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NPOと社会をつなぐ

94-3(439)NPOと社会をつなぐ NPOを変える評価とインターメディアリ
田中弥生、東京大学出版会、2005

いい本である。田中さんも、昨日紹介した清末さんと同じく大阪大学国際公共政策学博士課程。この本は、その博士論文の後半をベースにしたものだという。

17年間NPOのインターメディアリを研究して来られたというのだから、まだ「ネットワークの時代」なんてことが言われていたころのことだろうか。また、JATANの黒田洋一さんなども、「資金の再配分機能」を果たせる団体の必要性を行っておられた頃のことだ。

市場メカニズムというサービスと対価変換装置に対して、NPO自体が資源を社会サービスに変える資源返還装置であると、田中は考える。市場メカニズムの働かない場で、どのようにその変換が適正化されるかという課題と、さらにそこにインタメディアリという仲介装置の存在が果たす役割があるということだ。

ERICの場合を考えてみると、収入の半分は自治体や公共団体の研修委託という「公的な資金」を公共的教育課題のための指導者育成というサービスに変換している。残りの半分は個人的な資金だ。

そこにインタメディアリが介在するとすれば、それは現在環境省などがとりまとめている「研修登録制度」のような広報機能だろうか。田中のような議論とはほど遠いところに存在しているわけだ。それがなぜかというのはまたおもしろい課題なのだが。

NPOの変化と進化ははげしく、だからこそ、NPOを取り巻く課題も進化していると著者は言う。1990年代までの「無関心」が「関心/無行動」に、そして「探索」「参加活動」と変化してくる。探索活動が市民層に厚くなったときに、「選択肢不足」「ミスマッチ問題」が生まれている、そこに必要なのがインタメディアリであり、またそのインタメディアリ機関が、機能するためには「評価」能力が不可欠なのだという。だからこそ、インタメディアリが存在するNPO社会は、発展する。というか、評価というものは、点検改善につなげるためにも行われるものだから、その二つの目的を果たしてしまうのだよね。

いま、どのような評価方法が活用されているのか、また、参加型評価も行われている辞令が紹介されていたり、NPO評価について考えるためにも、適切な本である。
by eric-blog | 2005-07-30 09:36 | ■週5プロジェクト05
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