沈黙を破る者
War das Schweigen bricht
メヒティルト・ボルマン、河出書房新社、2014
原著2011
2481冊目
最近読んだ東野圭吾さんのミステリーで、本当に、本当に、がっかりしたので、(読むんじゃなかった、ってくらい)このミステリーには心奪われた。
「ヒトラーの子どもたち」をキーワードに、読んでいる中の一つにひっかかってきた。
ナチスへの大衆の熱狂。否やを唱えるものへの弾圧。秘密警察による拷問。
親衛隊や軍隊に対する憧れ。志願。理不尽な訓練と訓練と称する新人いじめ。
アーリア人純潔主義と、出自にまつわる秘密。秘密と秘密の間の取引。そしてごまかしと虚偽。
一転、ナチスの敗北と、ナチスにまつわる「記号」の価値の下落あるいは剥奪。隠蔽。
その中で生き残るもの。
うーーん、ミステリーなんだけれど、その動機の必然の物語に、引き込まれる。
こんな物語、日本のきれいごとか非難かの軍隊物語では読んだことないなあ。
ネタバレにならないように書くけれど。でも、たぶん、最初の章で、わかってしまうこともあるだろう。隠されるうそほど、あからさまなものはない。
小説に訳者あとがきなんてあまりないかと思うけれど、著者について、細かい描写によって、その人を浮き出しにすると書かれている。肩にかけるショールや年代物の机。映画化されれば、すごいだろうなあ。
いろんな意味で、ぜひ、どうぞ。