ERIC NEWS 382号 ともによりよい質の教育をめざして  2014年4月13日

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ERIC NEWS 382号 ともによりよい質の教育をめざして  2014年4月13日

   at ERIC/ from ERIC 主催研修・ファシリテーター派遣研修
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(文責: かくた なおこ 角田尚子
http://ericweblog.exblog.jp/
twitter : kakuta09  FBもやってます。)

「民主主義の学校=実践編」で、鹿児島に行ってきました。テーマは「選挙は告示前があったかい?!」。この報告は、次の機会にするとして、新学期が始まりましたね。ぜひ、今年度もERICの主催研修、共催研修、ファシリテーター派遣研修で「よりよい質の教育をすべての機会に、あらゆる人に」を実現していきましょう!

今号のニュースでは、改めて、ERICの主催研修・ファシリテーター派遣研修の特徴をまとめておきます。

目次
■ 1.  ERICの目指す「よりよい質の教育」二つの特徴
■ 2. ERICの主催研修の構造
■ 3. 2014年度主催研修日程
■ 4. ERIC25周年

■□■1. ERICの目指す「よりよい質の教育」二つの特徴 ■□■

ERICの目指す「よりよい質の教育」には二つの特徴があります。
1. 「何」よりも「どのように」を育てる whatではなくhowに
2.  理念・概念・ガイドラインを教育的ツールに


1. 何を学ぶかよりも、どう考えるかを身につけること。

環境教育も人権教育も、「スキル・行動への意欲・問題解決行動」を教えるという点では共通しています。それは、環境教育の指導者育成に取り組むオーストラリア、グリフィス大学のジョン・フィエン氏がすでに1990年代に指摘したことです。フィエン氏がまとめた「4つの教育比較表」を翻訳したものは『いっしょに考えて! 人権 人権教育ファシリテーターハンドブック発展編』p.46に所収しています。
「グローバル時代に求められる資質・能力と国際教育」というJICAとNIERによる共同研究の発表会で、国際理解教育、開発教育、市民性教育などの名称で各国で取り組まれている教育は、近年の教育革新の動向を先取りしたものであったと報告されています。
http://ericweblog.exblog.jp/19552099/
報告者は「コンピテンシー」を伸ばすという点が一致しているとまとめています。
これまで「知識・技能・態度」と区分されていた教育目標をひとまとめにしたような概念が「コンピテンシー」です。

知識が無ければ物事は考えられない。しかし、知識だけ、知識主義・客観主義の教育では行動力は育たない。行動するには、例えば、power within, power with, power toなどと整理されたような「わたしの内なる力」「他者とともに発揮する力」「行動する、活用する力」などのスキルを伸ばすことが必要です。

しかし、知識もスキルも、それを活用しようという意欲がなければ活かされない。つまり「知識・技能・態度」の統合された実践力が「コンピテンシー」という新たな衣をまとって提示されているのです。

一人ひとりの学習者に、そのような統合された力を育てるために大事なことが「全体言語主義」という指導アプローチであり、「構成主義」という学習者観なのです。

全体言語主義というのは、ことばや概念を抽象的に知識として教えるのではなく、血肉を伴った、すなわち体験経験を通じた学習として身につけて行くアプローチです。そのアプローチは、学習者は自らの学びを統合する主体であるという「構成主義」的な学習者観にのっとっています。

これまでも、このようなアプローチの違いは、次のような表現で表明されてきています。「教科書を」教えるのか「教科書で」教えるのか。

「教科書を」教えるというのが、「何を」教えるかを重視している教授法であり、評価の視点です。それに対して「教科書で」教えるというのは、考え方や見方を教科書に載っている内容を通して教えるものです。

これは協同学習の実践でも同様です。グループ学習や班活動を行う時に、「集団で」教えるのか、「集団を」教えるのかは大きく違います。「集団で」教えると言うのは、伸ばすべきはあくまでも個人であるのです。

