IWJウィークリー19号の記事から。
この質の高い、内容の濃い情報を発信し続けるIWJ、みんなで支えましょう。月々3000円は、新聞代より安い! 正力松太郎さん肝いりの読売新聞以上の読者数になれば、市民力が政治を経済を変える力になる。 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/107798 すでに、日弁連は、2003年に、調査報告とともに謝罪を求める勧告を政府に対して出しています。 http://www.azusawa.jp/shiryou/kantou-200309.html 敗戦時に、軍の命令で書類を廃棄させた。そんな国に生きているのだということを、わたしたちは、忘れてはならないと思います。 誰かにとって都合のよいことだけが「歴史」となっていくことに加担しない。 ばかばかしいと思ったら、言う、指摘する、行動する。 ━【編集長の編集後記(岩上安身)】━━━━━━━━━ あっという間に秋が深まりつつあります。 9月の話を10月に書くな、と叱られるのを覚悟の上で、90年前の9月1日の出来 事を振り返りたいと思います。 1923年(大正12年)9月1日、午前11時58分、マグニチュード7.9の大地震が関 東の大地を襲いました。関東大震災です。その直後から流言飛語が飛び交い、朝 鮮人が多数殺されるという、恐ろしい大惨事が起きました。この未曽有の大事件 について、なぜかいまだに日本政府の公式の調査は行われていません。 日弁連が行った近年の調査によると、殺された朝鮮人の数は約8千人にものぼ ります。この報告書の存在を教えてくれたのは「憲法鼎談」を重ねてきた梓澤和 幸弁護士と澤藤統一郎弁護士でした。6月10日に行われた、第12回目の「憲法鼎 談」の中で梓澤弁護士は、自民党憲法草案に沿って改憲が行なわれ、かつての戒 厳令に相当する緊急事態宣言が可能になると、どういうことになるか、こう語り ました。(自民党の憲法改正案についての鼎談 第12弾 記事URL:http://iwj.co. jp/wj/open/archives/84119) 梓澤「軍が権力を握った時に、どういう恐ろしいことになるか。日弁連で、関東 大震災における朝鮮人・中国人虐殺事件の調査チームというのを、日弁連の理事 会で決めて、その調査チームが報告書を作り、そして日弁連が国に対して、朝鮮 人虐殺、中国人虐殺の責任を謝れ、といった報告書を出したんですね」 岩上「いつ頃の話ですか?」 梓澤「2003年8月25日。これは理事会を通った日弁連総意の報告書です(※)。 そのなかで、これは本当に知られていないんですけれども、実は民衆虐殺だけが 言われているけれども、実は軍がものすごい虐殺をやっているんですよね。 それを軍の資料に基づいて、事実認定をしたんです。9月2日に戒厳が宣告されて 、9月1日から9月4日にかけて」 澤藤「9月1日が震災」 梓澤「ですね。そして、一番大きなひどい虐殺は、9月3日。東京府大島町3丁目 付近で、3名の兵士が朝鮮人を銃の台尻で殴打したことがきっかけで、群衆、警 察官と闘争が起こり、朝鮮人200名が殺害された。 これを始めとして、朝鮮人、中国人を数えると、軍が直接、銃器を用いて、ある いは刀を用いて殺した事例が7800名に及んでいるということが、この報告書のな かに書いてあります」 日弁連の報告書は、以下のリンクで読むことが可能です。 (※)資料 関東大震災人権救済申立事件調査報告書 日弁連 http://www.azusawa.jp/shiryou/kantou-200309.html この虐殺事件は、まごうかたなきテロの横行です。テロへの警戒とそのための 治安強化の必要性をしきりに主張しながら、治安を統べる警察と戒厳令下で絶対 的な権力を握る軍が、自らテロを行なったこの大事件を、日本政府が今なお、ふ り返ろうとしていないのは、奇観という他ありません。この事件については、「 朝鮮人が毒を井戸に投げ込もうとしている」などのデマが広がり、民間の自警団 などを虐殺へと駆り立てていったことが知られています。そうしたデマどのよう にして広まり、人々を狂気へと導いていったのか。その様子を知る手がかりが、 私の手もとにあります。法務大臣や通産大臣や副総理を歴任し、自民党の総裁選 に出馬した経験もある大物保守政治家・石井光次郎氏の自伝『回想八十八年』と いう本です。 ▲『回想八十八年』石井光次郎著(【写真URL】http://bit.ly/16vAYx4) 石井氏は、警察官僚出身(内務省)で、朝日新聞に中途入社し、専務にのぼり つめたあと政界に転出するのですが、朝日新聞時代に、関東大震災に遭遇した時 の模様を、同書の中でこう記しています。 