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幻影からの脱出 原発危機と東大話法を越えて

幻影からの脱出 原発危機と東大話法を越えて
Escape from Illusion, Transcending Todai-Speech and the Fukushima Nuclear Crisis
安冨歩、明石書店、2012
1854冊目


今回の原発事故で起こった奇跡。

「四号機の使用済み核燃料プール・・あやうく溶け出すところだった・・・燃料プールの横にある原子炉ウェルとその横のDSピットというところに、普段は入れていない水が満たしてあった・・・そこから大量の水が燃料プールに流れ込み、それで燃料棒が溶け出さずに済んだ」(朝日新聞、2012年3月8日)

2011年3月25日、近藤俊介・内閣府原子力委員会「福島第一原子力発電所の不足自体シナリオの素描」の報告書が予測していたこと、が、起こらなかった奇跡。

http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&ved=0CEoQFjAA&url=http%3A%2F%2Fwww.asahi-net.or.jp%2F~pn8r-fjsk%2Fsaiakusinario.pdf&ei=txwsULX1OqWCmQWAnIEY&usg=AFQjCNFQ_fpIovDMnVotG6GpLZPetU3xww&sig2=iMxt4iGmUzxtjio0C1zpjA

原発という複雑なシステムにおいて、ありえる事態を数え上げて行くこと、それが「想定」ということだが、例えば、「考えるべき要因が100個あれば、場合の数は、1,267,650,600,228,230,000兆、ということになる。」095

さらに、この本でおもしろいのは、電源三法の生みの親、田中角栄氏についての分析です。

55年体制は1972年に「田中派」が成立したときくずれた。

保守本流: 親米:都会の官僚、エリート層中心
田中派: 親中:田舎中心
社会党: 親ソ:都会の労働者中心

という鼎立構造へと移行した。118

72年体制

「体制」とは官僚・公務員・大企業経営者・従業員およびこれらの配偶者。119

天下り先機関、国公立大学、公立学校の教員、大企業には大手の私立大学も含む。自治労・日教組・経団連・連合。高学歴・知識人

「非体制」とは上記以外の人びと。農林水産、寺社、土建、中小。商工会議所、農協、私立幼稚園連合会、寺社関係、各種社団、軍人遺族関係団体、引退した人びと
さらにこの人びとは住む場所によって二つにわかれる。「都会」と「田舎」

国民年金 7000万人
第二号被保険者 3800万人 (サラリーマン・公務員)
に付随した「第三号被保険者」 1000万人以上=体制
第一号被保険者は2100万人。=非体制

日本が学歴社会であるというのは高学歴でなければ「体制」の側に入れないという意味です。121

子どもの利益を代表する団体は存在しない。

「地方を基盤とする政治家たち」を「田中派」と呼ぶ。


公共事業・補助金と投票との交換関係が非体制はと体制保守本流との間に成立し、自民党が引き続き政権を維持した。「田中角栄主義」

体制に依拠する本流は、アメリカと大企業とマスコミと検察によって支えられており、政治活動をする上でも、さほどの資金を必要とない。
これに対して田中派は、組織と資金を自前でなんとかしなければならない。・・・この条件のちがいの故に、田中派の政治家は往々にして「疑惑」の標的となって倒れる。137

田中角栄「軍国主義のために使う金はない」

田中主義は、都会の分散化という目的を果たすことはできず、田舎を中途半端に都会化して、何の魅力もないところにしてしまい、逆に人口流出を加速させただけ。・・・もはや田中主義を継続することは不可能。161

小泉主義=反中国(靖国参拝)・田舎の切り捨て(公共事業抑制)・都会の非知識人の切り捨て(=規制緩和、福祉抑制)
138

つまり、田中主義との妥協の産物である「自民党」をぶっつぶす。

民主党の野田、前原。

1.「体制」か「都会」で稼ぐ
2.「田舎」の「非体制」に公共事業・補助金で金をわたして議席を確保する
3.公共事業・補助金で官僚のあまくだり先を用意する
4.中国とアメリカのバランスをとる


プラザ合意によって、日本円は跳ね上がった。1985年。

輸出依存型の経済構造を改変し、日本円を国際化し、大学・企業をアジアに開き、アジア経済全体を支える中心機能を担うように変革する必要が、そのとき、あった。144

自らの社会を開くために「役と立場」のシステムを打ち破り、むより柔軟な新しい社会関係に踏み出さなければならない。それが怖かった。日本人にはその勇気がありませんでした。144

田中角栄にとっては、「地方にお金をおとす装置としての原子力発電所。」

チェ・ゲバラと南米。166の写真もおもしろいが、次にすすんで。

世界が発狂している原因。ベイトソンの「ヴェルサイユ条約」

「国際水準における憎悪、猜疑心、偽善は14ヶ条とヴェルサイユ条約とにさかのぼります。「父自ら苦き実を食し、子らの歯痛む」。父らは自分が何を食べたのかをしっているので、まあよいのです。子どもたちは何が食べられたのか、知りません。」(Bateson, 1972,p.481

悲劇の連鎖の中に生まれてきた三代目、四代目二兎って、世界は最初から狂っているようにしか見えない。

国家による総力戦という近代が生み出した戦争の「新しさ」に変化できなかった国際社会が、ドイツに従前の戦後補償を求め、その結果、第二次世界大戦へとつながった。



さて、脱出口である。

子どもに聞く。子どもの利益を最大限に考える。215
赤ちゃんは知っている。ごまかさずに、きちんと伝える、そして聞くこと。

「現在の教育のあり方をそのままにして、教育投資を拡大することは、教育関係者の利益を拡大するに過ぎず、子どもの利益に反します。」215


廃棄物処理の研究教育が大切だが、50歳以上に限定すべきと、著者は提案する。
若い人を振り向ける必要など全くない。


おもしろい! 教育を「年代別」に考える!

紅白旗国家群

平和で豊かで美しい国家群 Peace, Rich, and Beautiful Countries: PRBCs

いまの中国とアメリカにはさまれて右往左往している状態では、何も変化しない。新しい価値を創造する。

日本のブランド力を回復する方法は?
日本経済は機能していない。立場主義が硬直化させている。

佐伯・柴田『親会社の天下り人事が子会社もだめにする』が立場主義の参考になりそうだ。

さて、

原発ゼロで乗り切る夏が、東電管内では確実に過ぎている。

いまは、まだ火力発電所に頼っているものが大きいが、「バックトウザフューチャー1967」の提唱していたことが、現実味をもってきている。Think on.
by eric-blog | 2012-12-17 12:23 | ■週5プロジェクト12
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