ERIC NEWS 335号 ともによりよい質の教育をめざして  2013年5月12日

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ERIC NEWS 335号 ともによりよい質の教育をめざして  2013年5月12日
at ERIC/from ERIC 主催研修/受託研修  
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(文責: かくた なおこ 角田尚子
http://ericweblog.exblog.jp/
twitter : kakuta09  FBも)

人型切り株発見!

(このニュースのレイアウト版はERICホームページhttp://eric-net.org/からダウンロードできます。)

5月1日2日に開催された「PLT木と学ぼう」ファシリテーター養成講座での一幕のこと。

会場である大阪府環境プラザは、森ノ宮駅から歩いて2-3分。ちょうど駅の反対側が大阪城公園で、春香る気候の中、絶好の野外活動日和に恵まれました。

一日目の「Spy!」のお題は、三つ。「つながり」「おもしろい形」「課題カード」

二日目の「Spy!」のお題も、三つ。ミステリーBoxの中身調達。測る。困っている木を探す。

http://ericweblog.exblog.jp/17719637/
http://ericweblog.exblog.jp/17722106/
http://pegasus.blogzine.jp/snapshot/cat2175903/

「人型」を見つけたという報告があり、みんなで見に行くことにしました。確かに、人型です。こんな複雑な形、いったいどの木? とまわりを見回したら、この木でした。ゴッホの絵でも有名なイトスギ。

じゃあ、この木の切り株を描いてみよう! みなさんも、おもしろい木があったら、その木の切り株を、予想してみてくださいね! イトスギに勝てるような木、あるのかなあ。

<<<<<>>>>>>ERIC主催・ESDファシリテーター養成講座<<<<<>>>>>>

今年も6本の主催研修を行います。前期の三本は、テーマから迫ります。そして、後期はスキル育てです。2013年度の統一テーマは「熟議力」。熟考する力+討議する力=熟議の力です。
http://ericweblog.exblog.jp/17718986/
「「熟議」とは社会的な学びの質のことである。熟議型民主主義とは学び続ける社会のための方法論である。」

1. テーマ「国際理解」 平成25年2013年6月29日30日
ヘイトクライム、ヘイトスピーチ、問題の背景は何? わたしたちにできることは? 共に生きるための知恵を探ります。

2. テーマ「環境」 平成25年2013年7月27日28日
PLT環境体験のアクティビティは「三点スクランブル」で指導力アップ。「体験」「概念」「思考」の三点交差に迫ります。
3. テーマ「人権」 平成25年2013年9月28日29日
人種差別撤廃条約、子どもの権利条約など、人権についての今日的到達点とその意義、ここからどこへを、共に考えます。

<<<>>>いつでもESD<<<>>>
すべての人々に
あらゆる場で、あらゆる機会に
だから、いつでもESD。

経験学習的アプローチで
わたしたちは、環境との交互作用で生きています。暑ければ服を脱ぎ、寒ければ窓を閉め、からだを動かし、環境に働きかけ、修整しつつ、生きています。なぜ、そうするのか? なぜそうするのか? これまでの経験からです。わたしたちが知らず知らずに行なっている学び方を、理論的に整理し、応用できるようにしたのが、教え方・学び方の「経験学習的アプローチ」です。

効果的なハンズオン
では、何がわたしたちの経験であるのか。なるべくたくさんの感覚、記憶に「全体言語」的に働きかけてくるものの方が、よいかもしれません。しかし、一方で、「ラジオは、テレビよりもホットなメディアである」ということも、覚えておきましょう。ほら、「手ざわりの秘密の箱」は、とてもわくわくするでしょう? ヴァーチャルなものと、リアルなもの。何をツールに使うとしても、大切なことは、学習者の中に引き起こされているものであるのです。
1. 実物 2. 実体験 3. 実話 4. 実感 5. 実態 6. 実存

概念・理念を教育的ツールに
熟議する、「わたしが熟考し」「あなたと討議し」熟議する。熟考するときに、助けとなるのが、先行知見です。覚えるための知識ではなく、自分の考えを整理したり、伸ばしたり、方向づけたりするための「点検の視点」が、概念や理念です。

