ERIC NEWS 308号 202020第8号 2012年11月4日

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ERIC NEWS 308号 ともによりよい質の教育をめざして  
202020 第8号 学習性無力感からポジティブシンキングへ?
これからの未来へ  もうちょっと考える
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(文責: かくた なおこ 角田尚子
http://ericweblog.exblog.jp/
twitter : kakuta09  FBも)

 202020とは? 学級人数を、参加型学習がやりやすくなる適正人数に。特に中等教育で、早く少なくしてください! 2020年までに20人学級の実現を!

>>>>>>>>202020 これまでの号と発行日 <<<<<<<<<<<

1.世界に誇れる「子どもは宝物」だと示せる指標はどこにある? 2012年1月30日
2.参加型学習を継続的に、かつ日常的に行なうのに適切な規模は何人? 2012年3月11日
3.「学習からの逃避」と高等教育修了率の低さ 2012年5月6日
4.子どもを自然の中に連れ出す、地域との連携を深める。必要な指導者数は? 2012年6月17日
5.民主主義と教育。明治時代に始まった「兵舎型」校舎の「集団の規律」中心形式の限界 2012年7月22日
6.近代のパラダイムを超える「教育の人間化」が近代の人間化につながる。2012年8月19日
7.超えていくために教える
2012年10月1日
8.学習性無力感とポジティブ・シンキング
9.何を考えるかの「暗記型」教育から、どのように考えるかの「スキル習熟型」教育へ
10.個別化教授法の工夫いろいろと、学級マネジメント
<><><><><<<学習性無力感とポジティブ・シンキング>>><><><><>

1.価値観の教育とは超形成的transformativeである

今年度の研修は「価値観の形成」について考えるというのを主題の一つとして実施しています。国際理解、環境、人権とテーマ型研修三本に続いて、スキル系「対立」を終えました。この後、「社会性・市民性教育」を2月に行い、3月にはTEST Teacher’s Effective Skills and Training教育力向上講座です。今年度は、「価値観の教育」について、かなりおもしろいまとめができそうです。

今回の主催研修スキル系「対立は悪くない」は、まさしく「超形成transform」とは何かについて、考えた研修となりました。スキルというHowの背景には、「なぜそのスキルを身につけるのか」の価値観があります。「越えて行く」という超形成的なあり方を、前回の「202020第7号」では、十分お伝えできなかった感があるので、報告をかねて、まとめておきます。
参加型学習というHowの背景には、「参加が大事」「参加こそが民主的なスキル」「参加の文化が参加の力を育てる」などの理屈や理念、価値観があるように、スキル・トレーニングには、そのスキルが実現したい社会の形があるのであり、それは価値観に他ならないのです。

今回の研修では『対立から学ぼう』のカリキュラムの背景にある価値観を共有できたことがとても良かったです。

2.  対立から学ぼうのカリキュラム、三点確認法

まず、基本テキスト『対立から学ぼう』に加えて、『ワールドスタディーズ』の第5章から「対立の本質を考える」と『平和教育: 平和の文化への道』の第9章「対立を超形成する」を参照しました。

セッション3 ふりかえりとまとめ で行った「本トのインタビュー」で、分担読み&ショートレポートを共有しました。以下、貼付けます。


共有できたことは、対立の解決Conflict Resolutionという考え方は、米国では、実は「紛争解決」という軍事的な衝突をいかに平和的に解決するかという研究から始まっているということ、そのために、平和教育の流れとは切っても切れない関係にあるということです。

対立の解決の望ましい基準が『対立から学ぼう』に示されていることも、確認されました。「非暴力である・当事者の要求を充たす・当事者の関係をよりよくする」。このような基準を共有していることの方が、対立の解決のためのスキルを身につけるよりも、重要だと思いました。

とはいえ、このような抽象的な概念が「身に入る」のは、具体的なアクティビティをセッション2で体験した後であるからで、超形成的アプローチというのは、具体と抽象の往復運動として、わたしたちの具体的行動と価値観が変容していくプロセスのことだと言えます。

