ERICnews 276号 ともによりよい質の教育をめざして 

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ERIC NEWS 276号 ともによりよい質の教育をめざして 
   2020年までに、学級定員数を20名に! 202020第二号=Share Free
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(文責: かくた なおこ 角田尚子
http://ericweblog.exblog.jp/
twitter : kakuta09  FBも)

参加型学習は、「協同学習」「問題解決学習」「社会参加のための学習」であるということを内包しています。今回は、そのような学習を実現するために、クラスサイズや研修の規模はどれぐらいなのかを、考えたいと思います。

参加型学習を成立させる要素は、次の三つだと思います。
1.参加者の参加
2.適したテーマや課題
3.テーマに迫るための方法論、手だて
これらの三つがそろえば、「みんなの頭で考える」ことができるのです。
さまざまな教え方・学び方について検討してみましょう。

・。・゜゜・☆彡*:.。.:*・゜+.参加型学習に適した人数 +.☆彡・゜・。・*:.。.:*・゜

1.グループ人数 協同学習、問題解決学習、プロジェクト学習
2.グループ数 そして全体の数
3.問題解決学習


1.グループ数  協同学習 ケーガンメソッドのグループサイズ
いま、ブログに連続して翻訳を紹介している「Cooperative Learning, Cooperative Lives」で、しばしば言及されるKagan Method。日本にも何回か、招かれて来日していますし、シンガポールでの実践にも力を入れていると、聞きました。
わたしも、一度、トレーニングに参加したことがあります。(2003年10月)
http://ericweblog.exblog.jp/845099/
ケーガン教授法は、グループ作業の「ストラクチャー」に焦点をあてています。基本的に4人一組のグループ作業をどのようにすすめるかに強調がおかれています。四人一組の活動の構成を、緻密に行うことで、参加者の集中、すなわち、質のよう参加につなげることができる。それがケーガン教授法があきらかにしていることです。
なぜ、四人なのか? それは経験的に、導き出されている、あるいは、ケーガン教授法が、実証実験的に積み上げているものと、言えるかもしれません。

PLTの『リスクに焦点』というモジュールでは、グループ分けのことをはっきりと「協同学習のグループに分ける」と、アクティビティのすすめ方に明示されています。『リスクに焦点』は、中等教育段階のテーマ深化型モジュールなので、インターネットを使った調べ学習や、グループで調査を実施したりなどの活動が取り入れられています。グループの全員が分担したり、明確な課題を割り当てられていること、が強調されています。

ERICの参加型学習においても、グループ作業は、4人から5人。
5人以上になると、「お客様」が生まれたり、あるいは「進行役」などを決める必要が、生まれたりします。

そのため、6人ほどのグループ作業を取り入れている実践では、以下のような役割を決めることで、グループ作業に「お客様」が生まれることがないような工夫をしています。「司会」「記録」「発表者」「道具係」「応援団」などです。

ERICの研修では、そのような役割も決めませんし、ケーガン教授法ほどに、「構成」にこだわることはしていません。ただ、ケーガン教授法が使っている工夫は、他の参加型学習のテキストにも共通する工夫であるので、知っておくこと、適宜活用することは、ファシリテーターにとって、有用だと思います。

そこまでしなくても、四人というグループ人数が、魔法のように、働くのです。わたし自身は、「インプットとアウトプットのバランスが良い人数」だなと、感じています。グループの人数が多くなれば、「聞くこと」が増えますし、少なくなれば、「話す」機会が増えますが、意見のバリエーションは少なくなります。
ただし、グループの人数は4-5人でも、そこで出る意見の質、発言の回数、関係性などについては、課題もあると感じています。それを高めるために「介入」するのか、しないのか、それが次に述べる「グループの数」に関わってくるのです。

また、ペアから四人、四人からもっとと、意見の多様性を求めて、共有するサイズを増やしていこうとする時、あるいは、全体で、共有しようとする時、ケーガン教授法の言う、ストラクチャー以外の工夫が必要となるのです。

