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ERIC NEWS 394号 ともによりよい質の教育をめざして 2014年7月7日 民主主義の学校を広げよう! 第7行 アクション・リサーチで共に考えよう! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (文責: かくた なおこ 角田尚子 http://ericweblog.exblog.jp/ twitter : kakuta09 FBもやってます。) 梅雨だからとは言いながら、よく降り続きますねえ。終わったとたんの夏日の予感に怯えつつも、涼しさだけは享受しています。体調を壊されていませんか?ご自愛ください。 前回の民主主義の学校 第6行 で「人権第一を再確認する」とご紹介しました。 人権アプローチとは何か、そしてそれを阻むものは何かについての資料をまとめました。こちらからダウンロードできます。 https://drive.google.com/file/d/0B3BtpOgiqhyrNUlnb3o0WGd1SWM/edit?usp=sharing 「大学生のための国際理解 in 1 minute」に引き続き、「女性の人権 in 1 minute」を作成しました。以下からダウンロードできます。 https://drive.google.com/?authuser=0#my-drive 社会科学の教員としては、7月1日は、歴史的な転換点として、とても重要です。重要な日であるという事実は、しっかりと児童生徒と共有すべきだと思います。賛成反対の立場の人達がこの問題には存在すること、そして、学校教育においては、これからの時代を共に担って行く同年齢集団の人々が「語り合う」「ともに考える」力をつけていくためにできることとして、共に考える場と方法を試みることを伝えるべきであると思います。 どのようなHowがありえるか、「民主主義の学校」の実践として考えてみました。 ■□■1. 「民主主義の学校」第7行 アクション・リサーチに取り組もう! ■□■ これまで、以下のトピックで「民主主義」を学び、実行することを提唱してきました。 ■民主主義の学校、第一行「法律の制定と民主主義」 http://ericweblog.exblog.jp/19244804 ■民主主義の学校 第二行 パブコメを書こう http://ericweblog.exblog.jp/19249118 ■ 民主主義の学校 第三行 政治運動をしよう http://ericweblog.exblog.jp/19331921/ ■民主主義の学校 第四行 一次資料を読む ERIC NEWS 377号 ■民主主義の学校 第五行 司法への参加 ERIC NEWS 384号 ■民主主義の学校 第六行 改めて人権第一を再確認する ERIC NEWS 389号 集団的自衛権について、こんな話を聞きました。 「中学2年の娘が通っている中学では、「クラス目標」というものを生徒たちが考えるとのこと。雰囲気的には「みんなで、団結して、体育祭を成功させよう!」とかだそうだ。 先日、男子達が、「クラス目標を変えよう」と。 そして、その内容は、「広い視野で、集団的自衛権を廃止させよう!」」というものだったそうだ。 結局、担任の教師から「そんなのクラス目標にならない」と却下されたそうです。きっとこの教員は社会科学系の教科担当の方ではなかったのでしょう。社会科学担当教員にとって、いまほどの「teachable moment」はないはずだからです。いまを逃していつ学ぶのでしょうか? 昨日も、大学生と話しましたが、自分の意見に対して自信がない。それはなぜかと考えたら、考えたり、話し合ったり、意見の根拠となるだけの積み上げがないからなのです。 その学生も言っていましたが、「すべてのことについて専門家にはなれないので」と。そうなのです、「知らない奴は言うな」という恫喝が、この社会にはあるのです。では、どこまで行ったら「知っている」と言えるのか? そして、在特会のような「在日特権」というようなあからさまな間違いでも、どんどん流布していく状況も一方であるのです。 誠実に、「正しい情報」に基づいて考えよう、話そうという人は、ますます寡黙になってしまうという悪循環があるのではないでしょうか? そこで、「意味あることを学ぶ」ということで、アクション・リサーチの提案です。 ERICでは「PRA主体的参加地域評価法」「フューチャーサーチ会議」などの参加型社会的合意形成の方法論に学び、さまざまな地域調査をこれまでに実施してきています。市民の手にアクション・リサーチを! それが民主主義の基本であると考えます。 