ものの見方・考え方
人間が、いまのように考えるようになったのは、とても新しいことのようです。ジャレド・ダイアモンドによると、その爆発的な変化は1万3000年ほどの間に起こったと。栽培植物と家畜のおかげで生産力が高まり、東西に長い大陸環境での互いの経験交流が盛んであった場所に起こった「科学」という変化。こう考えなければ、ではなく、あくまでも「思考の補助線」として、分析の枠組みを活用しませんか。

Howを示す
ものごとを考える時に、「どのように考えるか」のHowを、絞って提示すると、思考力が刺激されます。例えば、「一つのボールを全員の手が必ず一度は触れて移動させる」という課題をもらった時、「使えるのは左手だけ」というような縛りがある方が、考えやすいのです。ですから、思考の枠組みを与えること、すなわちHowを示すことが、思考を活性化させるのです。

三点交差点=経験学習のスクランブル

体験の素、素材と、それをどのように「考える」か、思考の枠組みと、そして自分の具体的な体験を抽象的な概念に照らしてみる「W型」検証、その三点を定めることで、アクティビティのデザインが完成します。どのような体験を、どのように加工して、何を発見するかの道筋ができるのです。
道筋ができたおかげで、学習者一人ひとりの個性と多様性が、生きるアクティビティが展開できます。道筋のないところで、ねらい通りの学習を展開しようとすれば、「学習者の発言」に頼って、道筋をつけなければならなくなるからです。

例えば「まわりの音」のアクティビティは、「多様性」という概念のセクションに、PLTでは入れられています。指導者のための「背景」には、聴覚の仕組みの解説に加えて、「聴覚は情報をえる重要な感覚である」こと、「音の役割はさまざまであること」が書かれています。また、「騒音」についても考えるような「応用・発展」も示されています。PartAからPartDまで、主に4つの活動が紹介されていますが、さきほどの「三点交差点」で考えてみると、次のような発展も考えられるのではないでしょうか。

音を分類する「固体・液体・気体」「生き物のからだからの音と、生き物が動いてたてる音」
音を同定する「飛行機の音は、金属製のものが、気体とまさつを起こしている音と空気の流れの音」
比較する「より大きな音・より柔らかい音」「黄色い声はどっち?」

思考スキル
PLTガイドのIndex6に「思考スキル」が紹介されています。
それぞれのアクティビティのサイドバーに、どの思考スキルに焦点をあてたらよいかが書かれています。どの思考スキルがよく使われているかをカウントしたのが左の表のトップ11です。
どのように考えるかを示してアクティビティを行なうことで、思考スキルの重要なものを、身につけることにもつながります。


分析する38
観察する37
比較する、対比させる28
属性や構成するものを同定する25
問題解決する21
調べる21
情報を整理する20
議論する19
分類する、カテゴリーに分ける15
評価する15
関係やパターンを同定する15

<<<>>>スキル研修の三本の柱<<<>>>

後期は、スキルの習熟に焦点をあてています。

4. スキル「対立」 平成25年2013年10月26日27日
5. スキル「市民性」 平成26年2014年2月22日23日

ERICが参加型学習で取り入れているスキルの柱は三本です。「わたし」「あなた」「みんな」です。

>>>「わたし」を大切にする
「わたし」というのは、自尊感情・自己理解など、参加型学習を成立させる上で、不可欠なものです。今年度の研修でも、いずれの研修でもこれを基本において、参加者自身の「自尊感情」や「自己理解」がどのようにすすんだかを、点検する視点として活用していきます。学びというのは、一人ひとりの学習者の中にこそ、起こっていることなのです。
参加型学習のHowの中には、「わたし」を育てるアイデアが詰まっているのです。

>>>「あなた」とのコミュニケーション
わたしたちは、さまざまな関係性の中に生きています。しかも、7割は非言語的に伝わると言われています。知らず知らずに身につけてしまっている立ち居振る舞い、態度姿勢行動が、わたしたちの日常を形作っています。コミュニケーションの力を伸ばすということは、単に一つや二つのスキルを身につけることではなく、自分自身や関係性に深く気づく、熟考するということなのです。
その上で、「自分らしい」と思えるパターンを身につけ、育てていくこと。それがコミュニケーションの力です。

