参議院選挙2013 Issues 天皇制
果たして、わたしたちは天皇制を語れるのか? 語ろうとするとき、タブーはないのか。攻撃されるのではないかという恐怖心を持たないだろうか。 中学校のときの教員たちは、「天ちゃん」と呼び、天皇制を相対化していた。 いま、学校の空気は変わってしまっているのではないか。もしも、天皇が学校を訪れたら、直立不動の姿勢が、求められるのではないか。そこにはフランクさのかけらもないだろう。それが日本の文化だから? 自分の時代感覚を確認するのに適切な本があるかどうかはわからないが、1975年のこの本は、その頃、日本社会で共有されていた空気のいくぶんかでも、伝えてくれるかもしれない。 **************** 君は天皇を見たか 「テンノウヘイカバンザイ」の現場検証 児玉隆也、講談社文庫、1985、単行本は1975年 2011冊目 一銭五厘たちの横丁 桑原甲子雄[写真]、岩波現代文庫、2000、単行本は1975年 第二次世界大戦を経験した人々が、どのような感情を抱くかを、94名の方たちにインタビュー、聞き取りした第一章、戦争の現場をルポした第二章、ヨーロツパ、特にオランダでの対応を描いた第三章、じっくりと三人の無名の人の聞き取りを書き起こした第四章、そして天皇について著者自身が考えた第五章。 畏れ多いという人、戦争責任をなじる人、関わりたくないという人、親近感を覚えるという人。さまざまな人の語る「天皇」を読んでいて、驚いたことは、「天皇」と彼らが直結しているということだった。駐在さんが言ったからとか、村のえらいさんから聞いたからとか、郵便配達のダレベエが持ってきた赤紙が、とかのニュアンスがまったくない。近隣も近親も、コミュニティのかけらも、「天皇とわたし」の間に見え隠れすることがないのだ。なるほど、近代という装置は、「個」を前提とする。誰が考えたか知らないが、「天皇の赤子」というのは、一人ひとりを村落共同体から切り離し、近代社会構造に組み込む働きをしていたのだ。 一人ひとりがへびににらまれたかえる状態に、個別に支配される。 なんと、これは一神教のメカニズムと同じではないか。一神教の場合、その教えは聖典などに書かれている。価値観の共有がある。 天皇制においては、教育勅語や戦陣訓など、「勅」。天皇からの命令である。 近代国家としての日本は、沖縄県や北海道もその範囲に含めた。含めつつ、同じ「天皇」という一神教を強要していく。 沖縄には尚氏という王権があり、北海道にはアイヌという彼らの独自の神と祭祀を持っている。 わたしの両親の出身は徳島だが、海洋の民として、和歌山、千葉などにもつながりを感じることが多い。実家は仁徳天皇陵の近くだが、あのヤマトの地から始まった豪族の一つが、わたしたちの係累の元にあるはずがない。 「天皇の赤子」というフィクションを使ったのは、近代国家としての強力な「日本人」というアイデンティティを確立したかった「明治の元勲」たちであろう。 ごく当たり前に、天皇制というフィクションを、今後、民主主義国家としてどうつきあうかを語り合おう。 ○一つの家系が、1000年を超えて、続いてきたということは、世界的にも珍しいだろうから、寿ぐのはどうぞ。それにあやかりたい人がいるのも、そうだろう。遺伝子的に証明はされていないけれど。 ○「象徴」として、そのおめでたい家系の方がいることが、合意されているのであるのならば、日の丸が日本の国旗であると決めたのと同じく、決めごととして尊重しよう。 ○しかし、多くの人命が「天皇」の名の下に失われ、そのことに「天皇の戦争責任」を問いたいという人が存在することを圧殺すべきではないと、思う。 ○国旗も同様。「日の丸」の元に、侵略された人たちが異議申し立てをすることも、民主主義国家における「平等」の実現として、その声を圧殺することには反対である。 従って、参議院選挙の行方が、憲法を変えることにつながるのであれば、天皇制についての議論も、できるようにしていかなければならない。 何よりも、安倍政権の歴史認識、選挙活動などに対する弾圧、街頭演説のときに、プラカードを没収するなどの姿勢をみていると、憲法についての民主的な議論を調整する姿勢が、できているとは思えない。明治の元勲と同じく「強権的に近代化をすすめよう」としているだけである。近代化は完了し、「近代の人間化」が課題である、いま、というときに? である。 浜矩子さんは言う。日本はもう成熟しているのだと。成長戦略ではなく、成熟のための追加的経済政策が必要なときなのだと。成熟のための追加的措置として「富の再配分機能」の強化策であると、彼女は指摘します。 教育は、社会の富の再配分機能のひとつである。世襲議員が自分の再選にしがみつき、「通るんです。通るまで制度改革でもなんでもやるから通るんです」状態の選挙制度がまかりとおり、世襲制の芸能がもてはやされ、格差が拡大するいま、しっかりと再配分機能を果たすことができる教育であることに、誇りを持って取り組みたい。 わたしたちが誇りを持つべきなのは、平和主義の憲法を持った民主主義社会であり、法治国家であるということである。 天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず。 人間天皇であることに、過剰な粉飾をほどこすことは、「権力」のためにしかならない。
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| 2013-07-12 08:25
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