アドラー 一歩踏み出す勇気
中野明、SB新書、2014
2324冊目
アドラー心理学のキーワードは「健康さ」「劣等感」「勇気」かなあ。
わたしがいちばん好きなのは、「健康さ」の定義で、「所属」「信頼」「貢献」という要素が社会的存在としての人間の健康さだというもの。とくに、わたしはこの順番が大切だと思っていて、信頼をおけない所属集団に対して貢献を求めるのはいかがなものかということだ。
この本は著者もあとがきに言うように、とても珍しい心理学の本になっている。
ある会社で「人間形成トレーニング」を受けるようにと指示された男・松田が、毎週土曜日、加羅友一さんの指導を受けることになる。
その時、手渡されるのが『貢献の栞』。そこには七つのステップが書かれている。
第一のステップ自己成長の鍵は共同体との良好な関係にある
第二のステップ人が持つ劣等感、それは飛躍の原動力である
第三のステップキミは私的論理の虜になっていないだろうか
第四のステップ人生の正しい目標とは共同体への貢献である
第五のステップより多く得る人からより多く与える人になれ
第六のステップ誠意ある態度とは相手を思いやることである
第七のステップパートナーには献身で接することがすべてだ
あまり話すとネタバレになるので、やらないけれど、第一のステップで指示されたのは割り箸を口に横長に加えて、笑顔を作るというアレ。最近では、誰かがアメリカにいる時の気持ちとの違いを言っていたなあ。アメリカでは笑顔が多いと。
これほどアドラー本があふれている(ように、わたしには思える)のに、町に笑顔が増えないのは、幼児性が高いからなんだろうねえ。いい人的だと「つけいられる」と。「つけいられる」と身構えることそのものが幼児的なんだよねえ。
後発先進国でしかない日本は、こすい、ずるい先進国を相手に、キャッチアップに躍起だった。ずるいやり方をまねてみたり、「あいつもやっていることじゃないか」と言ってみたり、同じように後発国をいびってみたり、金にあかせて力を誇示してみたり。いろいろなことをしてきた。
でも、そろそろ、アドラーさんの言うこと、セリグマンさんが証明したことを信じてもいいじゃないかい? 共同体への貢献、良好な関係づくりは笑顔からなんだよ。
はあああああ。ためいき。
セロトニンはね、どの民族でも人種でも関係なく、効くんだ!
と、無愛想な京成成田スカイライナーの車内で嘆く。
ま、松田さんは、それなりに、ご家族とも良好な関係を結び、抱えていたあるプロジェクトもうまく行くんだけどね。そんな結末は見えている? ま、そうなんだけどね。普通のハウツウ本より説得力があるかというと・・・・
何を言われているのかいまいちわからんところもある。ひっかかりがあるということはいいことだね。