2.グループ数
4-5人のグループによる協同学習や、グループ討議の結果から、次に何をするかが、グループ数をどれぐらいにするのかのポイントになってきます。ケーガン教授法は、全体の人数は、多くても体験はできますが、グループ数が多くなれば、グループからの発表は、「サンプリング」でしかなくなるのは仕方のないことです。いま流行のワールド・カフェも、四人一組ですが、必ず一度、グループをシャッフルして、四人一組のグループ作業を二回行うようにしているようです。
なぜ、グループを変えるのか。
なぜ、共有するのか。
グループの中で話し合うだけでなく、多様な視点を共有するというのが、その目的にあると思います。PLTのアクティビティのすすめ方でも、必ず「クラス全体で共有する」shareということが行われます。その上でまとめの作業があり、ふりかえりとまとめるための「問い」が示されます。グループを変えることは、特に行っていません。

一方で、グループを変えることの意味は、さきほど述べたグループ内での話し合いや人間関係、組み合わせによる質の違いを標準化することだと思います。「模造紙に連想図的」にアイデアを出し合う方法を二段階重ねても、収斂したり、深化することの保証は生まれません。

PLTのように、「概念を学ぶ」ことを目的にしていると、「グループ作業→全体共有→グループ作業でのふりかえりとまとめ」によって、学んだことを定着されるプロセスは必須になります。

いくつぐらいのグループの発表、グループからの共有をするのが望ましいのでしょうか? 

また、ファシリテーターはいくつぐらいのグループの討議や作業の進行状況を把握することができるのでしょうか。把握すべきなのでしょうか。

そこに対する答えが、グルーブ数と、その結果として全体の人数を決定することになるでしょう。

経験的に、発表を共有する集中力が、聞く側に持続するのは、5グループまでだろうと思います。また、グループを見回って把握できる数も、7グループ程度なのではないでしょうか。

とはいえ、グループからの共有の方法も、グループ数や時間の制約に合わせて工夫があります。

ギャラリー方式という、グループの成果物(模造紙等にまとめられたもの)を見て回る方式は、グループの数の多少にかかわらず、有効です。その時、誰か説明役を残しておいて、交代するということも可能です。必須ではありません。

何を共有したいのか、なぜ共有したいのかをはっきりと示すことが、共有する時の集中力を高めることにつながります。

3.問題解決学習 プロジェクト学習
  課題解決のための学習では、例えば、HIP/AVPのワークショップで、「協力」を学ぶためのエクササイズとして行われた「ボールを全員が触る」ことをなるべく短い時間で、というような課題に取り組む人数として、7人から9人のグループを作ります。そのグループの中で、アイデアを出し合い、タイムを計測し、「向上」と「達成」のために協力する。そんなエクササイズです。

戸外で行うプロジェクト・アドベンチャーも、課題解決、協力して達成するアクティビティですが、15名程度なのではないでしょうか。戸外に連れ出す活動は、一チーム15名まで、できれば5名に一人ぐらいはサブリーダー、サポートをつけるというのが通常ではないでしょうか。

プロジェクト学習について、すでに、PLTの「調べ学習」のグループについての配慮などでも指摘しました。「協力」を学ぶ、ためには、グループ内の役割分担が、不公平のないようにすることも、大切な、指導者の介入のポイントになるのではないでしょう。

そういう意味では、何グループぐらいに目配りできるのか、全体の人数にも、配慮が必要でしょう。

・。・゜゜・☆彡*:.。.:*・゜+.集団で学ぶということ +.☆彡・゜・。・*:.。.:*・゜

集団行動を通しての学びというのは「規律を学ぶ」という面と「内容を学ぶ」という面があると思います。30人40人という人数は、「規律を学ぶ」ことに重きが置かれることになり、教育技術も、「内容をどう伝えるか」よりも、「どう集団として動かすか」に力点が置かれてしまうのです。

