ERIC NEWS 379号 ともによりよい質の教育をめざして  2014年3月23日

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ERIC NEWS 379号 ともによりよい質の教育をめざして  2014年3月23日

   at ERIC/ from ERIC ファシリテーター派遣・主催研修
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(文責: かくた なおこ 角田尚子
http://ericweblog.exblog.jp/
twitter : kakuta09  FBもやってます。)

やっと暖かくなってきましたねぇ。

この21-22日に、主催研修の最後の回、TEST教育力向上講座も修了しました。って、原稿を書いているのは、実施前からですが。

今年度も、6回の主催研修すべてを開催することができました。みなさまのご参加によって、よりよい質の教育を推進していくことができること、大変ありがたく、感謝です。実践者が増え、そして現場での実践力がついて行くことを目指して、これからもERICのファシリテーター派遣、主催研修ともに、継続的に取り組んで行きたいと思います。


■■□■1.  国際教育はコンピテンシー教育の先駆者である! ■□■

377号で「グローバル時代の国際教育」というJICAと国立教育政策研究所の
共同研究で、コンピテンシーという近年の教育研究、OECDのDeSeCoが示す方向性について、国際教育は先駆的であったのだと、明らかにされたことを紹介しました。
http://www.eric-net.org/news/GlobalInternational20140308tanaka.pdf

オーストラリアの環境教育学者であるジョン・フィエン氏がすでに1990年代に指摘したように、環境教育、開発教育、人権教育、平和教育の四つの教育がめざすスキル・能力・意欲などは共通であるということを考えると、これらの教育はすべて先駆的であったのだということができるでしょう。

持続可能な開発のための教育(ESD)もまた「持続可能な開発のための」教育であり、そのために、知識理解だけではなく、「○○する力」と意欲というコンピテンシーを育成することは共通していると言えるのです。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/016/siryo/06092005/002/001.htm

■DeSeCoとPISAがもたらした変化—日本の教育において

リテラシー、コンピテンシーという考え方が、いかに日本の学習指導要領の中も変えてきたかについては松下論文で、簡単にまとめられています。
http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2011/09/pdf/039-049.pdf
まとめると、以下の二点です。
1. グローバルな目標-評価システムの浸透
2. エビデンスに基づく検証評価サイクルの構築

PISAとDeSeCoでは、DeSeCoの方がより包括的な教育目標を定めており、PISA調査が方法論的にペーパーテストに依拠しているために、その包括性に疑問が寄せられることはあるのですが、両者がまったく別のものであるということはありません。

DeSeCoの方針が日本社会にもたらした論争も、今回の共同研究で一応決着がついたように思えますが、安倍政権下の教育政策で顕著な以下のような問題が、DeSeCoの推進とどんな軋轢を教育現場で生み出すかは、まだ未知数であるように思えます。

○愛国心教育と道徳教育の教科化
○教科書の広域採択および「政府見解」の検定教科書への反映
○教育委員会の知事部局化

さすがに、愛国心の教育が、戦前の「教育勅語丸暗記」的な教育方法によることは、あってはならないと思います。また、一方で言われている道徳の教科化とは、すなわち専門職の不在と、専門的教授法などについての研究・研修の未熟さをいまだ伴っていることは忘れてはならないでしょう。かけ声だけで教育改革はなせるものではありません。

総合学習の時間が導入された時、専門職の不在と現職教育の欠如および実施のためのリソースの不十分さが憂慮されたのと同じことが、道徳教育においても起きかねないように思います。お手軽に副読本あるいは教科書だけを作成して、「はい、実施」となることをもっとも危惧します。

少なくとも、「教育勅語丸暗記型」教授法は、DeSeCoの教育方針が明確に示している「人間としての在り方を問われる反省性は、枠組みの中心的役割を成す。省みて考えた行動は、慣習的な行為を規定通りに正す能力だけでなく、変化に応じて経験から学習し、批判的なスタンスで考え抜く能力のことである。」(WikiのDeSeCoより)とはまったく相容れないものであることは明らかです。

DeSeCo/PISAがもたらした日本の教育における「グローバルな教育目標・評価」のシステムと、「エビデンスに基づいた検証姿勢」を覆すものとならないことを願います。

