ERIC NEWS 352号 ともによりよい質の教育をめざして  2013年9月15日

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ERIC NEWS 352号 ともによりよい質の教育をめざして  2013年9月15日
市民性教育 第6回 倫理・道徳と市民性教育
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(文責: かくた なおこ 角田尚子
http://ericweblog.exblog.jp/
ERICアンケートはこちらから
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twitter : kakuta09  FBも)

オリンピックの2020年東京開催が決まりましたね。

2020年の開催国を決定するIOC総会で、安倍首相は、福島第一事故の影響を
◯状況は制御下にある。
◯これまで東京にダメージはなかったし、これからも全くない。
◯汚染は完全にブロックされている。
と、断言しました。事故の収束に当たっている東京電力は、9月9日の定例記者会見で「完全に遮断できているわけではない」と、断言を否定。9月11日の会見では、「この二年半、福島第一の状況は野戦病院のよう」と、現場の混乱と対症療法的対応が継続している苦渋を廣瀬社長が表明しています。安倍首相の断言は7年後に向けての決意の表明と政治的パフォーマンスでしかなかったということになりそうです。

オリンピック招致のような「社会的な争点」のあるテーマほど、「水平関係における討議学習」にふさわしいものはありません。ぜひ、ロングホームや倫社、道徳の時間などで、とりあげていただきたいと思います。諸手をあげて歓迎ムードを煽るのも、シニカルな視点を紹介するだけというのも、教育の果たすべき役割ではありません。内省と対話、学びあいの機会、教える者と教えられる者の関係を変える試みとしての「メディア教育」の機会とできるでしょう。

いくつかの声や論点を上げておきます。

□ 原発事故が終わり、復興が終わってから、オリンピックを招致してほしかった。
□ そんなお金があるのなら、復興に回して欲しい。

□オリンピック招致のためのIOCへの出費額:日本8300万ドル、トルコ5500万ドル、スペイン3500万ドル。
東京都が2020年オリンピック招致活動にかけた都税は、37億円。加えて民間からの資金38億円、合計75億円。
http://tokyo2020.jp/jp/plan/applicant/dl/TOKYO2020_11_jp.pdf

□「東京五輪にはお金が必要。だから増税」、「東京五輪には電力が必要。だから原発再稼働」と言う流れに要注意。五輪決定により、今まで以上に全体主義・同調圧力が効きやすい訳だから。「日本人なら、五輪の為に貢献すべき」的な形で。五輪を口実にしたゴリ押し要注意。

□新潟の泉田県知事さん→ RT @IzumidaHirohiko: オリンピック誘致成功は汚染水問題をはじめとする東電原発事故対応が国際監視下に入ったと理解しています。いい加減な対応が不可能になったという点からも大変良かったと思います。

□「東京がオリンピック・パラリンピックを契機に、真の国際都市になり、バリアフリー都市になるなら、歓迎。福島原発についても、世界に約束したからには、きちんと廃炉にしてほしい。」

是々非々で議論ができる国際市民社会形成の契機としていきたいですね。異論をしっかりと言う、そして「この非国民め」のような受け止めではなく、「その問題は、・・・」と議論できる風土を、わたしたち自身がつくっていきましょう。21世紀を生きる子どもたちのためにも、国際標準の教育を目指しませんか。

メディア・リテラシーやプロパガンダについての資料が、学習を組み立てる際に役立つでしょう。

メディア教育の18の原則が『メディア・リテラシー 入門編』(鈴木みどり編、リベルタ出版、2000)に紹介されています。
・ 内省および対話のためのテーマを提供する。
・ 能動的で参加型
・ 互いに学びあう
・ 文化的再生産よりは文化的批判を重視する
・ クリティカルな思考と主体を養う
など、積極的な姿勢を育てることが重視されている。
http://ericweblog.exblog.jp/18600878/

ぜひ、メディア・リテラシー、プロパガンダ・リテラシー育成のための格好のテーマとして、取り上げていただきたいと思います。

教育が、クリティカルな主体を育てることに目標を置くべきであることは、言うまでもありませんが、国際目線からの教育ウォッチャーとしては「コンビニのポルノ雑誌撤去」より気になることは、以下のことです。

□スポーツ指導者たちによる「体罰」体質は根絶できるのか?そのためになすべきことは、何か。
□ピッチの上で、多様な選択肢を思い浮かべ、瞬時に選択して行動に移すことができる「応用力」のある指導を実現していくことができるのか?
http://www.footballchannel.jp/2013/09/03/post8505/

□その基礎となる「自分の考えを」「理由や根拠を示して説明する力」など、学力テストでも明らかになった課題に答えることができるのか?
□高等学校において、授業の75%が一方的な講義形式で行われていて、「討議形式」などの自分の考えを表明したり、議論したりする授業が行われていない。中等教育を改革することができるのか。

1970年代の環境問題、人権問題などの問題提起から50年を迎える2020年。わたしたちはどんな社会に生きていることでしょうか?