また、その短いながらも日常から世界平和までをカバーした「対立の本質を考える」という視点をだしているワールドスタディーズを参照したことも、『対立から学ぼう』というカリキュラムには、「争いごとを、暴力をつかわずに平和的に解決する」という目標があり、その価値観は、国際関係を見るときにも共通しているということを再確認につながりました。

わかっているつもりでも、「対立は悪くない」という文化に住んでいるのではないわたしたちは、折りに触れ、ときどきに、確認することが、スキルを身につけ、それを発揮する力を保つためには、大切なことだということも、確認できました。

3.対立は悪くない、対立の扱い方を知らないことが危険なのである。

対立を平和的に解決しようとする姿勢を育てることは、そのような価値観を育てることに他なりません。わたしたち一人ひとりの価値観や考え方が違う以上、対立は必ず起こります。対立をないもののように考えたり、ことさらに無視したり、抑圧したりすることは解決にはつながりません。

「対立は悪くない」そこからしか始まらないのです。

そのような価値観の超形成transformというのは、行動の変容を伴います。これまで学んで来ている対立の扱い方は、「対立は悪い」という前提にたったものでした。そして、そのような文化の中で、対立するという行動は、「非暴力である・当事者の要求を充たす・当事者の関係をよりよくする」という基準を充たすものではありえません。

たかだか、「せいせいする」というようなストレス解消の方法でしかないのです。
だから、危険、なのです。

「対立は悪くない」という価値観、姿勢態度の超形成には、行動変容のための「いいパターンの習熟」が必要なのです。

4.超形成とは価値観と行動が変わる生成的なプロセスである

ERICの研修は「テーマ」と「スキル」を扱いつつ、ESDという価値観の教育の要請に答えようと構成されているのですねぇ。

教育はプロセスです。人生や成長そのものだとも思います。

そして、成長の力は、経験学習的であり、かつ、再帰的でなければなりません。ふりかえりの力、reflectiveだけではなく、reflexitive、再帰的に、身につけたい価値観や行動によって、自分を伸ばす、目標を自己に投射する自己規定によって成長していく。それが再帰的超形成です。

超形成的に、わたしたちの社会を共通のガイドラインや価値観に向かって形成していくことは、近代の人間化という課題に答えるものでもあるのです。

http://ericweblog.exblog.jp/3417308/

確かに、ガイドラインは存在しますが、ガイドラインありきで従うということではなく、わたしの中にそれに呼応するものを見出すから、実現しようという意志が喚起されていく、そんな関係を、教育過程に作り出す必要があります。

そのためには、結構「ひっかけ」jerkとわたしが呼んでいる「ゆさぶり」が必要なんですよねぇ。


5.学習性無力感はどこから?

『学習性無力感』の著者の1人であるセリグマンさんは、この本のベースとなった研究の後、「効力感」を研究しはじめ、ポジティブ・シンキングが効力感につながると主張しはじめます。無力感の研究をしていて、嫌気がさしたのだと、インタビューで答えています。
http://ericweblog.exblog.jp/969839/

ポジティブ・シンキングの行き過ぎを指摘している人もいて、確かに、ブッシュ大統領レベルの人が「ポジティブなニュース以外は聞きたくない」という態度で居られると、確かに、かなり危うい気もします。しかし、そこまで極端でない限り、自分自身のことをいいところも悪いところも含め、アサーティブに、前向きに受け止めることができる力は、無力感による落ち込みをなくすことにはつながるでしょう。

http://ericweblog.exblog.jp/11477926/

何が無力感の基本にあるのでしょうか。

http://ericweblog.exblog.jp/3267192/

最近、読んだ『ラテンに学ぶ生き方』で、八代啓代さんは、ラテン社会の徹底的な「愛」と「承認」を上げます。そして、ラテン社会においては、ひきこもりや自殺は考えられないのだと言うのです。そして、日本社会も、学んではどうだろうか、と提案しています。

承認というのは共同体や集団、回りの人びとからの行為ということになります。人は、人との間で生きているのです。ということは、承認のレベルも、家族、地域、学校、会社、社会、などなどを想定することができるでしょう。ラテン文化が示しているのは、「失業」という「社会参加」「社会からの承認」が得られていない状況でも、家族からの愛と承認の基盤がしっかりしていれば、無力感に陥らないということです。

