ヘルプ 心がつなぐストーリー
キャスリン・ストケット、集英社文庫、2012
The Help, Kathryn Stockett, 2009
2493冊目
米国南部生まれの著者が5年かけて執筆。出版社から断られたにもかかわらず、ベストセラーに。そして、映画化もされた。
BSで放送されたものを観て、よくわからなかったので、本を読んでみた。そして、なんと、図書館には英語版も入っていた! ではないか。
驚いた。
描かれていることが1962年のことであることに。
公民権運動が広がっていた時代のことであることに。
では、いまはどうなのだろう? そんな疑問が頭をもたげる。
ヘルプ
とは家政婦のこと。黒人が白人の家庭で家事全般、育児までをも含めて、ヘルプに入ること。
物語は、子ども時代を一人のヘルプによって育てられ、大学に行っても、規範的なことしか言わない母親よりは、「あなたはいい子」と言い続けてくれたヘルプの女性の方に、より親近感を覚えている女性によって紡ぎだされている。
彼女は、ライターになることを夢みている、東部の大学を卒業したインテリ。しかし、母親は早く結婚することを期待しているだけ。しかも、大学卒業間際に、乳母がシカゴに移住したと告げられる。
大学を卒業しても就職口が得られなかった彼女は、実家に帰って、仕事探しをしつつ、書くことをあきらめない。
なんのキャリアもない彼女が新聞社に送った応募書類に、採用/不採用通知ではなく、先輩記者からの個人的なアドバイスが届く。
「どこでもいいから、新聞社や出版社や雑誌社に、どんな職でもいいから見つけて働きなさい。そして、出版について学びなさい。
それから、自分の書きたいテーマについて、自分しか書けない何かを見つけなさい。」
アドバイスに従って、いくつのかアイデアとテーマを書き送る。それに対して帰ってきた答えは「本当に書きたいテーマが見つかるまで、こんな手紙を送ってくる必要はない」と。
職業欄で新聞社に応募した彼女が得た職は「掃除のこつ」のコラム。彼女は、乳母の親友だった家政婦の体験談を聞いて、それをコラムにつづって行く。
その中で、彼女は、乳母が、実は、転居したのではなく、解雇されたのだということを知る。
話は、ミステリーや謎解きの様相を帯びて展開する。
女主人と家政婦/ヘルプの関係。
主人に隠れてヘルプを雇っている女主人。見つかったら殺されるかもという緊張感なんか、絶対理解できない。しかし、いとも簡単に殺されることがありえた1960年代の空気が、響いてくる。
尊厳と知恵で生きぬく黒人の女性たちの姿をあざやかに、そして、彼女たちの言葉で(特に英語版は)、オムニバスの一人称で描かれて行くのがすごい。
たかだか、50年前のことなのだ。この物語が描き出しているのは。
わたしたちは、前にすすまなければならない。開けた扉の敷居がどれほど高くとも、見え始めた風景が、望ましい未来なのであるならば、踏み出そう。
そんな読後感、て、まだ読んでいる途中だけど。面白い。
映画は、どうってことなかったなあ。ルーツもそうだけれど、どうも黒人俳優たちがしっくり来ないんだよね。特にばあちゃんが違和感がある。きっと、もっと違うんだと思うんだよ。実際には、遭ったことないけれど。なんだろう、この違和感?