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ムシの考古学

ムシの考古学
森勇一、雄山閣、2012
1917冊目

高校の先生を続けながら、全国の遺跡発掘調査現場に出向き、難度の高い抽出作業(ほとんどのムシはパラパラの状態)と同定作業を積み上げてきた環境考古学の先駆者。『環境考古学ハンドブック』などの著書多数。

ムシは、都市環境に生きるわたしたちの身の回りにすらいる。自然環境と不可分の生活をしていた縄文や弥生時代は、昆虫の姿からわかることがたくさんある。

人が集住するようになるということは、汚物も集中することになる。縄文時代を著者は、「躍動する縄文人」と見出しをつけている。確かに糞は集積していたが、それを食べるムシ、そしてそのまたムシを食べるムシがいたために、汚物問題はなかったようだと。また、集落の回りの栗林や、醸造の形跡から、彼らの豊かな生活が描き出される。

それに対して、弥生には厳しい。「悪臭漂う弥生ムラ」である。加えて、稲作の始まりとともに、稲を食害するムシが、米と言わず葉と言わず、茎と言わず根と言わず、各所に出現する。

現生の昆虫の姿から、その時代の動きを推定し、その環境を描き出す。

後書きに著者が嘆く「昆虫少年はどこ?」というのも、よくわかる。いまの昆虫好きがなければ、とうていできる研究ではないのである。

全編、おもしろい! ディーテールを覚えるのが苦手なわたしは、これ以上のレポートができないのですが、その他の本もぜひ読んでみたいと思いました。
by eric-blog | 2013-02-12 07:31 | ■週5プロジェクト12
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