一方で、「役割社会」において「役」を果たすということが社会的承認につながっている日本社会では、「役」がまず評価の尺度になってしまい、「できる」「できない」という判断につながってしまいます。時には、家族による承認や愛よりも、いや、家族の中ですら、「妻」やら「夫」やら「いい子」などの役による評価の方が、近しい人びとから与えられるべき無条件の愛や承認に先行したり、勝ったりしていることもあるのではないでしようか。

地域社会の承認はどうでしょうか? ムラ八分というのはよほどのことがなければ起こらないことだったのでしょうが、ムラも役の体系での評価と無関係ではなさそうです。

学校に入るということは、近代においては、地域社会から切り離されて「国家」という共同体に組み込まれることでした。標準語を理解できるようになったり、富国強兵のための兵隊になったり、することができるということでした。文字を読み、書き、文章を作成することができる。国民化することが近代学校制度が果たした役割でした。

そして、高等教育というのは、University、普遍性、宇宙と語源を一にする高等教育機関。ここでの学びは、学問の言葉として、CALP, Congnitive Academic Language Proficiency認知的学問的言語流暢性を獲得でき、世界へのパスポートとなるものです。

http://ericweblog.exblog.jp/3671967/

教育のレベルが高くなればなるほど、自分の力で居場所を獲得していかなければなりません。『孤独なミドルクラス』へのパスポートのようなものです。それもまた、日本社会においては、自由の獲得などでは到底あり得ず、3.11以降は「東大話法」「体制」と批判される「役」ではあるのですが。

家族から、地域から、学校から、入学試験から、大学から、入社試験から、資格試験から、昇進試験から、「承認」を得ることが、自認を形成している。
そのような、何重もの「承認」の欠如、獲得することの失敗が、無力感の学習につながるのでしょうか。

そもそも、ラテン社会が示していることは、セリグマンらが言う能力主義の競争社会で、圧倒的多数が失敗する、勝者になれない構造の中で、「家族」による圧倒的な承認こそが、「しあわせ」の基盤になるのではないかということです。

「無条件の関心」が人を癒す。無条件の承認が、人を活かす。You are OK.

少なくとも、義務教育は選抜のためではなく、「しあわせ」の基盤づくりのための学校であってほしい。そんなことを感じる昨今です。


<<<>>> Mindful Readings in English and Japanese 価値観を育てる日英リーディングズ<<<>>>

近現代史を読み解き、わたしたちの価値観を育てる「Mindful Readings」を始めませんか? 

第I期上旬の三回を終えて、「ガイドライン」の選択基準、Great Booksの伝統との選択基準の比較などを行いました。

11月、第I期中旬の三回では、長文、単文、さまざまな形のガイドラインを、「どのように読めばいいか」の指導法のHowと授業案の開発に取り組みます。

Mindful and criticalに日英文を比較しながら、音読しましょう!

第I期 予定日程 毎週月曜日 月3回 計9回
上旬
2012年10月15日 第一回
http://ericweblog.exblog.jp/16599037/
10/22  第二回
http://ericweblog.exblog.jp/16648846/
10/29
第一回、第二回の成果のふりかえりと、中旬の方針の検討。現在、まとめ作成中。

中旬
2012年11月5日, 11/12, 11/19

下旬
2012年12月3日、12/10, 12/17

毎週月曜日の夕方、ERICの事務所で、18時くらいから2時間程度でと考えています。参加ご希望の方の日程やご都合にあわせます。ぜひ、ご連絡ください。参加費は1000円+コピー代などの実費です。


<<<>><>>平和教育のテキスト翻訳プロジェクト<<><>>>

「平和教育=平和の文化への道」
Peace Education: A Pathway to a Culture of Peace
Loreta Navarro-Castro Jasmin Nario-Galace, Published in 2008 by the Center for Peace Education,
このタイトルで検索すれば、無料でダウンロードすることが可能です。著者がフィリピンの方で、第二外国語としての英語であるためか、とても訳しやすいです。
これまで翻訳したものは、以下の通り。ブログで内容を確認することができます。

