娼婦たちから見た日本
八木沢高明、角川書店、2014
2400冊目
おもしろい! ちょっと膝をうってしまったなあ。ちょうど一昨日の新聞に「中高年のストーカー」が増えているという記事があったばかり。
この本の著者はエピローグでこんなことを指摘しているのだ。
「日本各地の色街がますます漂白されることによって、どんな社会が広がっていくのだろうか・・・かつて取材した横浜のストリップ劇場では、年金生活者の老人たちが性的なサービスを求めて足繁く通っていた。・・・ますます高齢化が進んでいけば、売春を必要とする老人たちはますます増えていく。」309
「買春街は無縁者たちのセーフティネットでもあったのだ」310
また、このようにも指摘する。
「行政による買春街の浄化。それは得体の知れない人間の排除や、不透明な金の流れを断ち、街を管理下に置くといったことに主眼が注がれているが、その先には、私たち日本人の気質を国家が管理しやすい方向に導くことがあるのではないか。」308
売春は権力と結びつくこともあれば、為政者の気まぐれで取り締まられる。312
20年前、著者が20代の頃に経験したバンコクのゴーゴーバーでの娼婦との出会いから、
神奈川県横浜黄金町
三重県渡鹿野島
からゆきさんとじゃぱゆきさんでつながる熊本県天草
ジャパニーズドリームを追い求めるチリ、フィリピン、タイ
沖縄県の戦争、占領、基地をめぐる売春
そして、最後は売春そのものが見えない存在になりつつある秋葉原という空間。
人の寂しさは人でしか救うことはできない。
無機質な無縁社会はどこに向かうのだろうか、と。