中学生・高校生にとって大切なことは、いますぐ結論を出せたり、自分の意見を確立したりすることではなく、「共に考える」ための方法を身につけることです。 PLT「木と学ぼう」アクティビティ・ガイドの「争点となる問題についての学び方」では、こんな指摘があります。 「アクティビティは見方を両極化することを最小限にし、アイデアの質と量を最大限にすることに力点を置く」 「力点は、意見の交換、新しい情報の入手と判断、意思決定とその評価にあるべきです。」 争点のある問題について「ディベート」で取り組むことがどれほど学びの幅の広がりを阻害するか、これらの視点から考えれば、明らかです。にも関わらず、あまりにも硬直した学び方が横行しているのが、いまの中等教育段階における扱い方なのではないでしょうか。 そのために、今回提案するテーマは、「集団的自衛権を巡る現在の社会的合意形成のあり方についてどう思うか」というところに絞って、生徒が協同学習でアクション・リサーチすることを想定しました。 では、アクション・リサーチ20連発! ○【新聞コラージュ】ある日の新聞を何紙か集める。テーマについての新聞記事のコラージュを作る。作ってみての感想も書きこむ。 ○【分類する】集団的自衛権についての立場をいくつかの分類でまとめてみましょう。 ○【ランキングする】分類したカテゴリーについて「民主主義の実践として課題が大きいものから民主主義的実践ができているもの」まで、ランキングしてみましょう。ランキングの規準も明確にして、模造紙にまとめてみましょう。 ○【二次元軸で考える】課題が大きいと思うカテゴリーについて、どうすれば解決できると思うか、できる限りたくさんの解決方法をブレーンストーミングする。取り組むべき事、取り組みやすい事の二次元軸上にプロットする。 ○【12のものの見方・考え方】学級で、「12のものの見方・考え方」の分析の枠組みをグループごとに分担して、まとめてみる。 ➢「知っていること・知りたい事」 ➢集団的自衛権についての連想図 ➢「昔の戦争/いまの戦争」 ➢いい戦争・悪い戦争 ➢社会的課題の重要度でランキング 年金問題・経済成長・秘密保護法・解釈改憲・エネルギー政策・ ➢集団的自衛権が行使できるようになるとどうなる? 因果関係図 ➢賛成派・反対派のさまざまな立場の人で議論の場をシュミレーションする。 ○【参加者アンケート】学級内で「参加者アンケート」を行ってみる。 ➢あなたは集団的自衛権について「賛成・反対」の意見を言えますか? あなたはどちらですか。 ➢言える・言えない、それぞれの理由は何ですか? ➢いま社会で行われている集団的自衛権についての議論のすすめ方の課題は何だと思いますか。 ➢集団的自衛権に限らず、大事な政治問題について、共に考えることができるようになるために必要なことは何ですか。 ○【蓄積的視覚化手法】学校の中で、アンケートを「蓄積的視覚化手法」による「シールで投票」で行う。 ➢憲法改正についての国民投票法について知っていますか? ➢あなたは国民投票までに、国民全体がどんな準備をしていて欲しいですか? ➢学生時代にできることは何だと思いますか? ○【分配円グラフ】学級あるいは学年、学校で、「あなたが一日の生活時間の中で「社会的な課題(例えば集団的自衛権)」について考えている時間とエネルギーを分配円グラフで書いて下さい」と依頼して、書いてもらった結果を模造紙などに張り出しましょう。そこから見えてくる課題は何か、アクション・リサーチのチームで話し合って、まとめましょう。 ○【時間軸でとらえる】世代によって課題がどう違うか、調べてみましょう。親や祖父母の世代は、この問題について考えたり、話し合ったりしているでしょうか。していないとすれば、課題はなんなのでしょうか。それぞれの世代が育ってきた時代背景を年表でまとめましょう。 ○【作文や標語の公募】社会的に大切な問題について、共に学び、共に考えるために大切なことは何だと思うか、作文を募集しましょう。あるいはわかりやすい標語でもよい。 ○【レポート・ライテング】社会的合意形成の課題は何か、どう解決したらよいかをテーマに、これまでリサーチした結果から、レポートをまとめる。 以上のような課題から、一つを選んで、二人一組みの「協同学習」プロジェクトとして取り組むのもよい。 ■協働学習の指導について「Appendix11: Successful Cooperative Learning Steps [成功する協働学習のステップ]」 http://ericweblog.exblog.jp/3967730/ ■環境教育においても、必ず「争点となる」問題は存在します。それをどう扱えばいいか、PLTの考え方を紹介しておきましょう。 