「記者の一人を、警視庁に情勢を聞きにやらせた。当時、正力松太郎君が官房 主事だった。 『正力君の所へ行って、情勢を聞いてこい。それと同時に、食い物と飲み物が 、あそこには集まっているに違いないから、持てるだけ、もらって来い。帝国ホ テルからも、食い物と飲み物を、できるだけもらって来い』といいつけた。 それで、幸いにも、食い物と飲み物が確保できた。ところが、帰って来た者の 報告では、正力君から、『朝鮮人がむほんを起こしているといううわさがあるか ら、各自、気をつけろということを、君たち記者が回るときに、あっちこっちで 触れてくれ』と頼まれたということであった。 そこにちょうど、下村さんが居合わせた。『その話はどこから出たんだ』『警 視庁の正力さんがいったのです』『それはおかしい』 下村さんは、そんなことは絶対にあり得ないと断言した。『地震が九月一日に 起こるということを、予期していた者は一人もいない。予期していれば、こんな ことにはなりはしない。朝鮮人が、九月一日に地震が起こることを予知して、そ のときに暴動を起こすことを、たくらむわけがないじゃないか。流言ひ語にきま っている。断じて、そんなことをしゃべってはいかん』こういって、下村さんは 、みんなを制止した」 ここに登場する正力松太郎氏は、のちに読売新聞の社主となり、部数を飛躍的 にのばした読売の「中興の祖」です。A級戦犯容疑者の一人であり、日本に原発 を導入した立役者としても知られています。その正力松太郎氏が、警視庁の官房 主事という立場で「朝鮮人が謀反を起こそうとしている、という噂をあちこちで 触れまわってくれ」と、新聞記者たちを煽っていた、というのです。軍とともに 警察も虐殺に加担していたという事実が、こうした証言によって裏書きされてい きます。 『回想八十八年』には、大震災と虐殺についての記事がさらにこう続きます。 「九月二日の夕方家へ帰った。 家に着くと、『朝鮮人が六郷川のほうに集結していて、今晩中に押しよせて来 るから、みんな小学校へ集まれ』ということだった。私は、ちょっと様子を見て 、また社に引っ返すつもりであったのに、大変なことになったと思った。家族を 見殺しにするわけにもいかないから、社には秘書を使いにやって、『こういうわ けだから、今晩は帰社できない」といっておいた。 下村さんの話を聞いていたから、そんなことはありえないとは思っていたが、 とにかくみんなを連れて、小学校に行った。小学校は、いっぱいの人であった。 日が暮れてから、演説を始めた者がいた。『自分は陸軍中佐であります。戦いは 、守るより攻めるほうが勝ちです。敵は六郷川に集まっているというから、われ われは義勇隊を組織して、突撃する体制をとりましょう』と叫んでいる。 バカなことをいうやつだと思ったが、そこに集まった人びとも、特に動く気配 もなかったから、私も黙っていた。 そのうち、『井戸に毒を投げ込む朝鮮人がいる。そういう井戸には印がしてあ る』などという流言が入ってきた。あとで考えると、ウソッパチばかりだった。 私は、趣旨としては下村さんのいうとおりだと思うけれど、警視庁もそういって いるし、騎虎の勢いで、どうなるかわからないと懸念していた。夜明けまで小学 校にいたが、何事もなく、ときどき、いじめられた朝鮮人が引きずられて行くだ けだった」 文中に登場する下村さんとは、台湾総督府総務長官を経て、朝日新聞に入社、 専務、副社長を歴任した下村宏氏を指します。植民地の現実を熟知していた下村 氏の言葉には説得力があった、と石井氏は語っているわけです。 しかし、その石井氏も、流言について「ウソッパチばかりだった」と歯噛みし ながらも、「いじめられた朝鮮人が引きずられて行く」のを横目に見るだけで拱 手傍観しているだけなのが、悲しく、やりきれない気持ちにさせられます。 戒厳令下、軍と警察とメディアが手を取り合い、群集心理に火を放った時には 、それが「ウソッパチ」だと見ぬく慧眼の持ち主であっても、手も足も出せない のが現実なのだと思い知らされるからです。 「民主化」のあとの反動期、巨大な震災、近づく戦争と軍国主義化、朝鮮人へ の蔑視とヘイトスピーチ…。当時と今日と、時代相がさまざまに重なり合うこと に慄然とせざるをえません。 深まりゆく秋。 この秋の国会に「特定秘密保護法」案が上程されます。 この秋の夜長に苦い史実を噛みしめて、目を覚ましてみる必要がありそうです 。 【IWJウィークリーへのご感想は下記URLをクリックして、入力フォームにお願い いたします】 https://pro.form-mailer.jp/fms/c892c0ea38240 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