>>>「みんな」の力で育てる
わたしたちは、社会的な生き物です。一人ひとりが環境に働きかけることができる存在ですが、同時に、場の力、関係性の力が、一人ひとりを伸ばしてくれます。「話し合いの心がけ」づくりや協同学習などのグループ作業、参加型学習の方法論そのものが育てる場の力も、わたしたち一人ひとりのコミュニケーション力や社会性を伸ばすために、重要な要素なのです。

<<<>>>概念・理念・ガイドラインを指導者育成に活かす<<<>>>
<<<>>熟議の力=熟考する力+話し合い・学びあう力<<<>>>

「我々が思い描くのは、持続可能な開発について学ぶための多くの機会がある世界である。そして、技能を持った住民が、家庭、地域社会、仕事場、余暇活動の中で情報に基づいていし決定をおこなうという世界であり、人々が自分が他者の生活の質に及ぼす影響に対して、地域や地球レベルで、理解し、責任を持つ、という世界である。」
( O'Riordan教授、「持続可能な開発のための教育」国際シンポジウム2003年10月27日記録より)
概念を「発見する」

 経験学習のアプローチをとる参加型学習では、概念は覚えるものとして提示されるのではなく、自分自身の体験から演繹された発見と擦り合わせ、気づいたこと・感じたこと・学んだことに「言葉」を与えるものとして、納得できるのであれば、「採用する」あるいは「修整して採用する」あるいは「保留しておく」ものなのです。
 応用できるものであれば、それは有用な概念として定着していくでしょうし、保留していたものが別の体験や機会に思い出したりすれば、検討する価値のあるものとして再浮上するかもしれません。思い出しもしない、行動に影響しないものであれば、それは、定着しないでしょう。
コミュニティ意識=交互作用と共振関係=に目標を加える

 参加型学習で起こる学びの重要なメカニズムは、グループ討議にあります。熟議のプロセスが明らかにしたことは、「小グループでの議論」が意見変容に働いているということでした。専門家たらの講義でも、専門家との対話でもない、自分たち自身による小グループ討議が鍵なのです。
 参加型学習に「概念・理念・ガイドライン」を活用するということは、この交互作用に先人の知恵、知見、専門家による研究の成果、諸科学のものの見方・考え方、研究の方法などの視点を取り入れる、成長のよすがにするということです。その際に、グループは対等である方が望ましく、また、効果的です。
 それは、対等な関係で情報を共有することで、「圧力・抑圧」なしで、自由に検討できる、共通の目標として採用するかどうかを検討できるからです。あなたが考えることを誰も代理することできません。
 共通の目標を持つことで、コミュニティ意識やコミュニティへの所属、オーナーシップが育ちます。わたしたちは、群れの生き物なのです。徹頭徹尾、社会脳としてできているわたしはたちの脳、その脳に働きかけるのは、「声」であり、「社会関係」なのです。
 参加型学習は、顔と顔を会わせる関係の中で、共通の課題について共に考え、共通の方向を共有する、まさしく、コミュニティ=com共に、unit一つのものを、持つ関係を作り出しているのです。これは、他のどのような学びも、代替することのできないものなのです。

ガイドラインについて
 個人が、あるいは集団が、守っている行動規範、準拠枠、あるいは方針などを総称して、「ガイドライン」と呼んでいます。例えば、TEST13教育力向上講座 で「ガイドライン」とは何かをブレーンストームし、書き出したものは、以下のような項目を含んでいました。
 わたしたちの行動は、何らかの判断基準に従って選択されており、行動変容するということは、その選択の準拠枠を変えるということなのです。

