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慰安婦問題をどう教えるか

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慰安婦問題をどう教えるか

『もう一つのレイテ戦 日本軍に捕らえられた少女の絵日記』

レメディアス・フェリアスさんのスケッチを使って、慰安婦問題について教える教材キット。貸し出しは3000円プラス送料。

ロラネットで検索すると、展示会や講演会に対して、妨害の嵐であることがわかります。なぜ、被害を名乗り出た方がいるのに、また、司法でも事実認定されているのに、「日本人を辱める」行為と、弾劾するのか、理解に苦しむ。日本人が辱められているのは、その事実を認めようとしない行為そのものであるのに。

このような攻撃が存在することを学ばずに、何を学ぶのか? そんな疑問が、改めて、湧きました。ただ、このような暴力に身を曝しながらも、ロラネットの活動を続けておられることに、敬意を表します。その「恐さ」そのものがteaching momentだと思いますが。

【ワークショップの流れ】

さて、ワークショップの流れも紹介しておきます。

1.14歳のときを思い出す。グループに分かれて自己紹介。
2.11枚のパウチされたレメディアスさんのスケッチから、一枚ずつグループに配る。グループでそのスケッチから気づいたこと、感じたこと、学んだことを話し合う。キャプションをつけてみる。
3.レメディアスさんの体験をミニレクチャーで伝える。
4.感情シートを使って、いまの気持ちをふりかえる。個人作業
5.レメディアスさんのメッセージをビデオで観る。8分ほどに編集されている。
6.感情シートに再び記入する。変化を記録する。
7.グループで話し合う。話し合いのテーマは「もし、レメディアスさんが自分の母親だったら」あるいは「もし、あなたが日本兵だったら」から選択。
8.ふりかえり

この会合は、教材検討会であったので、最後のふりかえりは「使ってみての体験」「この教材をどう使うか」「どう広げるか」に焦点をあてました。これまでの「参加者の感想や反応」も共有されました。しかし、このような検討の時に、「教材ガイドライン」の視点を共有し、点検するということがあってもいいのではないかと、思いました。

グループ討議の時の「問い」のバリエーションも紹介されたので、まとめておきます。

・なぜ、被害者は50年間も沈黙していたのか。
・レメディアスさんにとって、「平和」とは何だと思いますか。
・日本兵たちは、どのような戦後を送ったと思いますか。
・戦争にはなぜ性暴力がつきものなのだと思いますか。
・性暴力の被害にあうことは、なぜ恥ずかしいことだと考えられているのか。


【教材の改善を考える】
教材の優秀性をチェックする視点として、NAAEEが出しているガイドラインは次の6つである。この視点に即して、教材を点検すれば、改善点はおのずと見えてくるだろう。
http://ericweblog.exblog.jp/3683793/

1. 公正さと正確さ
2. 深み
3. スキルの向上
4. 行動化
5. 教授法の確実性
6. 使いやすさ

1と6は、繰り返し、言及されていた。5も、グループ討議、個人でのふりかえり、全体共有、絵やビデオなどの視聴覚教材などが採用されており、すばらしい。3も、「討議する」「振り替える」「発表する」など、参加型であれば当然伸ばすことができるものはカバーされている。しかし、「優先順位をつける」「比較する」「分類する」などの高次の思考スキルをもう少し取り入れることは可能だろう。

改善するとすれば、2,4であろう。この改善は「批判的省察」すなわち、そもそも「なぜ慰安婦問題を教えるのか」という視点なしでは考えることができない問題だ。

深みをどこに求めるか。このプログラムの流れであれば、「レメディアスさんに対する共感的理解」は深まる。そして、そこから敷衍すれば、他の被害者に対する共感につなげることは可能であろう。しかし、達成されているのはそれだけなのではないか。

被害加害のある問題について、被害者に対する「共感的理解を育てる」。それが目標なのであれば、この流れはとても適切だ。しかし、「被害者支援への行動化」につながるだろうか。あるいは「被害者に対する攻撃」の問題についてはどうだろうか。「慰安婦についての記述を教科書から削除」させた勢力に対してはどうなのか。そのような強い思い、願いは、この教材からは伝わってこない。

「なぜ、慰安婦問題を教えるのか」

「人権」を教えるという文脈で考えているというのが、教材提示者からの答えであった。この教材で育てたい「人権意識」は、何かも検討が必要だろう。

公立の学校で実践してくれる先生は存在する。しかし、そのことを公表できないというような状況に、いま、わたしたちは生きている。そのことこそが、課題であり、teachable momentなのであることは、決して忘れてはならないはずだ。

参加者の反応として共有されたものの一つに、「自分自身も加害者扱いされている気がする」と拒否反応を示す、30代男性の例があった。

日本社会自体の「慰安婦問題」に対する拒否反応そのものに焦点をあてて、深めることがやりたかったなあ。

すさまじい攻撃にさらされている運動。ま、戦わなくてもいいけど、筋は通して欲しいなあ。

少なくとも、教材を提供している組織や指導者が「よりよい質の教材」の点検の視点をもっていて欲しい。
NAAEEは環境教育についてだが、人権教育でも参考になると思うのだが。
by eric-blog | 2013-01-19 08:56 | ☆アクティビティ・アイデア
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