少なくとも、いまの教育が、その未来の姿への導線であることは間違いありません。


■□■市民性教育第6回■□■

8回連続の中の6回目です。これまでの回のニュース発行日も書いておきます。過去のニュースは、まぐまぐからもアクセスできますが、ERICのホームページ、「新着テキスト」でも紹介しています。

1気づきから行動へ-市民性教育とワールとスタディーズの本質 130217
2価値観とビジョン-わたしたちはどこへ行くのか?         130324
3市民としての行動力を育てる-政治的リテラシー、アドボカシーへ 130428   
44つの教育は一つ-共通する課題   130602
5社会科教育は、市民性教育か?130811
6倫理、道徳は、市民性教育か? 130915
7市民性教育と消費者教育や反貧困教育、労働者としての権利の教育-セーフティネットとしての教育
8市民性教育とESD-未来のための教育へ

□ 道徳教育の目標
生命を大切にする心や他人を思いやる心,善悪の判断などの規範意識等の道徳性を身に付けること
○改正教育基本法に,「道徳心を培う」ことが明記されました。
○道徳教育は,児童生徒が人間としての在り方を自覚し,人生をよりよく生きるために,その基盤となる道徳性を育成しようとするものです。
社会科が「知識」であるのに対して、道徳教育は「身につけること」を全面に出しています。
「心のノート」の活用が推奨されているのですが、心のノートは、「自分自身」「他者とのかかわり」「自然や崇高なものとのかかわり」「集団や社会とのかかわり」と、国際理解教育の教科書と言ってもいいような構成です。もちろん、教育基本法が改訂された時に議論になった「愛国心」がどのように指導されているのか、点検の視点をもって見る人もいるでしょうが、全体で33項目もあるメッセージの中で、「愛国心」のメッセージだけが突出するとも、それが軍国的な色彩を帯びるとも考えることは、考え過ぎでしょう。

□ 年間35時間=一週間に1時間

道徳の時間そのものは週に1時間ですが、「心のノート」は、実践化のために、多様な場面で活用できることを強調しています。例えば、日常生活の中で、自己のふりかえりのために、そして、表現活動としても、活用できると、展開例は紹介しています。しかし、これらの展開例を見ても、「グループ討議」や「話し合い」活動にどう活用するのかが、見えてこないのです。
討議を通して、定着をはかっていくことと、「日常的に参照したり、読んだり、ふりかえったり」する個別活動とでは、どのような違いがあるのでしょうか? ポイントはそこなのです。

ブログで紹介した河野貴代美さんは、「自己確立」にとってのグループワークの効用について、おもしろい図で説明してくれています。他者とのかかわりが、「わたし」を見えやすくしてくれるのです。それは「ジョハリの窓」が広がることでもあります。

http://ericweblog.exblog.jp/18522892/

価値観は、道徳的であればあるほど、「押しつけ」にならないことが大切です。それは価値観の教育であると言われるESDにおいても、市民性教育においても同じことです。

役割社会もそうですが、わたしたちは知らず知らず、「べきだ」を身につけ、「べきだ」で行動してしまっています。「われにかえる」体験を経ることなく、内化されている価値観は、人をロボット化してしまっているだけなのです。

市民性教育としての道徳教育は、「内発性」にこそ、重点をおくべきでしょう。
そして、ここでも、「水平的な関係」における「グループ討議」が、「自己確立へのプロセス」を導くものとして、重要な役割を果たすことを、指摘しておきたいと思います。
http://ericweblog.exblog.jp/18522892/

自分を見つめる、自分を表現する、他者に耳を傾けることが、葛藤のある価値観の問題について、落ち着いてできるような「話し合い」。それは誰にとっても、心穏やかに取り組めるものではありません。

だからこそ、「グループ討議」が成り立つ学級集団を整えることが、何よりも重要になってくるのです。

最後に、社会科教育における市民教育の事例として『市民教育への改革』をあげておきます。
http://ericweblog.exblog.jp/18587994/

□ ■□at ERIC主催研修 2013 ESDファシリテーターズ・カレッジ

7月27-28日の土日にテーマ「環境」の主催研修を行いました。研修記録はこちらからダウンロードできます。
http://www.eric-net.org/news/atERICPLT13kiroku.pdf

□今後の予定
3. テーマ「人権」 平成25年2013年9月28日29日
人種差別撤廃条約、子どもの権利条約など、人権についての今日的到達点とその意義、ここからどこへを、共に考えます。

さらに、後期は、スキルの習熟に焦点をあてています。

4. スキル「対立」 平成25年2013年10月26日27日
5. スキル「市民性」 平成26年2014年2月22日23日
3月にはTEST14を予定しています。

□■□ ERIC25周年に向けたご寄付のお願い

1989年誕生の参加型学習老舗のERIC国際理解教育センター。なんと2014年には25周年を迎えます。

これまで続けて来られたのも、企画委員、運営委員、理事、テキスト購入者、ファシリテーター育成事業参加者など、みなさまのおかげです。感謝です。
これからもよりよい「指導者育成のための実践」推進のための情報提供、研修プログラムの提供などに努力していきたいと思います。

日常活動に加えて、25周年に向けて、事務所のリニューアル、フューチャーサーチ走向未来ワークショップの開催など、企画しています。

特別活動支援のために、テキスト活用、研修参加などのご支援に加えて、ぜひ、ご寄付をお寄せください。よろしくお願いいたします。

ご寄付先 金融機関

ゆうちょ銀行口座: 10020-3288381 名義:トクヒ国際理解教育センター(ゆうちょ銀行同士)
◯◯八(ゼロゼロハチ)店008-0328838 名義:トクヒ国際理解教育センター(他の金融機関から)

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  (特定非営利活動法人)国際理解教育センター
ERIC:International Education Resource & Innovation Center

〒 114-0023 東京都北区滝野川1-93-5 コスモ西巣鴨105
  tel: 03-5907-6054(研修系) 03-5907-6064(PLT・テキスト系)
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  ホームページ http://www.eric-net.org/
  Eメール   eric@eric-net.org
  blog 「 ESD ファシリテーター学び舎ニュース http://ericweblog.exblog.jp/
  blog  「PLT 幼児期からの環境体験」
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  blog 「リスク・コミュニケーションを対話と共考の場づくりに活かす」
http://focusrisk.exblog.jp/


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by eric-blog | 2013-09-13 13:33 | ERICニュース | Comments(0)
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