歴史入門 文庫版
フェルナン・ブローデル、中公文庫、2009
La Dynamique Du Capitalism, 1976
2050冊目
資本主義の力学
なぜ、翻訳者らは、素直に題名を訳してくれないのだろうか?
タイトルにもメッセージがあるのに。残念だ。
これまで、ブローデルは二回紹介している。
http://ericweblog.exblog.jp/5789933/
http://ericweblog.exblog.jp/8274100/
中公文庫に収録されて、訳者、金塚貞文さんによる解説が付け加えられている。とても、明確。三層からなる時間と三層からなる空間。
時間
長期中期短期
地理的時間社会的時間個人的時間
長期持続複合状況出来事
空間
物質生活市場経済資本主義
資本主義は社会秩序の一定の平穏さと、国家の中立性脆弱性を必要とする。階層。資本主義が階層を利用している。97
世界=経済はつねに支配的な中心を持つ。104
中心地帯、中間地帯、周辺地帯。
周辺地帯では、「世界=経済を特徴づける労働の分割によって、利益を被るよりは、むしろ支配され従属を余儀なくされた周辺地帯が存在する。こうした周辺地帯での人間の生活は、まさに煉獄、いや生き地獄とさえ言い得るようなものだった。105
北ヨーロッパの商人たちの最初の財産はインド会社や大後悔によってもたらされたものではなく、地中海の富に殺到し、あらゆる手段を駆使して、それを奪い取っていった。112
「暴力を使ってでも過去の勝利者の地位を奪い取る」
このゲームの規則はいまも生きている。
中心が他に対して君臨する。113
1650年代のヨーロッパの世界=経済とは、上は、オランダの社会のように、すでに資本主義的であった社会から、一番下の段階には、農奴制社会までが揃った、社会の併存、共存に他ならない。
この共時性、同時性にすべての問題がかかっている。実際、資本主義は、こうした規則的な段階性を糧として成長するのであり、外側の地帯が中間地帯を、とりわけ中心地帯を養うのである。117
中心が食料の供給を周辺に依存し、周辺は、中心に支配されながら、中心の需要に依存するという相互性の光景が見える。117
ウォーラースタイン「資本主義は世界の不平等性の産物」
資本主義は発展段階ではなく、共時性によって成立している。
ヨーロッパで資本主義が成立していった時、独自の経済のまとまりを持っていた地域はあった。日本もその一つだ。それらの場所との交易は、贅沢品という「資本家層」とのつながりだけであった。ゆえに、資本主義をうるおすものであった。
資本主義こそが、物質生活や市場経済の上高く飛翔している高利潤層なのである。
物質生活を地理的時間と合わせて論じたのが「風土論」だったと言える。