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ERIC NEWS 392号 ともによりよい質の教育をめざして  2014年6月22日

以下のPDFをダウンロードできるようにしました。

http://www.eric-net.org
2014.6.23 PLT「森の健康診断」を翻訳しました。
  森の健康診断
2014.6.23 オーストラリア、グリフィス大学のジョン・フィエン氏「Learning to Careを翻訳しました。
  Learning to Care



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ERIC NEWS 392号 ともによりよい質の教育をめざして  2014年6月22日
at ERIC/from ERIC 受託研修のプログラム
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(文責: かくた なおこ 角田尚子
http://ericweblog.exblog.jp/
twitter : kakuta09  FBもやってます。)

5月6月は、研修が続きます。ブログにプログラム案の段階と記録の両方をアップしています。

平成26年度第一回人権教育・啓発指導者講座I 
PLT12時間研修 in 那須甲子
「人権ファシリテーターへ はじめの一歩」 3時間研修
地球環境問題と環境教育 2回連続講義
コミュニケーションの方法と実践 Ⅲ 2014年度 対立から学ぼう
ジェンダーが開く性教育に対する人権アプローチ
「やってみよう! あなたもできる参加型」

今回は人権研修3時間と、大学生を対象にした「対立から学ぼう」の二日間集中講座の二本について、ファシリテーターのふりかえりとまとめを含めて、紹介いたします。

■□■1. 人権研修「世界なんでもランキング」■□■
東国原さんが知事だった時代から、あるいはそれ以前から、宮崎県とは深いおつきあいがあります。ERICの主催の「人権研修」に参加された方は、「チーム宮崎」と称される複数の参加者が宮崎県から来ていることもおぼえていらっしゃるでしょう。お互い、まったく知らないもの同士、所属も仕事もまったく別なのに「チーム」と呼ばれて、迷惑なことだと思います。

今回は3時間研修。対象は学校教育、社会教育、知事部局などの人権研修指導者約80名。

■共通基盤づくり

2時間と3時間では、セッション数を二つにできるか否かという大きな違いがあります。セッションを二つ行うことができるのであれば、一方は「共通基盤づくり」そしてもう一方を「流れのあるプログラム」とすることができます。

さらにもう一セッションあれば、「ふりかえりとまとめ」を追加することができ、これらの三つのセッションで6時間のファシリテーター養成講座の内容となります。

今回は三日間の講座の中日、午後という位置づけです。すでに三つの講義を「女性差別」「ハンセン氏病差別」「部落差別」それぞれについて受講し、この研修の後、次の日にも講義があるという三日間。

幸にして、午前中の講義を後半部分、聴講することができたのが、ワークショップの質をずいぶん高めてくれました。「講義」も経験学習の「ハンズオン」として活かすことができるのだと、身をもって知りました。「共通」の経験をしたことは、必ず活かすことができるのですねぇ。

講座の内容が「共通基盤づくり」に貢献する。

午前中に講義を受けているということは知っていたので、プログラムも「参加者アンケート」で学んだことをふりかえるようにしようと、当初から考えていました。

■参加者アンケート

参加者アンケートというのは、「アンケートに答えても、その結果が共有されない」という収奪的な調査研究に異議あり! と、PRA(主体的参加地域評価法)のトレーニングを受けたことも踏まえて、わたしが開発したやり方です。

開発、といっても難しいことは何もない。新しいアクティビティの開発なんてそんなもんです。

四つから五つほどの質問を出して、まずは自分自身の答えを「考える」。どれか一つを選んで、五人以上にインタビューして回る。同じ質問について聞いた仲間、三人で「分析と所見」をまとめてみる。全体で共有する。

この方法によって、参加者自身が、参加している人々のことについて、情報を共有し、「共通基盤」とすることができるのです。

今回は、午前中の講座があったので、とっても変則的に次の質問だけに絞りました。
(ア)午前中の講座で学んだこと
(イ)日常に活かしたいこと
しかも、5分ほどで聞いて回って、隣同士のお二人で「気づいたこと・感じたこと・学んだこと」を共有、グループで共有、全体で共有するというようにしました。

■「考える」→「話す」「聴く」→「話し合いの心がけ」

2.ノートテイキング→傾聴
3.「学びのサイクルを切らない心がけ」[ペア作業→全体共有・板書]

共通基盤づくりのもう一つの柱は、コミュニケーションの構えを共有するということです。

学校であれ、社会教育であれ、学習の場は、いろいろなお約束事で、成立しています。同様に、参加型学習を成立させる条件というものも存在します。ERICではそれを「わたし」「あなた」「みんな」のスキルとして整理しています。

小見出しで書いた流れは、アクティビティでもありますが、その「わたし」「あなた」「みんな」のスキルを自覚し、整えて行くためのものでもあるのです。

特に「ノートテイキング」によって一人ひとりが「考える」時間をとる事が、学びの内在化につながる重要な手だてです。

「話す」「聴く」というのは傾聴のトレーニングを取り入れて行います。

そこから「話し合いの心がけ」。今回は、「話す」「聴く」というサイクルが「学び」につながるということで、「学びのサイクルを切らない」話し合いの心がけとして考えてもらいました。おもしろかったです。