■共同研究が見落としているもの=ESDは価値観の教育である。

しかし、ここで、もう一つ、国際理解教育およびESDの特徴であって、JICA/NIREの共同研究が言及していない点、そしてDeSeCoやPISAの教育方針が包含しているにもかかわらず、明示されていないものがあります。

それはESDが価値観の教育であるということです。DeSeCoの議論は、狭義にはOECD経済開発機構の掲げる経済開発の目標に合致したものだと説明されています。
http://www.oecd.org/fr/edu/apprendre-au-dela-de-l-ecole/definitionandselectionofcompetenciesdeseco.htm

• boosting productivity and market competitiveness;  生産性をあげ、市場競争力を高める
• minimizing unemployment through developing an adaptive and qualified labor force; 適応力のある質の高い労働力を開発することで失業を低減する
• creating an environment for innovation in a world dominated by global competition.グローバルな競争に支配されている世界での革新をすすめる環境創造
しかし、OECDですら、これらの知識・スキル・コンピテンシーについての議論は、より広い社会にとっての意味という点からも重要であることを認めています。
• increasing individual participation in democratic institutions; 民主的な機関への個人の参加を増進する
• social cohesion and justice; and 社会的一体性と正義
• strengthening human rights and autonomy as counterweights to increasing global inequality of opportunities and increasing individual marginalization. 
増大するグローバルな機会の不平等と個人の周辺化がすすむのに対抗して、人権と自律を強化する

すなわち、これらのコンピテンシー議論の背景には、民主主義、正義、人権という理念があるということです。

■Howどのように行動するかの背景にはWhyなぜがある。

コンピテンシーの背景には「なぜ」があり、逆に「なぜ」を押さえずにコンピテンシーを育てることはできない。なぜならば、「評価・点検」のシステムにおいては、「点検」の視点としての、これらのコンピテンシーやスキルの背景にある理念や概念が存在することが必須なのです。「なぜ、そのコンピテンシーを教えるのか」ということの教育的な目標の理解と共有があって初めて、カリキュラムの効果があがるのです。

日本の教育界には、明治維新によって西洋化の道を選んで以来、「和魂洋才」という技術だけをとってつけたような姿勢がありました。スキルの背景には、「なぜ」があるのです。ESDに連なるコンピテンシーを、単なる技術論として位置づけて指導しようとすることは、ESDの実践とは言えません。

技術の背景の「なぜ」をこそ、教育的実践者は理解する必要があるのです。

ESDの価値観は、人類共通の、普遍的な価値観です。

•・現在および将来の世代を含む他者の尊重
•・相違と多様性の尊重
•・環境の尊重
•・我々が住む惑星の資源の尊重

そして、あらゆる機会に、あらゆる人に対して行われるべきESDとは、常に、このような価値観を育てることに貢献しているかどうかを点検の視点として持つことによって、「評価・点検・改善」のサイクルによって推進していくことができるのです。

■□■2. ファシリテーター派遣研修■□■
今年度も人権研修が中心でした。もっとESDや国際理解教育、環境教育などのテーマ、「参加型学習の方法論」そのもののトレーニング、フューチャーサーチ会議や地域づくりワークショップなどにも、ファシリテーターを派遣する機会が増えるといいですね。
ブログで紹介したプログラムをピックアップ。

■高校生のためのグローバル・セミナー
http://ericweblog.exblog.jp/18885651
■地域の未来を考えるフューチャーサーチ
http://ericweblog.exblog.jp/19030126
■Gapジェンダー・アウェアネス・プログラムで考える「期待と抑圧」
http://ericweblog.exblog.jp/19469354
■幼児期からの環境体験&前向きな子育てプログラム記録
http://ericweblog.exblog.jp/18825802

人権研修も、2時間から2日間まで、多様です。テーマも「いじめ」「高齢者の人権」、人権尊重につながるスキル・トレーニングとして「アサーション」など。
人権研修 2.5時間 記録「やってみよう! あなたもできる参加型」
http://ericweblog.exblog.jp/17824645
人権研修 アダプト・アクティビティ編
http://ericweblog.exblog.jp/17904344
人権研修 2日間 アクティビティ実践力向上
http://ericweblog.exblog.jp/17931820