コンピテンシー重視の教育というのは、「何」よりも「どのように」が重要になるでしょう。そして、その「どのように」教えるかの背景には、価値観があるのです。

2.  理念・概念・ガイドラインを教育的ツールに

Howの背景には「Why」がある。わたしたちの行動の背景には価値観がある。

教育の実践家は「省察的実践家である」と指摘しているのは秋田貴代美さんらの『新しい時代の教職入門』です。そこに「三つの省察」が紹介されています。この考え方が、ERICの研修の構造を明確に説明してくれました。「どのように行うか」を技術的に省察することで、そのHowの背景となる「価値観」に気づく。その価値観や教育目標を実践的に省察することで、より長期的な教育目標との整合性を見通して省察することにつなげることができる。それが三つの省察です。
○ 技術的省察
○ 実践的省察
○ 見通し的省察
教育的実践家とは、このような省察力、ふりかえる力、ふりかえりから学ぶことができ、見通しをもって改善・修整することができる実践家であるということです。

JICAとNIERによる共同研究は、近年の教育改革と国際教育の共通点として「コンピテンシー」重視をあげていますが、この共同研究が見過ごしていること、そして、多くの方法論についての学会や組織に欠如していることは「ESDは価値観の教育である」という点です。

この点については、ERICニュースの379号で指摘いたしました。
http://ericweblog.exblog.jp/19597463/

方法論の背景には、価値観があります。そのことを理解せずに実践している方法論は、自ら改善・成長する力を持っていません。価値観や原則を把握していることが、方法の改善につながるのです。方法論だけを「まねんでいる」団体や組織は、形式主義、権威主義に陥ると思われます。

ERICでは、「価値観」の教育を、参加型学習の方法論でどのようにできるかを実践的に取り組んできました。価値観を学ぶのに、トップダウンの権威主義に陥らないこと、「価値観」を内在化させること、自らがその価値観の主体となり、行動の選択に活かしていく、そのような習熟のために「参加型」が有効なのです。これは道徳教育にも当てはまるものだと言えるでしょう。

「理念・概念・ガイドラインを教育的ツールに」

それがERICの参加型手法を、他団体と差異化する一番大きな特徴であると言えます。

原理原則の共有なき日本社会において、これはとても大変な教育目標ですが、であるが故に、取り組みがいのある課題でもあると思っています。

■ □■2. ERIC主催研修の構造 「三つのテーマ・三つのスキル」
2000年から実施しているERIC主催研修ESDファシリテーターズ・カレッジは、「グローバルな人類共通の課題」についての理解と問題解決のための行動という国際理解教育の実現をベースに、持続可能性の二つの大きな柱、「環境」と「人権」についての理解と問題解決のための行動という三つの柱を扱っています。ERICでは開発や平和は人権と環境という視点から考える必要のある課題であると整理し、三つのテーマの柱を立て、年度ごとに焦点を変えて実践しています。

ERICでは、これらの教育に共通するスキルを「わたし・あなた・みんな」と整理して、後半の「3つのスキル研修」を構造化しています。
参加型学習そのものが「テーマ」についての理解と「参加のスキル」を伸ばすことを目標としているものですから、後述するように、テーマについての研修においても「参加の3つのスキル」を取り上げて、伸ばすことを目指しています。

2日間12時間6セッションの講座の構造

1セッションは2時間、6セッションで12時間となります。

6セッションは次のように構成されています。

§1 共通基盤づくり
§2 流れのあるプログラム体験
§3 ふりかえりと参加型学習の特徴
§4 プログラム・アクティビティ開発
§5 ファシリテーション実践
§6 ふりかえりと個人的行動計画

この6つのセッションの概要を説明します。

セッション1「共通基盤づくり」は、参加型学習や研修、ワークショップが成立するためには、参加者相互の共通理解が必要であるところから、最初に位置づけられています。どのような学びの場であれ、その場にいる人々の、共通理解があって始めて成り立っているのです。そのような不文律を、明確にし、よりよいものにしていく心構えも、共有することができるのです。

セッション2「流れのあるプログラムの体験」では、テーマ型とスキル型の二つのプログラムを取り上げます。参加型学習は、いくつかのアクティビティを組み合わせて構成されているのですが、その流れをどのように構成するかが、ポイントです。