Appendix 12 議論の的になる問題を教える http://ericweblog.exblog.jp/4068813/ ■協同学習については以下のブログも参照 http://ericweblog.exblog.jp/14753240/ http://ericweblog.exblog.jp/14688118/ http://ericweblog.exblog.jp/14697608/ ■効果10倍の<学び>の技法、吉田新一郎・岩瀬直樹、PHP新書、2007 学びの原則(p.99-102 吉田によるまとめ) ・ 人は常に学んでいる ・ 安心して学べること、楽しく学べること ・ 積極的に参加できること ・ 意味ある内容を扱うこと ・ 選択できること ・ 十分な時間があること ・ 協力しあえること ・ 互いに讃えあうこと、教える機会が提供されること ・ 参考図書を以下のキーワードで検索してみてください。 ・ コミュニティ・オブ・プラックティス ・ グループのちからを生かす 成長を支えるグループづくり ・ いっしょに学ぼう ERIC ・ いっしょにできるよ ERIC ・ 先生のためのアイディアブック 協同学習の基本原則とテクニック ・ Going Public, Shelley Harwayne, Heinemann ・ テーマワーク ERIC ・ 学習の輪 ジョンソン ・ 「協同」による総合学習の設計 シャラン ・ 学ぶの情熱を呼び覚ます プロジェクト・ベース学習 ・ ライティング・ワークシッョプ ・ 「マルチ能力」が育む子どもの生きる力 ・ MI: 個性を生かす多重知能の理論 ・ 図解 はじめる小学校キャリア教育 ・ 対立がちからに グループつぐりにいかせる体験学習のすすめ ・ クラス会議で子どもが変わる ・ 会議の技法 ・ あなたの子どもが学校生活で必ず成功する法 ・ テストだけでは測れない! ・ 「考える力」はこうしてつける ・ 人間関係を豊かにする授業実践プラン50 ・ 効果10倍の<教える>技術 ・ エンパワーメントの鍵 「組織活力」の秘密に迫る24時間ストーリー ・ ペアレント・プロジェクト ・ いい学校の選び方 ・ Rethinking High School, Harvey Daniels et al, Heinemann やっぱり、教育が民主主義の鍵ですねぇ。 ■□■2. 死刑と人権について 今回の主催研修「国際理解」のセッション2「流れのあるプログラム」では「死刑制度」を取り上げました。プログラムの流れおよびその後の「アクティビティ・プログラム開発」で出たアイデアを紹介します。 ■ERIC主催研修 ESDファシリテーターズ・カレッジ テーマ「国際理解」 流れのあるプログラムの組み立ては『テーマワーク』の概念を活用した。 1. 出発点「死刑制度について知っていること、知りたい事」 2. アダプト・ア・分析 イメージを深める 「死刑のある国/ない国」のイメージ図 「死刑を求める人/賛成している人」 「死刑に反対の人」 「死刑についての肯定的/否定的」 3. 国ってなあに? 変化を考える。 「死刑をなくした国」への道をデザインする。 死刑廃止をプロジェクトとしとて考え、評価改善のサイクルで取り組む。 タイムラインを描く。 「なくした日」のイメージを持つ。 「死刑廃止法」の前文を書く。 4. もし、あなたの国が「死刑存置国」と隣り合わせていたら? ■プログラム1. 『57人の死刑囚』から考える 『57人の死刑囚』(大塚公子、角川文庫、1996)から、57人のライフヒストリーを一覧表にまとめて、死刑囚の人生についての共感的理解の基盤とすることで、人権について考えることにつなげることを意図した。 プログラムの流れ 1. あなたは死刑に賛成?反対? 意見のスペクトラムラインアップ 2. 資料「57人の死刑囚」を読む[個人作業→ペア作業] 3. ヨーロッパ連合の「人権と死刑」パンフを読む。賛成・反対? 4. 「廃止・改善・いまのまま」の三つの方針の利点と限界 資料「57人の死刑囚」のダウンロードはこちらから https://drive.google.com/file/d/0B3BtpOgiqhyrYjRONDhENy1oa0k/edit?usp=sharing ■プログラム2 「死刑博物館を作ろう!」 参加者が開発したプログラムですが、とてもおもしろいと思いました。 プログラムの流れ 1. 死刑制度「知っていること・知りたい事」 2. 死刑について調べてみる 3. 死刑制度について知らせるための博物館をデザインする 4. 企画書をヨーロッパ連合日本局に出そう! 死刑博物館をヨーロッパ連合が日本に作ったら、おもしろいでしょうねぇ。 