ERICニュース395号 よりよい教育を with ERIC より

■□■ 2. アクティビティの展開  ■□■

 先日「プロジェクト・サイクル・マネジメント(PCM)参加型モニタリング・評価手法」という研修を受けました。石田健一モデレーター(ファシリテーターでなくモデレーターと呼ばれていた)が効果的なタイミングと内容のアイスブレイクを実施されていたので、集中が継続でき安心感のある研修でした。

 アイスブレイクのひとつ「ボディ・マップ」から着想を得て、参加型調査手法(ERICでは「PRA主体的参加地域評価法」)を考える1時間15分のアクティビティを展開しました。わたしは「ボディ・マップ」を「身体のシルエット」として自尊感情を高めるアクティビティとしておこなったことがあります。そこで今回は、このアクティビティを参加型調査手法(PRA)のメタファーとして扱うことにチャレンジしました。タイトルは「シルエットからPRA ~メタファーで学ぶ~」です。

 10名の参加者の中からボランティア2名の身体の表側と裏側の型取りをし、各自10ポイントを投票するやり方は石田モデレーターと同じです。
変更したのはダンボールのボードに直接シルエットを書き込んでもらい、投票をドット・シールで貼り付けて視覚化を強調したことです。2体のシルエットを囲んだ参加者に、わたしは発問をします。「やってみて、思ったこと・感じたことは?」 参加者は相互に尋ねたいことで一杯の様子で、マークのある部分を指さして質問しあっています。例えば、「つま先に貼ったのは誰?」それを受けて貼った人が「爪が伸びてるんだよね。」と説明。

 「本人にとっては伸びすぎた爪は気になりますね」とファシリテーターとしてその発言を拾います。加えて「プライバシーもありますので、答えたくない時は答えなくて言いですよ」と前セッションで言及した「人権アプローチ」を参加型開発や参加型調査の点検の視点として再度リピートします。

 さらに分析を促進する発問をします。「共通する傾向はありますか?、異なる点はありますか?」 ひとしきり意見が出た後で、「このアクティビティが参加型調査と関連するとしたらどんなところでしょう?」と発問します。話し合いでは以下のポイントが整理されました。

 □ 身体のシルエットは、コミュニティのマッピングに相当する。【共通基盤の視覚化=地図づくり】
 □ 投票の時間は本人が自分自身のことをじっくり考える時間として重要だ。【個人で考える時間の確保】
 □ 個人の意見・アイディアが全体に共有できるので視覚化は有効だ。【投票による視覚化】
 □ 全体の投票結果(他者の結果)から自分自身のことを再度考える時間と場になる。【協働学習】

 話し合いが活性化するための「ベース」としての「シルエット=マッピング」の効果を参加者は理解した様子です。

 さらに「優先順位」のエクササイズ「ダイヤモンド・ランキング」へ展開します。自身の身体で気になるところを9つ、投票したものを含めリストします。
記入用紙は、A4用紙を8等分に折ったものにファシリテーターが配るA4用紙1/8サイズのカード1枚。記入後、A4用紙は8枚に切り分けます。9つ書けなくてもよいと言及します。

 ダイヤモンド・ランキングの方法をボランティアの参加者のカードを使って、ボードの上でデモンストレーションします。このときも、病歴等プライバシーに関わることなので問題ないかを尋ねます。ダイヤモンド・ランキングとは、優先順位1位を先頭に1枚置き、その下段に2位を2枚、3位を3枚、4位を2枚、5位1枚と並べるとダイヤモンドの形になるアクティビティです。手でカードを何度もシャッフルすることで思考が活性化されます。

 デモンストレーションしていた参加者は、順位を付けるごとに自然に説明を加え、全体共有のプレゼンテーションを行っています。そのことにより、彼が手術をしたり、彼と同じような健康上の懸念を同じように持っていたり、わたしも含めた参加者は、彼への共感や理解が深まり、また親近感も増してきました。

 そこで再度、発問します。「この優先順づくりは参加型調査とどのような類似点がありますか?」 彼がもし住民であったら、どんなに住民の理解につながるかと、皆感じているようでした。本人が考え、優先順位を決定することは、主体性な参加に必要なことだという参加者の意見を受けて、前セッションで扱った「参加の階段」での決定権や人権アプローチの重要性を再度言及します。

 最後に『調査されるという迷惑』等の宮本常一の実例から日本の社会調査も国際協力での調査と同じような課題があった・あることを指摘しました。では、どうするか?宮本常一の言葉「仲間だと思われるようになればいいのじゃよ」を紹介し、「仲間だと思われる」ためにわたしたちにできることは何かを考えてゆきましょう、と宿題を出してこのセッションを終わりました。とかく盛り上がってしまう話し合いを軌道修正しつつ、中南米からの参加者でしたので最後にパウロ・フレイレを参考文献として紹介しました。

 今後は、アクティビティの進め方や発問、ワークシート、配布資料を精緻化して、PRAの考え方や大切にしている価値観を本質的に理解し、現場での応用力がつくような1時間30分から2時間程度のアクティビティにしてゆきたいと考えています。

 ERICの主催研修の2日目で実施されるプログラムやアクティビティ開発、そのファシリテーション実践で身についたスキルを活用し、様々な場所で様々な人々と学び合いを展開することは、with ERICのひとつの形なのだろうと感じています。

(佐藤宏幸)
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by eric-blog | 2014-07-22 15:15 | ERICニュース | Comments(0)
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