夢売るふたり 西川美和の世界
文藝春秋編、文藝春秋、2012
1889冊目
ヒューマントラストシネマ有楽町で、昨日の映画の日に、ずーーーと、気になっていた『夢売るふたり』を見た。2時間を越える長編。終わったか、と思ったら、まだ続きがあって、いよいよ終わったと思ったら、まだあって、いよいよだなと思ったら、終わったかな? それぞれの人生が続いていく余韻が止まらない。
結婚詐欺の物語りという予告編だったのだが、男のそれぞれの相手に対するやさしさや想いが、展開していく。そうだよなあ、そういう男だから、女もいやされるのだし、だまされるのだ。だましているんじゃないからだ。
とはいえ、ずっーーーと、どきどきしているのは、借金の存在。再起をかけた怨念。再チャレンジできるのかという、いまの時代のつらさの共感が、ずっと響いているのではないだろうか。
それを小池昌代は「東京をにらみつけるようにして生きている人間」と表す。
綿矢リサは、台所のすみにネズミを見つけた時の松たか子の演技に息をのむ。「ねずみを憎々しげににらみつけ、こんな世界からはいつか抜け出してやると固く心に決めた表情をしてくれたら、もう少しほっとできたのに。」と。
結婚詐欺を働き、お金をどんどん貯めようとしている間、子どもを持つことをあきらめている女の気持ちの抑圧も、生理のシーン、子連れの親子に反応するシーンに、描かれている。
監督の絵コンテと脚本を並べたもの。そして、制作日記と、「見れば見るほどややこしくなる」映画の裏まで堪能しました。