■「誇りに思う価値観とビジョン」[個人作業、A4用紙]

価値観とビジョンというのは『未来を学ぼう』というテキストの原文タイトルです。Values and Visions for Our Future。わたしたちの未来を切り拓くのは、わたしたち一人ひとりの価値観とビジョンなのです。

次の流れのあるプログラムで「ランキング」を取り上げるので、ランキングにかかわる価値観を自覚しておいてもらうために、個人作業で「自分を見つめる時間」をとりました。2分間ほどだけのことですが、キーワードを共有しておくかおかないかが、後で大きく効いてくるのです。

■流れのあるプログラム「世界なんでもランキング」

『いっしょに考えて! 人権』「カテゴリーとランキング」で紹介している「世界なんでもランキング」というアクティビティは、子どもの頃に様々に人と比較していたことを思い出すという、それだけで楽しくなるアクティビティです。

他愛もないたくさんのことを思い出しながら、他人と競い合うことで成長してきたこと、大人になったら、なぜあんなことで競ったり、悔しがったりしたのだろうかと思えること、あるいはいまも大事にしていることなどをふりかえってもらうことで、ランキングと価値観について考えるものです。

今回は「ちいさなマイナス」というキーワードを午前中の講演会から共有できていたので、他愛もないランキングが「集合」する、大多数によって共有されると、差別や排他という行動につながることを確認できました。

一人ひとりの心の中の「ちいさなマイナス」。罪もないように思えることでも、それが国民全体で共有されていたりすると、危ういものになるのです。

参加者の感想の中には「きつい」「ツライ」というようなものもありました。自分の中にある差別性とむきあうことからしか、人権研修は始まりません。否定してもなくならないし、居直ったら成長がない。

次回の二日間研修が楽しみです。


■□■2.  「対立から学ぼう」の二日間集中講座■□■
「コミュニケーションの方法と実践III」という講座で、これで三回目の取り組み。『ワールドスタディーズ』をテキストにして取り組んだ第一回、プログラムづくりを取り入れた第二回、そして今回は、『対立から学ぼう』大学生バージョンを模索した。

http://ericweblog.exblog.jp/19923830/

大学生バージョンとは、『対立から学ぼう』のカリキュラムが視野に入れながらも具体的な事例を出していない社会的な対立、国際的な対立について取り上げること。

一日目は以下の四講で構成しました。
第1講 共通基盤づくり「対立のイメージ」と傾聴
第2講 対立の扱い方と限界
第3講 「わたしメッセージ」と共感的傾聴
第4講 日本の正義、日本型コミュニケーション、日本型コンフリクト、対立の解決をはばむもの、社会的びくびく人間は誰?

第3講では「まりの物語」を使ってねまず練習。その上で自分自身の対立についてセルフカウンセリング、共感的傾聴、わたしメッセージへの取り組みを行いました。
第4講は、「いじめの構造図」から社会的ビクビク人間、日本社会の○△□をしました。

なぜ対立しにくいのか。そして、『対立から学ぼう』のカリキュラムの利点と限界を共有。

二日目は、前日学んだことを社会的な対立の場面で応用して考えるためのアクティビティを行いました。

第5講 「遅れてきた定着民」
第6講 シミュレーション・ゲーム「ラブカナルの市民運動」
第7講 協同学習「人権と死刑制度」
第8講 「対立から学ぼう」プログラム作成について

■「遅れてきた定着民」
これまで人権研修でよく使ってきている「遅れてきた定着民」そこにはさまざまな対立の芽があります。それをどう扱ったかが、ふりかえりのポイントです。
・既存の所有権との対立
・結構を許すか許さないか
・余所者は分断して統治せよ
・ムラの幹部にはしない
・既得権の防衛、剥奪されることへの怯え
・「遅れてきた定着民」自身が下手に出る
・なじもうとするか、なじまないか
・生き延びる戦略を優先する心理
・社会的身分の外に置かれる(アウトカースト)
・無干渉による対立の回避
・既得権の側の有能感「いいことやってやっている」
・情報格差
・資源格差
戦後民主化されなかったのは、このような地域の自治会などの「中間団体であり、そこには戦前と同じ論理が残っていたりするのです。
ふりかえりの視点を「対立」に置く事で、いつもとは違う発見ができました。

■「ラブカナルの住民運動」
1970年代後半、米国連邦政府の「スーパーファンド法」の成立につながったニューヨーク州ラブカナルでの住民運動のシミュレーション・ゲーム。
どのような対立があったかの視点でふりかえります。
このゲームは、住民がもっている「不確かな」情報を、収集し、意思決定し、行動に移すところがポイントです。
政府や企業が、自分たちは責任がないという態度をとる中で、どのように住民が動いて行くかの姿は、いまの福島第一原発事故後の姿に重なります。

