲南省にみる日本軍の住民虐殺 シンガポール華僑虐殺 抑留者虐殺、「秋風」、カヴェエン 占領地民衆に対する大本営の認識 以上の各章と結論である。 これらのケースから、市民に対する虐殺ケースの、日本軍の特徴。固有の残虐性。軍隊という普遍性を洗い出そうというのが、この本の目論みである。 広島平和研究所による研究プロジェクト。2002年から2004年。 思うに、市民を殺して軍をすすめるのは侵略だよなあ。日本は、西欧諸国に対抗すると、つぶされないためだといいながら、アジアを侵略したんだよなあ。 侵略すると抵抗される。抵抗されると味方が殺される。味方が殺されると報復する。報復するだけでなく、侵略であるので、住民も抵抗する。住民と兵士の区別がつけられないので、無差別に殺すことになる。無差別に殺されると恨みが募る。味方の殺され方も闇にまぎれたエキセントリックなものになる。 残虐行為の連鎖が止まらない。侵略であるからだ。拡張主義でない戦争など存在するのだろうか? ケースごとの検討は、引用し始めると膨大なので、結論を簡潔に、野田正彰さんの「結論」からまとめる。個別の兵士や将校の感傷や憤慨でものごとの本質を見誤ってはいけない。 もっと取り上げるべき事件はあるが、それらは今後の課題として、それぞれの事件について、加害者、被害者だけでなく、加害者をとりまく人々についても分析に加えた。 p.267〜 第一欧米を意識し「戦争の文明化」を意図したが、実際は村落焼夷作戦を行った。(ここで、筆者は「西欧の目がないところ、中世の野蛮な戦争文化を引きずっていた」と書いているが、わたし中世の戦争が野蛮だったとは思っていないので、そのままの引用はしない。P.270) 第二虐殺は下級兵士による偶発的なものという説明はあたらない。すべて軍上層からの命令であり、計画的。「畏怖を抱かせて統治しやすくする」という動機もあった。中国人兵士は捕虜にとらないという方針もずっと継続。事変は戦争ではなく、戦争でなければ何をやってもかまわないという論理。 第三 自らを「文明の戦争」をしている軍隊とし、それに対抗する賊、土匪。ゲリラ戦は卑怯な犯罪ときめつけた。願望による妄想、妄想による現実否認。アジア蔑視。 第四 日本は兵站を重視せず。せまい列島内での戦争体験に引きずられ、農家から現地調達する気持ちでいた。長期化すればそれは不可能になり、さらに熱帯では食料備蓄がない。小集団による蛮勇を理想化し、それを天皇への忠義で塗り固めた。突撃の絶対化 第五 全体思考ができず、自分に都合よく単純化された正義や邪悪の分別に生きる者は、他者の怒りに反応しやすい。自らが侵略軍でありながら、少し攻撃されたからといって逆上し、集落を皆殺しにする。274 謀略にひっかかりやすい。 第六 軍隊内に双方向の会話がない。軍隊は上官からの命令によって動くもの。しかし、民主的な会話がなければ、力を持てない。少数者が無謀な判断をし、多数はそれに追随するだけ。破局にいたるまで訂正不能。 第七日本軍は初年兵への抑圧が徹底していた。地主と小作の階級分断された貧村から来ていた彼ら、収奪されてきた彼らは、等しく非人間的に扱われることで、平等を感じた。その後の階級差と年次差は農村の封建的制度そのものであったが、その矛盾にはきづかず、侵略地での弱者への暴力に転化された。 病的なまでの軍人気質に適合した人格の受容。 第八 エリート軍人の人格形成。「執着性格」=模範軍人。天皇制日本が求めた期待される人間像。「仕事に熱心、凝り性、徹底的、正直、几帳面、強い正義感や義務責任感、ごまかしやずぼらができない人」。 アイヒマンだね。 几帳面であることと、それを評価する秩序の硬度は相関している。こわばった精神。 内に向かった極端な几帳面は異なる思考と衝突したとき、他を排撃するか、その場その場のデタラメな対応しかできなくなる。部分社会ごとに硬直していった几帳面さは、より大きな全体的社会の運営におけるデタラメと共存。278 そして、暴力を肯定してきた観客としての日本人。 敗戦後も、被害を強調するだけで、侵略地の人々の悲惨を想うことはほとんどなかった。280 近代の日本人は好戦国民であった。・・・「やれ、やれ!」と囃し立てた。 その特性を四つ指摘。 第一欧米の模倣、文明開化、和魂洋才、脱亜入欧など、内発的な近代化ではなかったがゆえの不安定さと優越感。 第二 欧米への恐怖とコンプレックスで造られた天皇制国家主義は平等に対して抑圧的。イデオロギーを否定するものとしての社会主義に対する恐怖心。反共イデオロギー。 第三 異文化との交流がとぼしい。自分の思考を訂正する機会がない。 第四 天皇制に一元化されていった社会では、事実を知るためのマスコミが育たなかった。三権分立は機能していなかった。282
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