東日本大震災からの復興、そして福島の復興も、参議院選挙の論点の一つだ。忘れたい人もいるかもしれないが、いまも、福島第一からは膨大なトリチウムが漏れだし、たぶん、海洋汚染も続いている。メルトダウンの様相すら確認できていない中、いつ止まるのか、見通しもない。
環境中に、1960年代の核実験から放出された放射能の影響の方が、いまだに高いと言われるが、放射線健康影響についての議論は何か問題だったのか。以下の著書を参考に考えてみよう。 ******************* つくられた放射線「安全」論 科学が道をふみはずすとき 島薗進、河出書房新社、2013.2.18 2010冊目 社会科学系の研究者が、膨大な原子力および放射線医学関連の論文にあたり、彼らがICRPの基準を緩和し、「しきい値無し直線仮説(Linear Non-Threshold : LNT仮説)」を覆し、100mSv以下では健康影響はないという議論を展開してきたかを明らかにしたもの。 彼らのやり方は、原爆投下された広島で戦後ABCCによって行われたのと同じだ。情報は悉皆的に収集するが、出さない。 決定は秘密主義、あるいは権力主義的に行われる。ボトムアップで行われることはない。 その同じ構造を、日本人が日本人に対して行っている。「不安を取り除くことが一番大事だ」という偏ったパターナリズム、保護者面によってである。それはパターナリズムという名の権力構造でしかない。 「100mSv以下の放射線は無害である」という結論ありきなのではないかとしか思えない研究が並ぶ。 構造は同じだ。 捕鯨論争も、慰安婦問題も、放射線閾値あり論争も。 国内の研究者や論者を固め、国際社会に対して一丸となって議論をふっかける。そのため、日本国内で異論を唱える人々は異端となり、議論の場所だけでなく、居場所すら封じられていく。それに対して、国論の側は、そこに連なるだけで、生き延びることが容易になる。 同じチームが、常に世論も固めていく。結果、国際的な孤立は高まる。議論不可能性に行き着いてしまう。 原子力の問題に発言している島薗さん自身だって、3.11以前は、原子力産業と原子力関連研究者、そして放射線医学研究者らが何をしていたか、何を主張してきたかをチェックしていなかった。 3.11が開いた扉を、わたしたちがくぐって、前に進むことができるのか、それとも、みすみすその扉が目の前で閉じられていくことを座して見過ごすのか。科学者の姿勢、市民社会の姿勢が問われている。 ○日本学術会議は会長談話(2011.6.17)によって20mSvを容認。二日後に定年で会長退任。 ○山下俊一氏の名前は、何回でてくることか。 ○菅原努『「安全」のためのリスク学入門』2005 ○特定非営利活動法人「安全安心科学アカデミー」(2001年創設) ○核融合科学研究会、委託研究報告書「低線量放射線の健康影響に関する調査」(2003)、近藤宗平、その他 日本人はリスクコミュニケーションができない。だから「不安をなくす」ことをコミュニケーションにおける一番の目標にすべきだ。 それが彼らが言っていることである。196 どちらがたまこが鶏かである議論でしかない。 渦中の山下俊一氏は、日隈一雄弁護士の公開質問状に対して、過度の安全論の非を認め、謝罪している。(2012年5月、日隈氏のブログyamebun.weblogs.jp/my-blog/) 山下氏の前任でもある長瀧重信氏は、1990年ごろから、チェルノブイリにおける支援活動の経験などを通して、不安をなくすことを強調していった人物だ。 それは「不安をなくす」ために調べない知らせないというところまでいく。 「科学的に認められていない」という言論を繰り返すことによって、原子力発電所の事故による影響は何なのかを追求することや予防原則を導入することを妨げる。「社会を混乱させ胃」という倫理は、現状の追認にしかつながらない。結果、彼らは「加害者」の側にたつことになってしまうのだ。 市民を信頼できていないのは、科学者の側である。不信に対して不信が返ってきているいま、どうほぐすのか。既得権、すなわち現状維持圧力にがんじがらめになっている彼らを、信じることなど、できるはずもない。さて、どうする?
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| 2013-07-09 10:19
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