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人権は国境を越えて

人権は国境を越えて
伊藤和子、岩波ジュニア新書、2013
2086冊目

これが「ジュニア新書」の内容か? と驚くような充実度とカバーされたトピックの広さです。

1994年に弁護士になった伊藤さんが、1995年の北京女性会議に参加。そこで買春の問題に触れ、帰国後、フィリピンでの買春について日本人男性の裁判を手がけ、現地調査も実施。1999年の児童買春・ポルノ規制法の成立を働きかけていく。

その後、2006年、国際人権保護団体ヒューマンライツ・ナウ設立。設立から7年、700人以上が支えてくれる団体に成長。

現地調査や国連への働きかけ。世界は日本を待っている! 待ってました!

がんばってくれぇぇぇ!

活動の範囲は
○アフガニスタン難民キャンプ
○ビルマの人権抑圧
○フィリピンでの軍隊による殺戮
○カンボジアの虐殺の記憶との向き合いと現在の立ち退き
○イラクの戦争後の子どもの人権状況
○日本の東日本大震災後の人権状況。被災地で、そして原子力発電所の事故による放射線被ばく被害について。

エピローグで、著者は、誰にでもできることとして「知り、そして伝えること」

深刻な人権侵害が続いてしまう状況に共通する特徴があると。
1.加害者と被害者のあいだに圧倒的な力の差がある
2.加害者が巨大な力で人権侵害を生むシステムをつくり、事実を隠蔽している
3.被害者が少数派で孤立している
4.被害者が力を奪われ、声をあげられない状況にある
5.人々が無関心である。

最後の無関心が孤立につながるのだと言います。

国際理解教育が、1976年代のユネスコ勧告を受けて、チャドウィック・アルジャーさんの「無関心の悪循環」の指摘から「気づきから行動へ」を目指して始められたのは、1980年代です。

人権教育は、まさしく著者らが問題提起している問題についての「気づき」と「行動」を推進するためのものなのだと思います。「無関心」をぶっとばせ!

今回、この本で初めて知ったのは「デージー・カッター爆弾」(BLU-82)。
半径500mを一気に無酸素化し、周辺にいる人全員を一瞬にして酸素欠乏で殺害できるという大量殺戮兵器が、アフガニスタンで使われたということ。31

著者らが難民キャンプでの聞き取りで明らかにしたことです。

この「デージー・カッター爆弾」による殺戮に、日本が無関係だとは言えません。日本は米国のアフガニスタン派兵を支援したのですから。

米国も、自国の平和のために軍隊を展開しているのだというでしょう。9.11で攻撃された、それを繰り返さないためなのだと。

しかし、その展開は、すでに世界の不安定化にすらつながっています。(『ショック・ドクトリン』の指摘によれば、1974年以来ということですが。)

いま、日本の自衛隊が集団的自衛権という名の「自衛」にまで参加する道を開きつつある時、一般市民の大量殺戮に、自衛隊が直接手をくだす可能性も出てきているのです。

その時、わたしは、何を感じるのだろうか。何を後悔するのだろうか。

平和憲法や自衛隊の問題以前の問題にも、取り組まなければと、思うだろうなあ。

Human Rights Now and Forever!

福島第一事故の影響について、国連の調査と報告。

2013年5月、国連特別報告者アナンド・グローバーによる報告と勧告。187〜
・年間被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下にならない限り、避難中の人は帰還を勧められるべきではない。
・国は、年間被ばく線量が年間1ミリシーベルト以上の地域に住む人には非難・移住のために経済的支援をすべきである。
・年間1ミリシーベルト以上に住む全員とすべての原発労働者に対して、くわしい、長期的な健康検査を実施すること。
・子どもには、甲状腺検査に限らず、尿、血液等関連するすべての検査をすること
・住民保護の施策、原発の稼働、避難、エネルギー政策や原子力規制等のすべての意思決定プロセスに住民が参加する仕組みをつくること
by eric-blog | 2013-11-08 08:37 | ■週5プロジェクト13
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