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心とからだの主人公に-障害児の性教育入門

72-7(332)心とからだの主人公に-障害児の性教育入門
山本直英、大月書店、1994

"人間と性"教育研究所http://seikyoken.org/seikyoken.htm
わたしは『山宣』という小説を読んだことしかなかったのだけれど、山本宣治さんというのは労働運動というより性科学の推進者として著名なのですね。
著者は2000年になくなられているそうですが、障害者に対する性教育だけでなく、性教育の大切さから研究所は継続。

2003年9月に「都立七生養護学校(日野市)で「不適切な性教育」を理由に処分」というニュースがありましたが(http://www.jinken.ne.jp/topics/topic_allview.php)この本を読む限りでは、その実践こそがもっとも先進的な取り組みであったことが知れます。

記事で紹介されている「昨年度まで知的障害児の養護学校の校長会でも高く評価されていた実践が突然、処分の対象になるなんて。正直、驚きました。現実に障害児の性的被害はあり、七生では性教育の模索が続いていた。どういう教育が必要なのか、の論議を抜きに処分するというのはどうにも乱暴すぎます」
という声にも納得。科学的認識すら教育の最低共通項として合意できないのであれば、いまの教育現場というのは何をしていることになるのでしょうか。ドーキンスではありませんが、科学は人間を解放し、またインスピレーションの元にすらなりえるのに。empowermentの前にenlightenmentがなしうることを、『言葉のない世界に生きた男』を読んで感じたように、基本的な認識の力は現代に生きる人にとって必須なのではないでしょうか。
『虹の輪』の指導などはCAPの実践ともからめてもっと一般的に活用できると思いました。
等身大の人形や性器の絵などを使って、わかりやすく指導し、語り合うことで、性という究極のお互いの関係性について子どもの心と行動を育むものになっていると思います。

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性的な刺激となるスキンシップについては、人間はマナーとモラルをつくって不用意にかってにタッチングすることを抑えています。相手の心情や選択を無視したタッチングについては指導とトレーニングが必要です。
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『虹の輪』を使った実践例
自分を中心に同心円状に
ふれあってもよい人
握手してもよい人
あいさつをする人
しらんぷりをする人
を色分けする。そこに自分の知っている人たちを分類していく。
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スキンシップを扱った授業をする
『おなかのあかちゃん』(講談社)
『成長するっていいなあ』ステファニー・ワックスマン(大月書店)
などの写真教材を使う
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「仲間作り」「ラッシュアワー」など堂々とスキンシップを経験できる機会を設ける


先日の「セロトニン5」についても、実はわたしたちが小さな子どもとであったときにやっていることが、「セロトニン5のための包括的アプローチ」であったことに気づきます。
赤ちゃんと目が合う(見つめる)と、こちらから大人がにっこりする(ほほえむ)、そして「いくつですか」とたずねる(話しかける)、「いい子でしゅね」などと愛想を言って(ほめる)頭をなでる(触る)バイバーイ、にっこり。

ね、すごく包括的なアプローチになっているでしょ?
科学が解明する前から、わたしたちは赤ちゃんの成長に何が必要かわかっていたのです。enlightenmentというのは、都会生活の中で捨ててしまったものの価値の再発見でしかないかもしれません。
by eric-blog | 2005-01-20 09:54 | ■週5プロジェクト04
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