「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか
鈴木涼美、青土社、2013
2321冊目
被差別の側はよく語る。語らざるをえない。それが存在証明だからだが、そのことで差別がなくなるわけではない。
AV女優も、A女優であるということは、言えないし、本名で出ていることもない。どこか、後ろめたい。
そして、しゃべりはAV女優の「業務上避けられない行為」であり、自分自身に必要な行為となっている。261
なぜAV女優になったのか。そのかたりをファンが期待しているのだ。それに答える中で、彼女たちのかたりが確立していく。
「意志や動機ややる気が確固たるものになればなるほど、AV女優は体力的、精神的なきつさ、困難にも立ち向かい、挑戦してくようになる。」262
意志と動機をもったAV女優をつくる、中核的な要素となっている。
しかし、読んでいる限りは、それは彼女たちの共通の物語にはならない。個別であることが、商品としての価値だからだろうか。だから、その語りは解放にはつながるようなものではない。あわれを誘うものでもない。
身体や性を売ることの中毒性。
記録することで、何かを変えられるわけでもない。
しかし、「語ること」が求められている職業があるという発見が、おもしろいと思った。