この国の子どもたち 要保護児童社会的養護の日本的構築 大人の既得権と子どもの福祉
津崎哲雄、日本加除出版、2009 2502冊目 世界的に要保護児童の社会的養護には、里親制度が中心的である傾向に対して、日本の社会的養護は、教護院や戦災孤児のためのホームなど、施設養護から始まり、そして、それがいまも大方を占めている。 著者は、養護のあり方は、子どものニーズから始まり、子どもがサービスの改善を求めることができる意見表明によって決定されるべきだと主張してきている。 それに対して、施設養護は、二つの点で強く存続が主張されてきた。 一つが養護施設そのものの既得権擁護 もう一つが集団主義養護の容認 そして、たぶんに、養護のあり方そのものについての社会的な議論がないのと、子どものニーズが基本にすえられてこなかったきらいがあるのだろう。 こんな言葉が紹介されている。 「最近は入所する子が減っている。どうやって子どもを確保し、経営を安定させられるのかを聞きたいのだ」中扉裏 子どもの意見表明権を考えるとき、こんなことも連想してしまう。 ・子どもは基本的に親が好きだ。虐待している親ですらかばおうとする。 ・子どもは家族崩壊の原因が自分にあるのだと自責する傾向がある。 ・しかし、長じて、成人後に「親の扶養義務」がのしかかってきた時に、社会的な不公平について、悩み始める。親の理不尽も見えてくる。 ・親を切ることの葛藤と同時に、欠如感に悩まされる。 家族関係において生じるこのような葛藤を、施設養護にある子どもの場合は、どのように乗り越えられるのだろうか? そんなに子どもは自立した存在なのか? という疑問。力がないというのではない。力は、関係とともに発揮されることを考えたとき、大人との関係が力を与えていることがあるだろう。そして、力を育てる方向で、大人との関係はあるべきなのだが、その大人は、自立した大人なのか? そんな疑問が湧いてくる。 「はじめに」に引用されている国連家庭外養護委託指導指針の英語版、2007年のドラフトはこちらから。この中の19条から22条が、引用されています。 http://www.crin.org/docs/Guidelines_English.pdf その他の指針はこちら。 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018h6g-att/2r98520000018hly.pdf http://www.unicef.org/protection/alternative_care_Guidelines-English.pdf ケアの良し悪しは「当事者の声」でしか判断できない。」沢井さゆり、社会的養護の当事者参加推進団体「日向ぼっこ」代表のことば。『子ども白書2008』より 施設の既得権を守るための議論なんてとんでもない、と、良心ある人は言うだろう。しかし、「集団主義養護」についてはどうだろうか。日本社会の、そして日本の教育における集団主義が、その是認の根っこにあるのではないか。 例えば、こんな記述だ。 「個人以上に集団というものを重視し、その集団づくり、特に施設養護の中での『集団づくり』、これが『集団主義養護』であるといっても差し支えない。」97 問われるべきは、「このような集団主義養護の目標が、家族から離れて暮らさざるをえない子どものニード充足を第一義に設定しうるか」である。 施設を運営しているもののニード、思想・理念の実践のニードが優先する。98 加えて、「里親不信」107 図参照。 一方で、施設内虐待。115〜 abuse powerlessness institutional abue 130- ・施設内における権力関係 ・組織制度人の既得権保持 ・施設内虐待の種類と次元の多元性。懲罰、宗教儀式虐待、システム虐待、組織虐待(児童労働の搾取)などの層が混在する。 ・現行児童ケア施策自体の虐待促進性 ・要ケア児童観とケアリズムおよび職員性善説 劣等処遇の肯定。 無関心、全体的な施策対象人口の少なさからくる政治的無関心、ケアされる人に対する劣等処遇を容認する一般の人々の心性。 ぐさぐさ来ます。 「となる人」などの映画もあるが。
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| 2015-05-08 18:24
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