by eric-blog
| 2013-10-21 14:09
| ◇ブログ&プロフィール
|
最新の記事
ERICからのお知らせ
2023年度ERIC主催研修
ESDファシリテーターズ・カレッジ 前期 テーマについて学ぶ 【ESDイシューズについて学ぼう!】 3つのイシューズから課題に気づき、問題解決に取り組む 前期 【テーマ: ESDイシューズについて学ぼう!】 3つのテーマから課題に気づき、問題解決に取り組む 環境/PLT 2023年6月24-25日 国際理解 2023年7月29-30日 人権 2023年9月23-24日 後期 【スキル: ESDコンピテンシーを育てる!】 3つのキー・コンピテンシーで問題解決の力を高める わたし 2023年10月28-29日 あなた 2023年11月25-26日 みんな 2024年 1月27-28日 各講座土日開催です。 TEST教育力向上講座は2024年3月に開催予定。 参加はオンライン受講も受け付けます。お問い合わせください。 参加申し込み: webでの申込はこちらから https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfCwrZxu0NEhmJINrbtxX7knhM_eqIX3Qahd--mdkvgyowGlw/viewform ==問い合わせ== eric(a)eric-next.org メルマガ登録はこちらから。 http://www.mag2.com/m/0000004947.html 検索
カテゴリ
●3.11地震・津波・原発 ○子ども支援・教育の課題 ◎TEST 教育力向上プロジェクト ☆よりよい質の教育へBQOE ☆アクティビティ・アイデア ☆PLTプロジェクト ◇ブログ&プロフィール・自主学習ノート □週5プロジェクト23 ■週5プロジェクト22 ■週5プロジェクト21 ■週5プロジェクト20 ■週5プロジェクト19 ■週5プロジェクト18 ■週5プロジェクト17 ■週5プロジェクト16 ■週5プロジェクト15 ■週5プロジェクト14 ■週5プロジェクト13 ■週5プロジェクト12 ■週5プロジェクト11 ■週5 プロジェクト10 ■週5プロジェクト09 ■週5プロジェクト08 ■週5プロジェクト07 ■週5プロジェクト06 ■週5プロジェクト05 ■週5プロジェクト04 ■週5プロジェクト03 △研修その他案内 □研修プログラム □レッスンバンク ▲ファシリテーターの課題 ?リンク 草の根の種々 ERICニュース 国際理解教育and You詩歌 □ 最新のコメント
フォロー中のブログ
PLT2006年版翻訳プ... ERIC用語集 PLT 幼児期からの環境体験 リスク・コミュニケーショ... アクティブな教育を実現す... プロジェクト・ラーニング... エコハウスでのエコな生活... 外部リンク
以前の記事
2024年 03月 2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 06月 2022年 05月 2022年 04月 2022年 03月 2022年 02月 2022年 01月 2021年 12月 2021年 11月 2021年 10月 2021年 09月 2021年 08月 2021年 07月 2021年 06月 2021年 05月 2021年 04月 2021年 03月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 12月 2020年 11月 2020年 10月 2020年 09月 2020年 08月 2020年 07月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 04月 2020年 03月 2020年 02月 2020年 01月 2019年 12月 2019年 11月 2019年 10月 2019年 09月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 03月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 2005年 03月 2005年 02月 2005年 01月 2004年 12月 2004年 11月 2004年 10月 2004年 09月 2004年 08月 2004年 07月 2003年 05月 最新のトラックバック
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||