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生活保護から考える

生活保護から考える
稲葉剛、岩波新書、2013
2491冊目

2012年は生活保護不正受給および扶養義務者による仕送り問題などがクローズアップされた時だった。この頃からメディアは、弱者攻撃が止まらないよね。

東電だとか、武器生産企業だとかへの政府の助成金や購入など、とても大きなお金のことはたなあげして。

http://www.osaka-c.ed.jp/ed/h14/kankyou/security/military/military2.htm

それは置くとしても、2012年から厚生労働省は、退職した警察官0Bの福祉事務所へのハイチをすすめている。不正受給者対策のためだという。iii

まるで生活保護受給者が犯罪者扱いされるようになってきているのだ。それでなくても、周囲の眼は厳しいだろうに。

人間、誰しも、働けない時はある。人間、誰も病気になることもある。そのような時のセーフティネットは、「権利」であって、施しではない。

そんなに風に、考える方向に、わたしの人間形成はあったと思う。そのために、カンボジアで、肢体不自由な人が、ものごいをしている姿に驚いたのだし、子どもを抱えてものごいする女性の姿に虚をつかれるのだ。

それを家族が支えればいい。ということにも、疑問がある。わたしの親はよく支えてくれているので、支えがあるのとないのとでは、暮らしやすさが違うのは実感してきているが。

子どもに障害があるかいないかは、誰にでも起こりえることだ。家族だけが負担をして、十分だとは到底言えない。人は、社会で生きて行くのだから。さまざまな配慮が社会にあって初めて、多様な条件の人が生きて行くことができる。

そして、なんと、「扶養の義務」については、1947年の段階で、国会で議論がなされたというのだ。

1947年8月18日の衆議院司法委員会の議事録。
民法改正をめぐって扶養義務規定を廃止すべきとする加藤シヅエ議員に対する鈴木義男司法大臣が答弁している。103

民法の扶養義務規定が「道徳的な要求」にとどまるものであり、「根本的な修正」までの過渡的な規定である。

にもかかわらず、根本的な修正はその後実施されることなく、現在に至る。104

玉虫色の決着。

この扶養義務規定は、生活保護制度に限らず、社会福祉制度全般に及んでい・・・・国庫等が費用を支弁した場合、費用の全部もしくは一部を扶養義務者から徴収できる・・・105

結果、貧困の世代間連鎖が悪化する。106

経済力のため親の子は、老いた親を扶養する義務が免除されている。
教育や財産相続などの「溜め」を受け取る。
一方、貧困家庭の子は、「溜め」が少なく、成人後も老親の扶養を求められる。109

貧困の問題を血縁関係の中で解決することを求める扶養義務の強化は、子どもの貧困対策法の理念に逆行する。110

子どもの貧困対策法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H25/H25HO064.html

また、扶養義務の強化は、「可視化された「親密的領域」に脅かされる「個的領域」(個人の尊厳)を、「公的領域」が防護壁となって支える」という方向にすすんできた社会問題を再び「私的領域」に押し込めてしまう。119

2000年、児童虐待防止法
2001年、DV防止法
2006年、高齢者虐待防止法
2012年、障害者虐待防止法

1979年の自民党の『日本型福祉社会』では、自立や家族の支えあいを強調している。

企業の責任は、自民党案では衰退。

地域の絆も強調。

著者は、自民党のそのような姿勢を「絆原理主義」と呼ぶ。

以下の参考文献に「日本の伝統的な「近代家族」の特徴」があげられている。
http://www.soc.hit-u.ac.jp/~takujit/course-of-faculty/dissertation/2014/2014kiyohara.pdf

落 合(2004: 103)は日本の伝統的な「近代家族」の特徴として以下の 8 つを挙げている。すな わち、1家内領域と公共領域の分離、2家族構成員相互の強い情緒的関係、3子ども中心 主義、4男は公共領域、女は家内領域という性別役割分業、5家族の集団性の強化、6社 交の衰退とプライバシーの成立、7非親族の排除、8核家族、の 8 つである(ただし、8 つ 目の核家族については括弧に入れることがある)。この 8 つの性格を持つのが日本の伝統的 な家族である。

ああああ、捕鯨問題、思い出してもた。南氷洋まで出かけて行く捕鯨を「伝統」と呼んでいたなあ。どんだけ白々しいんだろうか?
by eric-blog | 2015-04-21 11:51 | ■週5プロジェクト15
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