平和教育 平和の文化への道 翻訳 前書き 
http://ericweblog.exblog.jp/16522433
第一章平和と暴力を理解する
http://ericweblog.exblog.jp/16553521
第二章超形成的教育としての平和教育
http://ericweblog.exblog.jp/16584514

第9章 対立/紛争を解決し、超形成transformする 
http://ericweblog.exblog.jp/16223311
http://ericweblog.exblog.jp/16509177
第15章 平和教育者の属性
http://ericweblog.exblog.jp/16627742

特に、第9章と15章は、主催研修「対立は悪くない」でも活用しました。
だからこそ、超形成的、わたしたち自身の価値観の問い直しと再構成が求められているということになるのです。そして、教育においては、まず教育者自身の価値観が変わらなければならないのだと。


>>>>>>>>>>2012年度 ERIC 主催研修<<<<<<<<<<<<<

ESDファシリテーターズ・カレッジ2012年

すでに終了したものについては、報告があります。ブログを参照してください。

1.テーマ「環境」/PLTファシリテーター養成講座「リスクに焦点」 2012年6月23-24日 http://ericweblog.exblog.jp/15642643/ 
2. テーマ「国際理解」 2012年7月21-22日  http://ericweblog.exblog.jp/15834944/

3. テーマ「人権」 2012年9月29-30日 
報告がまとまっていないようですね。作成します。
4. スキル「対立」 2012年10月27-28日
http://ericweblog.exblog.jp/16689314

5. スキル「市民性」 2013年1月26-27日→2月9日10日に変更いたします。 価値観の超形成なしで、「市民性教育」はありえない! 社会観、世界観のすべてがここにある!

6. スキル「TEST13 Teachers' Effective Skill Training 教育力向上講座 
  2013年3月 詳細日程未定です。ご参加希望の方、ご連絡ください。


<<<<>>> ERIC25周年に向けたご寄付のお願い <<<>>>>

1989年誕生の参加型学習老舗のERIC国際理解教育センター。なんと2014年には25周年を迎えます。
これまで続けて来られたのも、企画委員、運営委員、理事、テキスト購入者、ファシリテーター育成事業参加者など、みなさまのおかげです。感謝です。
これからもよりよい「指導者育成のための実践」推進のための情報提供、研修プログラムの提供などに努力していきたいと思います。

日常活動に加えて、25周年に向けて、事務所のリニューアル、フューチャーサーチ走向未来ワークショップの開催など、企画しています。

特別活動支援のために、テキスト活用、研修参加などのご支援に加えて、ぜひ、ご寄付をお寄せください。よろしくお願いいたします。

ご寄付先 金融機関

ゆうちょ銀行口座: 10020-3288381 名義:トクヒ国際理解教育センター(ゆうちょ銀行同士)
◯◯八(ゼロゼロハチ)店008-0328838 名義:トクヒ国際理解教育センター(他の金融機関から)



<<<><>>>分科会セッション担当ファシリテーター募集<<<>><>>>
2013年 1月26日、27日 (土日)に 「Project WILD & WET + PLT 全国大会」 が開催されます。以下の二分科会をPLT分科会として分担いたします。

○幼児期からの環境体験 Environmental Experiences
○わたしたちの住む場所 Places We Liveより 「緑の空間」[梅村]

すでにWET/WILD合同大会に参加しているPLTファシリテーターの方々もたくさんいらっしゃいます。経験豊かな指導者を対象にした、学びの多い体験となることでしょう。参加者としても、とてもよいプログラムで構成されているので、楽しめますよ!

ぜひ、ご検討ください。

開催場所は、名古屋市ウィル愛知です。
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  (特定非営利活動法人)国際理解教育センター
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  ホームページ http://www.eric-net.org/
  Eメール   eric@eric-net.org
  blog 「 ESD ファシリテーター学び舎ニュース http://ericweblog.exblog.jp/
  blog  「PLT 幼児期からの環境体験」
http://pltec.exblog.jp/
  blog 「リスク・コミュニケーションを対話と共考の場づくりに活かす」
http://focusrisk.exblog.jp/


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by eric-blog | 2012-11-03 11:17 | ERICニュース | Comments(0)
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