土とは何だろうか
久馬一剛、京都大学学術出版会、2005
2482冊目
土も地球の歴史と無関係ではない。土壌とは、生物の働きなしには存在しないものであり、それは生産者を支えるものでもあるし、分解者の居場所でもある。
植物が育つのに土壌はいらない。水耕栽培の成功がそのことを示している。しかし、ある植物にどのような栄養が必要かを知るのは、大変なことだ。
地球環境問題と土壌との関係で言えば、「砂漠化」の問題がある。
アフリカの土壌は、劣悪である。255
古い大陸で、その土地の多くは極めて長い時間にわたって風化を受けた材料の上にあり、土壌の肥沃度は極めて低い。
森林や草原を開墾して農地化しても、水不足で生産があがらないか、土壌が劣悪で生産が上がらないかのいずれかであって、この貧弱な作物が十分地表面を保護し得ないために、土壌浸食を引き起こし、土地生産力を根こそぎ奪ってしまう。-256
中国の砂漠化も激烈だ。
4億年前の古生代シルル紀に、プシロフィトンという名の植物が初めて陸へと上がって生活を営むに至ったことが、地球上で土壌の生成の端緒を開いた事件であった。263
大気圏・水圏・岩石圏の相接するところに土壌はある。
自らを生物生育の培地として最適化してきた。
・生産者として陸上植物の生育を支え、それを起点とする食物連鎖によってすべての陸生生物を養っている。
・分解者としての生物の遺体や排泄物などの有機物質を分解し、元素の生物地球化学的循環を司っている。
・地球上の水循環の重要な経路となって水圏の生物の生育や物質の循環を超瀬さする上で大きな役割を担っている
・大気圏との間でガス交換をし、大気組成の恒常性の維持に寄与している。264
現在の地球環境問題の多くは、この陸上生態系/生物圏における土壌の機能にかげりが見えていることと結びついている。265
とても身近な、「土」を土壌学の専門家が読み解く、ちょっと専門的な本。
ここから子ども向けの本などできたらおもしろいね。