■「人権と死刑制度」協同学習でレポート作成

このセッションには三つの目的がありました。
・「協同学習プロジェクト」に取り組んでもらう。ペアで。
・プロジェクトのプロセスの中で生まれる「対立」を自覚してもらう
・死刑制度についてどのような論点があるのか、どのような問題解決がありえるのかを考えてもらう

協同プロジェクトの時間として90分はとても短いものですが、待つ身にとっては大変な時間です。協同プロジェクトの報告書フォーマットがあった方が良かったのかもしれませんが、どのようなフォーマットでレポートを出してくるかも、評価の対象とすることにしました。

■『対立から学ぼう』の「調停のモデル」体験
協同プロジェクトを体験した上で、「調停のモデル」を三人一組みでロールプレイしてもらいます。そのことで、自分たちの協同学習自体をふりかえることができます。そこにあった対立の芽にも気づくことができます。自分がその対立の芽をどう扱ったかも自覚できるはずです。

そして、テーマは「死刑制度」。ここにも哲学的、社会的、文化的な対立が存在します。

さまざまな対立の入れ子状態の中で、どのように行動するのか、ふりかえり、そして気づく力を高めることが、『対立から学ぼう』のカリキュラムで学んだことの実践力につながると思います。


■□■3. ERIC主催研修2014年度の日程が決まりました。■□■
■2014年(平成26年)6月28日29日国際理解
■2014年(平成26年)7月26日27日PLT木と学ぼう・環境
■2014年(平成26年)9月27日28日人権
■2014年(平成26年)10月25日26日スキル対立から学ぼう
■2015年(平成27年)2月21日22日スキル未来を学ぼう
■2015年3月(平成27年)予定TEST教育力向上講座

■□■4. ERIC25周年に向けたご寄付のお願い ■□■
 1989年誕生の参加型学習老舗のERIC国際理解教育センター。
 これまで続けて来られたのも、企画委員、運営委員、理事、テキスト購入者、ファシリテーター育成事業参加者など、みなさまのおかげです。感謝です。
これからもよりよい「指導者育成のための実践」推進のための情報提供、研修プログラムの提供などに努力していきたいと思います。
2011年度から取り組んできた「ERIC25周年プロジェクト」。以下のような成果をあげることができました。みなさまのご協力に感謝いたします。

■アクティブな教育を実現する対話と共考-ESD的教育力向上を目指して
インタビュー10 本、ブログ http://ead2011.exblog.jp/
■リスク・コミュニケーションを対話と共考の場づくりに活かす
日立環境財団からの助成金プロジェクトおよびテキストの翻訳
 http://focusrisk.exblog.jp/
■PLT Focus on Forest 一部翻訳 「森の健康診断」
ForestHealthCheck.pdf ERICホームページにアップ予定
■PLT大学生ショートプログラム
http://www.eric-net.org/news/PLTForestNova2014.pdf
■Learning to Care
http://ericweblog.exblog.jp/18988618/
ERICホームページにアップ予定
■平和の文化への道を拓く平和教育 翻訳プロジェクト
http://pepathway.exblog.jp
最終的なネットでの提供は2014.3.18http://www.eric-net.org
■インフォグラフィックス研究会(ERIC主催)
■ゆるキャラ「リカリン」
■PLT 『世界の森林』 Forest of the World
これは現在も継続中プロジェクトです。近々、ホームページで提供開始。
■ヨッシャーゼミ参加者募集中
若い世代と50歳代以上の人々の学びをつなぐERIC主催ヨッシャーゼミ。現在複数のプロジェクトが進行中。また、次のニュースで御知らせいたします。

 特別活動支援のために、テキスト活用、研修参加などのご支援に加えて、ぜひ、ご寄付をお寄せください。よろしくお願いいたします。
ご寄付先 金融機関
ゆうちょ銀行口座: 
10020-3288381 名義:トクヒ国際理解教育センター(ゆうちょ銀行同士)
◯◯八(ゼロゼロハチ)店008-0328838 名義:トクヒ国際理解教育センター(他の金融機関から)

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  (特定非営利活動法人)国際理解教育センター
ERIC:International Education Resource & Innovation Center

〒 114-0023 東京都北区滝野川1-93-5 コスモ西巣鴨105
  tel: 03-5907-6054(研修系) 03-5907-6064(PLT・テキスト系)
  fax: 03-5907-6095
  ホームページ http://www.eric-net.org/
  Eメール   eric@eric-net.org
  blog 「 ESD ファシリテーター学び舎ニュース http://ericweblog.exblog.jp/
  blog  「PLT 幼児期からの環境体験」
http://pltec.exblog.jp/
  blog 「リスク・コミュニケーションを対話と共考の場づくりに活かす」
http://focusrisk.exblog.jp/
  blog アクティブな教育を実現する対話と共考-ESD的教育力向上を目指して
http://ead2011.exblog.jp/
  blog 平和の文化への道を拓く平和教育 翻訳プロジェクト
http://pepathway.exblog.jp/
by eric-blog | 2014-06-22 09:12 | ERICニュース
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