セッション3「ふりかえりと参加型学習の特徴」では、参加型学習の特徴を、参加型学習の経験主義的アプローチで学びます。体験したことをふりかえり、ふりかえったことから一般化し、原理原則を紡ぎだし、応用する。そういう一連の経験学習のアプローチによって学ぶことを、指導者育成においても実施するということです。参加型学習の特徴をまとめるとともに、改善のための点検の視点を共有することで、プログラム評価および改善につなげます。
セッション4「プログラム・アクティビティの開発」では、参加型学習の流れのあるプログラムづくりおよびアクティビティ開発を行います。一日目で学んだことの応用でもあります。

セッション5「ファシリテーション実践」は、セッション4で作成したプログラムやアクティビティを、参加者相互に実践し検証するものです。ファシリテーターの言葉使い、説明、すすめ方の手順などの適不適を検討し、改善するものです。

セッション6「ふりかえりと個人的行動計画」では、二日間で学んだこと、身に付いたことをふりかえり、確認するとともに、研修を受けて、学んだことを今後に活かして行くための行動計画を考えるものです。学んだことを今後に活かす、それも「経験学習的アプローチ」の基本であり、「気づきから行動へ」の教育理念にのっとったものです。

最終セッションで「個人的行動計画」を取り入れるというのはPLTのファシリテーター養成ワークショップの組み立てより採用した方法論です。PLTファシリテーター・ハンドブック2008年版のダウンロードはこちらからhttp://eric-net.org/news/FHB08LB.pdf

6つのセッションの流れは、「ふりかえり」「省察」によって、参加型学習の特徴についての理解を一人ひとりが「構成」すること、学んだことを応用してプロログラムを開発すること、そしてそれを実践することを手助けする構造になっています。

なかなか12時間研修が実施できない受託研修の場合でも、6時間研修ではセッション1から3の組み立てを基本とし、アクティビティ開発やファシリテーション実践が省略された形となります。また2時間3時間などの短時間の場合は、アクティビティそのものがコミュニケーションのスキル演習や共通基盤づくりという複数の目的を満たすものとして選ばれています。

■ □■3. ERIC主催研修2014年度の日程が決まりました。■□■
日程表、実施要項、申込書などはERICホームページからダウンロードできます。
http://www.eric-net.org/

詳細など、お気軽にお問い合わせください。
問い合わせ先: eric@eric-net.org
■ 2014年(平成26年)6月28日29日 国際理解
■ 2014年(平成26年)7月26日27日 PLT木と学ぼう・環境
■ 2014年(平成26年)9月27日28日 人権
■ 2014年(平成26年)10月25日26日 スキル関係性・対立から学ぼう
■ 2015年(平成27年)2月22日23日 スキル市民性・未来を学ぼう
■ 2015年3月(平成27年)予定 TEST教育力向上講座

■□■4. ERIC25周年に向けたご寄付のお願い ■□■
 1989年誕生の参加型学習老舗のERIC国際理解教育センター。
 これまで続けて来られたのも、企画委員、運営委員、理事、テキスト購入者、ファシリテーター育成事業参加者など、みなさまのおかげです。感謝です。
これからもよりよい「指導者育成のための実践」推進のための情報提供、研修プログラムの提供などに努力していきたいと思います。

 日常活動に加えて、25周年に向けて、事務所のリニューアル、フューチャーサーチ走向未来ワークショップの開催など、企画しています。
 特別活動支援のために、テキスト活用、研修参加などのご支援に加えて、ぜひ、ご寄付をお寄せください。よろしくお願いいたします。
ご寄付先 金融機関
ゆうちょ銀行口座: 
10020-3288381 名義:トクヒ国際理解教育センター(ゆうちょ銀行同士)
◯◯八(ゼロゼロハチ)店008-0328838 名義:トクヒ国際理解教育センター(他の金融機関から)

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  (特定非営利活動法人)国際理解教育センター
ERIC:International Education Resource & Innovation Center

〒 114-0023 東京都北区滝野川1-93-5 コスモ西巣鴨105
  tel: 03-5907-6054(研修系) 03-5907-6064(PLT・テキスト系)
  fax: 03-5907-6095
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  blog 平和の文化への道を拓く平和教育 翻訳プロジェクト
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by eric-blog | 2014-04-13 11:54 | ERICニュース | Comments(0)
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