コンペしましょう! ■プログラム3 「死刑制度について考えるためのスタディツアーを企画しよう!」 これも参加者からのアイデアです。 プログラムの流れ 1. 日本の立場・ヨーロッパの立場を理解するための「本質にせまるための8つの質問」 2. それぞれが本当に満たされたいことは何? 3. 死刑制度廃止についてのヨーロッパ連合のやり方は「内政干渉?」について「いい介入/危険な介入」で考える。 4. 国内・海外を含め、スタディツアーおよびキーパーソン・インタビューの対象リストを作成する。 「死刑制度」について、ヨーロッパ連合は2008年に、日米に対して「死刑廃止を求める声明」を出しました。しっかりと考えて行くことが、廃止するしないにかかわらず、国際理解の基本姿勢であると思います。 ■□■3. ERIC主催研修2014年度の日程が決まりました。■□■ 日程表、実施要項、申込書などはERICホームページからダウンロードできます。 http://www.eric-net.org/ 詳細など、お気軽にお問い合わせください。 問い合わせ先: eric@eric-net.org ■2014年(平成26年)6月28日29日国際理解 終了しました。 ■2014年(平成26年)7月26日27日PLT木と学ぼう・環境 ■2014年(平成26年)9月27日28日人権 ■2014年(平成26年)10月25日26日スキル関係性・対立から学ぼう ■2015年(平成27年)2月22日23日スキル市民性・未来を学ぼう ■2015年3月(平成27年)予定TEST教育力向上講座 「国際理解」の回は終了しました。 記録の報告は以下のブログにアップしています。 http://ericweblog.exblog.jp/19968319/ 板書、配布資料、成果物などのPDFも含めた記録については、参加者に配布しています。 https://drive.google.com/file/d/0B3BtpOgiqhyrQmt5dUJtWmFBV0E/edit?usp=sharing ■□■4. ERIC25周年に向けたご寄付のお願い ■□■ 1989年誕生の参加型学習老舗のERIC国際理解教育センター。 これまで続けて来られたのも、企画委員、運営委員、理事、テキスト購入者、ファシリテーター育成事業参加者など、みなさまのおかげです。感謝です。 これからもよりよい「指導者育成のための実践」推進のための情報提供、研修プログラムの提供などに努力していきたいと思います。 日常活動に加えて、25周年に向けて、事務所のリニューアル、フューチャーサーチ走向未来ワークショップの開催など、企画しています。 特別活動支援のために、テキスト活用、研修参加などのご支援に加えて、ぜひ、ご寄付をお寄せください。よろしくお願いいたします。 ご寄付先 金融機関 ゆうちょ銀行口座: 10020-3288381 名義:トクヒ国際理解教育センター(ゆうちょ銀行同士) ◯◯八(ゼロゼロハチ)店008-0328838 名義:トクヒ国際理解教育センター(他の金融機関から) ********************************************************* (特定非営利活動法人)国際理解教育センター ERIC:International Education Resource & Innovation Center 〒 114-0023 東京都北区滝野川1-93-5 コスモ西巣鴨105 tel: 03-5907-6054(研修系) 03-5907-6064(PLT・テキスト系) fax: 03-5907-6095 ホームページ http://www.eric-net.org/ Eメール eric@eric-net.org blog 「 ESD ファシリテーター学び舎ニュース http://ericweblog.exblog.jp/ blog 「PLT 幼児期からの環境体験」 http://pltec.exblog.jp/ blog 「リスク・コミュニケーションを対話と共考の場づくりに活かす」 http://focusrisk.exblog.jp/ blog アクティブな教育を実現する対話と共考-ESD的教育力向上を目指して http://ead2011.exblog.jp/ blog 平和の文化への道を拓く平和教育 翻訳プロジェクト http://pepathway.exblog.jp/
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| 2014-07-07 16:06
| ERICニュース
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