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法医昆虫学者の事件簿

法医昆虫学者の事件簿
マディソン・リー・ゴフ、草思社文庫、2014
単行本2002『死体につく虫が犯人を告げる』、A Fly for the Prosecution How insect evidence helps solve crimes, 2000
2489冊目

翻訳者の垂水雄二さんが文庫本のあとがきに、日本における法医昆虫学の現状について、まとめてくれている。ミステリーの題材にも、なっているという。そして、この著者が、これだけの文才がありながら、ミステリーを書いてくれないかと期待していると。

死体にはウジがわく。ウジは何回か脱皮を繰り返して蛹になり、成虫になる。ウジが何令であるかが、死体になってからの時間経過を表しているという。

原題には「fly」とそのものずばり使われているハエは、死体を見つけたら10分以内にやってくるという。夜でも、だ。これまでの常識に反して。

時間経過は気温や気候に左右される。その条件を補正しつつ、推定する。

日本には、長く放置される死体が出る事件が少ないため、法医昆虫学がのびにくいという。

ものすごく地道な最終作業と種の同定作業が必要となるのだが、「分類学」がすでに人気のない学問になっているために、昆虫の分類を任せることができる専門家が減っているという。

また、活動が脚光を浴びると、それで売名行為、法廷での偽証などを行う人も出てくる。
1984年の実践から、12年。学会のようなものをたちあげ、ガイドラインを作ったところだという。

自分の専門性との出会いは、偶然でもあるが、どう育てるかは、その人にかかっているよね。ミステリーを期待して読んだら、法医昆虫学発展史をまじめに学ぶことになってしまった。だいたい、わたしは、ハエの絵が大嫌いなのに、たぶん著者が描いたのだと思うが、精緻な絵が、かなり、入っているのだ。
クレジットはどこにもないけれど。

植物や動物の研究者は、みんな絵がうまいなあ。
by eric-blog | 2015-04-18 09:54 | ■週5プロジェクト15
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