 気づきから行動へ、1970年代から言われ続けてきたこの教育課題に、どう取り組めばよいか、ガイドラインはその一つの試みなのです。

 「個人的なものから、組織的なものまで」とさきほど言いましたが、ガイドラインというのは、基本的に集合的に作られ、集団的に共有されているものです。「個人的」という表現は、例えば、「わたしは菜食主義者だから、赤肉は食べないわ」というように、その場のその集団の「当たり前」や規範とは異なる基準を選択して行動する場合を想定してのことです。つまり、「ガイドラインとは何か」をブレーンストームする時、ファシリテーターが「個人的なものでも良いですよ」と指示しなければ、その場の集団が共有している「ガイドライン」だけを考えてしまうかもしれないということを避けるための配慮です。
 集団的に合意されたものを個人の行動規範として「内化」すること。それがガイドラインを遵守して生きるということです。ESDは価値観の教育であるという時、ESD的なガイドラインに従って、行動が整えられる、その方向へ変容するということです。ESDの価値観、あるいはその他の価値観Valuesと呼ばれるものも、文化的、あるいは準拠集団的、家族的な集合的に共有されているものです。それらの価値観を「内化」したものを、わたしたちは「わたしの価値観」と呼ぶのですが、誰とも共有していない価値観は存在しません。
 個人の徳とされているのは、個人的な行動規範として考えられるものではありますが、それが「徳目」として成立するのは、社会的に認められているからこそです。

<<<>>>TEST 教育力向上講座 2014<<<>>>
やっていることを知っていることに
知っていることをわかっていることに
わかっていることをできることに
できることをよりよいものに

井上ひさしさんの「むずかしいことを」をもじってみました。誰もが教育評論家になれる、と言われます。それは、誰しもが体験してきたことであり、多かれ少なかれ、先輩として、親として、「人を育てる」という事に直面してもいるからでしょう。あたかも、教育という人間が行なうことに、「難しい」ことはないかのようです。だからこそ、教育について話し合うのが難しいのではないかと感じています。
TEST教育力向上講座は、「教育について語り合う」場として2000年度3月、2001年3月から始めました。教育について課題だと思っていることを、自分たちで出し合い、課題解決、あるいはどのように話し合うかもその場で決める、修整する場です。
 価値観の教育とは、まず自分たちがやっていることを意識すること。それを「いいパターン」の習熟という「わかっていること」に置き換えていくこと。それが頭で分かっているだけでなく、からだで「できるようになること」のくり返しなのです。

>>>>>>> ERIC25周年に向けたご寄付のお願い <<<<<<<<

1989年誕生の参加型学習老舗のERIC国際理解教育センター。なんと2014年には25周年を迎えます。
これまで続けて来られたのも、企画委員、運営委員、理事、テキスト購入者、ファシリテーター育成事業参加者など、みなさまのおかげです。感謝です。
これからもよりよい「指導者育成のための実践」推進のための情報提供、研修プログラムの提供などに努力していきたいと思います。

日常活動に加えて、25周年に向けて、事務所のリニューアル、フューチャーサーチ走向未来ワークショップの開催など、企画しています。

特別活動支援のために、テキスト活用、研修参加などのご支援に加えて、ぜひ、ご寄付をお寄せください。よろしくお願いいたします。

ご寄付先 金融機関

ゆうちょ銀行口座: 10020-3288381 名義:トクヒ国際理解教育センター(ゆうちょ銀行同士)
◯◯八(ゼロゼロハチ)店008-0328838 名義:トクヒ国際理解教育センター(他の金融機関から)

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  (特定非営利活動法人)国際理解教育センター
ERIC:International Education Resource & Innovation Center

〒 114-0023 東京都北区滝野川1-93-5 コスモ西巣鴨105
  tel: 03-5907-6054(研修系) 03-5907-6064(PLT・テキスト系)
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  ホームページ http://www.eric-net.org/
  Eメール   eric@eric-net.org
  blog 「 ESD ファシリテーター学び舎ニュース http://ericweblog.exblog.jp/
  blog  「PLT 幼児期からの環境体験」
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  blog 「リスク・コミュニケーションを対話と共考の場づくりに活かす」
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by eric-blog | 2013-05-12 09:47 | ERICニュース | Comments(0)
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