人権研修 校内 2時間 「いじめ」と「アサーション・トレーニング」
http://ericweblog.exblog.jp/18240627

高齢者のためのアサーションを考える
http://ericweblog.exblog.jp/18710334


大学でのプログラムです。
コミュニケーション実践講座  大学生プログラム
http://ericweblog.exblog.jp/17853188

ドイツの時間・日本の時間 わたしたちは変われるか?
http://ericweblog.exblog.jp/18128281
問題解決力をつけよう!
http://ericweblog.exblog.jp/17942616


■□■3. ERIC主催・ESDファシリテーター養成講座■□■
3月21-22日に、TEST14教育力向上講座が終了しました。記録はこちらから。
http://ericweblog.exblog.jp/19595143/

以下、これまでの五本の研修についてのまとめです。
□市民性教育「未来を学ぼう」 atERIC2013VV記録
http://ericweblog.exblog.jp/19547733/
□対立から学ぼう  atERIC2013CR記録 
http://ericweblog.exblog.jp/18871676
□ERIC主催研修 ESD fc テーマ「人権」
http://ericweblog.exblog.jp/18703175
□at ERIC ファシリテーターズ・カレッジ 環境教育/PLT
http://ericweblog.exblog.jp/18203248
□ESDファシリテーターズ・カレッジ テーマ「国際理解」
http://ericweblog.exblog.jp/18028886
□2日間12時間6セッションの主催研修は構造化されている。
http://ericweblog.exblog.jp/19534934

各回の要項はERICホームページから。
http://www.eric-net.org/

■□■4. ERIC主催研修2014年度の日程が決まりました。■□■
■2014年(平成26年)6月28日29日国際理解
■2014年(平成26年)7月26日27日PLT木と学ぼう・環境
■2014年(平成26年)9月27日28日人権
■2014年(平成26年)10月25日26日スキル対立から学ぼう
■2015年(平成27年)2月22日23日スキル未来を学ぼう
■2015年3月(平成27年)予定TEST教育力向上講座

■□■5. ERIC25周年に向けたご寄付のお願い ■□■
 1989年誕生の参加型学習老舗のERIC国際理解教育センター。
 これまで続けて来られたのも、企画委員、運営委員、理事、テキスト購入者、ファシリテーター育成事業参加者など、みなさまのおかげです。感謝です。
これからもよりよい「指導者育成のための実践」推進のための情報提供、研修プログラムの提供などに努力していきたいと思います。

 日常活動に加えて、25周年に向けて、事務所のリニューアル、フューチャーサーチ走向未来ワークショップの開催など、企画しています。
 特別活動支援のために、テキスト活用、研修参加などのご支援に加えて、ぜひ、ご寄付をお寄せください。よろしくお願いいたします。
ご寄付先 金融機関
ゆうちょ銀行口座: 
10020-3288381 名義:トクヒ国際理解教育センター(ゆうちょ銀行同士)
◯◯八(ゼロゼロハチ)店008-0328838 名義:トクヒ国際理解教育センター(他の金融機関から)

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  (特定非営利活動法人)国際理解教育センター
ERIC:International Education Resource & Innovation Center

〒 114-0023 東京都北区滝野川1-93-5 コスモ西巣鴨105
  tel: 03-5907-6054(研修系) 03-5907-6064(PLT・テキスト系)
  fax: 03-5907-6095
  ホームページ http://www.eric-net.org/
  Eメール   eric@eric-net.org
  blog 「 ESD ファシリテーター学び舎ニュース http://ericweblog.exblog.jp/
  blog  「PLT 幼児期からの環境体験」
http://pltec.exblog.jp/
  blog 「リスク・コミュニケーションを対話と共考の場づくりに活かす」
http://focusrisk.exblog.jp/
  blog アクティブな教育を実現する対話と共考-ESD的教育力向上を目指して
http://ead2011.exblog.jp/
  blog 平和の文化への道を拓く平和教育 翻訳プロジェクト
http://pepathway.exblog.jp/
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by eric-blog | 2014-03-23 09:20 | ERICニュース | Comments(0)
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