確かに、何十人、何千人をも引きつけるパフォーマーは存在します。優れた力を持っている教員の実践もすばらしいものがあると思います。しかし、どうすれば、Contentsに、しかも、そのコンテンツが「考える力」であるとか、スキル的で、習熟的で、蓄積的で、応用的なものであるならば、一人ひとりの習熟を見守り、見極めることが必要になるのではないでしょうか。

「集団マネジメント」に力をそそがなければならない現実は、例えベテランであっても、いつ崩壊するかもしれない危うさを含んでいるのだと思います。
それが、それまでのベテランの方法論が通用しなくなった「小一プロブレム」や「中学校ギャップ」なのではないでしょうか?

本来、中等教育では、何を教育目標とすべきなのか? その教育目標に、学習者自身が合意できれば、彼らは学級経営に協力すると思います。そして、教育目標に見合った学習の場を補償しようとする大人たちの姿勢が、彼らの信頼を得続けて行くための条件であると思います。

1970年代から80年代に「教育の人間化」運動が米国で起りました。1980年代の教育改革の動きはそのためです。「人間中心」の学習内容の提案は、それまでの科学中心主義のカリキュラム、中等教育段階の教育内容が高等教育における専門化の助走、基礎づくりであることに、警鐘をならしたものでした。

フィンランドの教育改革も1980年代のことです。

その時、日本はどうしていたのでしょうか? Japan As No.1 に浮かれ、その成功の元であった「日本らしさ」に拍車をかけようとしていただけなのではないでしょうか? その先はあるのでしょうか?

教育は、人間を育てるためにある。いま、人間は共に生きることを学ぶ必要がある。それが教育目標の第一であり、公教育の第一義的存在意義だと思います。

もちろん、教育は、これまでの人間諸科学の積み上げの上に、存在します。人間の諸科学は、人間の脳の特長の反映であると言います。人間の脳がどのように世界を捉えるかに、科学は規定されているのです。しかし、脳は環境の産物でもあります。つくり出された科学のツールが、また、人間が世界をどう捉えるかを規定するのです。ものの見方のツールが、何を見るか、どう見るかを規定するのです。そして、どう見るかが、どうあるかを規定する、再帰的に。ことばが、実態をつくり出しもするのです。

いまの地球は、いきものの共進化の姿です。そして、人間が地球をどう見るかが、これからの地球と人間の共進化をつくり出すのです。

競争ではなく、協力を学ぶこと。

1980年代の米国での議論は、いまのわたしたちに、何を投げかけるのでしょうか?

・。・゜゜・☆彡*:.。.:*・゜+.集団を育てるということ +.☆彡・゜・。・*:.。.:*・゜

学級での協同学習でのポイントは、関係性が続くということです。協同学習が学級風土や協力の文化を強調するのは、関係性が集団を育てるからだと言えるでしょう。

それは、職場も同様です。職場の人間関係は、続いて行くものなのです。こんな実践例が、寄せられました。

性格当てゲーム
<ゲーム内容>
 ①2人一組になって、見た目等から想定した「相手の性格」を5つ書き出して
もらう。(制限時間2分)
 ②書き出した「性格」の紙を交換する(つまりは交換した紙に記載してあるの
は相手が考えている「自分の性格」)。
 ③5つの「性格」のうち、合致している「性格」の数を数え、統計をとる。
 ④結論として、見た目等で判断する「性格」と実際の「性格」は異なる。
  →先入観、偏見にとらわれないようにしましょう。

このアイデアが寄せられた時、わたしが思ったのは、次の二点でした。

「性格」についての表現を「ポジティブな表現にする」こと、
最初に話し合い、学びあいの心がけを共有しておくことが
ある程度、「お互いのことを話題にする」ことを前提に、心がけを
話し合っておきましょう。「違うと思ったら、言っていい」「言ったことを固定させない」「自分の考えにとらわれない」などを共有しておきましょう。

その上で、このようなアクティビティの展開を考えました。

1. ペアで、相手の性格について「ポジティブな」表現で指摘し合う。
2. 同じ傾向でも「ポジティブ」にも捉えられるし、「ネガティブ」に捉えられることがあることを確認する。その上で、さきほど指摘された「ポジティブ」を自分自身で「ネガティブ」に言い換えてみる。
3. 「指摘の仕方・受け止め方」を二人で確認する。
4. ふだんの職場環境や人間関係に応用できることは何か、考える。

実際には「研修の狙いは既に面識のある者同士が「性格」を当て合い、他人が感じている「性格」と実際の「性格」とのギャップを確認することを意図としています。」ということで、あえてポジティブな表現にはこだわらずに行われたようです。30分という短い時間で、人権について情報提供の時間も含めての試みということでした。

継続した関係の中で、協同学習を取り入れるのは、次の手だてなどにもつなげていくことが可能なので、協同学習が伸ばしてくれるものを踏まえて「集団を育てる」「集団として育つ」ことをめざしましょう。

協同学習が育てる情動的な力  Affective
人道的な人間関係スキルcoop
人道的なグループスキルcoop
多元的で、民主的な価値観coop
文化的、人種的、個人的な違いを認める、受け止めるcoop
偏見やバイアスを減少させるcoop
価値観の教育coop
学校、教科、学業、学校で働く人々、他の生徒への
前向きな態度coop
学ぶことに対する喜び、満足感coop
学びを促進するために不安を軽減するcoop
前向きな自己への態度coop
感情の能力coop

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◆ ERICの主催研修予定 ◆ 
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■ ERIC主催研修 TEST12 教育力向上講座

今回は、「評価」の方法論に焦点をあてて、今年度の共通課題「価値観を育てる」に迫ります。
ぜひご参加ください。

「価値観」を育てる評価のあり方

平成24年3月18日(日)~19日(月) 12時間6セッション研修
受付:  3月18日(日) 10時30分~10時50分
開始:  3月18日(日) 11時
終了: 3月19日(月) 16時
会 場  : 国際理解教育センター(東京都北区滝野川1-93-5コスモ西巣鴨105)
主旨・内容: 共に生きるための「価値観」を一人ひとりに育て、価値観に基づいた行動力を育てる鍵は「ふりかえり」「省察」「評価」する力にあります。
参加費  : 20,000円 
詳細は、実施要領http://eric-net.org/doc/atERICTEST12youkou.pdfまで。              

■ 2012年度 ERIC主催研修の日程 

2012年度は以下の日程で、テーマ型研修3本、スキル指導研修3本のファシリテーター養成講座を開催します。
ぜひご参加ください。

 1. テーマ「環境」/PLTファシリテーター養成講座「リスクに焦点」 2012年6月23-24日
 2. テーマ「国際理解」 2012年7月21-22日
 3. テーマ「人権」 2012年9月29-30日
 4. スキル「対立」 2012年10月27-28日
 5. スキル「市民性」 2013年1月26-27日
 6. スキル「TEST13 Teachers' Effective Skill Training 教育力向上講座」2013年3月

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  (特定非営利活動法人)国際理解教育センター
ERIC:International Education Resource & Innovation Center

〒 114-0023 東京都北区滝野川1-93-5 コスモ西巣鴨105
  tel: 03-5907-6054(研修系) 03-5907-6064(PLT・テキスト系)
  fax: 03-5907-6095
  ホームページ http://www.eric-net.org/
  Eメール   eric@eric-net.org
  blog 「 ESD ファシリテーター学び舎ニュース http://ericweblog.exblog.jp/
  blog  「PLT 幼児期からの環境体験」
http://pltec.exblog.jp/
  blog 「リスク・コミュニケーションを対話と共考の場づくりに活かす」

http://focusrisk.exblog.jp/


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by eric-blog | 2012-03-05 09:43 | ERICニュース | Comments(0)
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