私という病
中村うさぎ、新潮文庫、2006 辛酸なめ子の現代社会学 辛酸なめ子、幻冬舎、2011 まだ読んでいないけれど、角岡さんの本『カニの横歩き』。読もうと思っている。その角岡さんが「どこに行っても浮いてしまう」とおっしゃったらしい。「適応しているように見えるだろうけど」と。 浮いてしまう人々の本を並べてみた。と、この二冊を見て、はたと気づいた。 浮いてしまうのに、適応しようとする「病」。 「女」として認められるために、デリヘルまで挑戦してしまううさぎさん。自分の幸せはそこにないと思いつつ、その幸せを求めてしまう。 社会を社会学しながら、『わしズム』のような社会派雑誌にどこかねじれたおかしさがある漫画を投稿。11万円もするバッグを買おうという衝動を、もってしまうショッピング依存。 共通するのは「いまの世の中なんかおかしい」と思う感覚を持ちながら、でもいまの世界で勝ちたいという気持ちを押さえられないこと。そして、ある程度勝ってしまったこと。 声高にアンチを叫ぶ力ももうない。だって「勝ち組」に連なっちゃったんだもん。プチ勝ちだけど。先はわからないけれど。何の保障もないけれど。困ったらプチ勝ちに行く方法は身につけたわ。だから大丈夫。 ああ、なんだか書き方が似てしまった。 フランス革命の時、「いまの世の中、おかしい」と思った人々は封建主義をぶっこわす革命に参加した。革命の元祖。貴族だったのに、迷いがなかった。 共産主義、社会主義革命の時、「いまの世の中、おかしい」と思った人々は、ナロードニキ、労働者を組織した。革命を求めつつ、現状の中で、労働運動の形を確立した。 武装革命の可能性が見えた時、「いまの世の中、おかしい」と思った人々は、内ゲバやテロに走った。 人間そのものが問題だと思った人々は、宗教に走った。 黒人解放運動、女性解放運動は、「いまの世の中、おかしい」と思った時、国際条約を制定するためのアドボカシー・社会的提言を継続し、日常の中ではアサーション・非攻撃的自己主張の力を身につけた。 南北格差の解消を求めた人々は、「いの世の中、おかしい」と思った時、たくさんの人々の意識が変わるように、開発教育を先進国で始めた。さらには、Change the Dreamのように、価値観を変えることを広げようとした。 環境問題に直面した人々は、「いまの世の中、おかしい」と思った時、人々を説得するデータ、不都合な真実と、破滅的な未来予測シナリオを提示した。Mind Bomb、人々の心に爆弾をしかけよう。 それでも「いまの世の中、おかしい」と思った時、人々は、一人ひとりのリーダーシップ、Change Agentsが増えることを期待した。 「いまの世の中、おかしい」と思いながら、革命の側にいない時、人は病になる。 問題は、革命の側と革命の方法がこれまで述べて来たように、多様になってきたということ。そのどれにも政治的にコミットできないと感じる時、Change Agentを引き受けているわけでもないと思う時、「浮く」。 わずかに、わたしは環境問題についてはChange Agentだと思っているし、女性問題については当事者的に振る舞える特権をもっている。それは、男性中心社会の男性優位文化で、「男性である」というだけで持てる特権と裏腹のものだと感じる。 ことばで規定できるほど、現実はシンプルなものではない。ことばでつながれるほど人間関係やネットワークは簡単ではない。どの方法論に身をおくにしても、リアル革命の一端にいると信じることが「人は歴史の中に生きる時、もっとも自由である」。 とはいえ、被抑圧者が社会変革の鍵となるのでなく、消費され、消耗してしまうばかりの「日本というシステム」は不毛だなあ。 いま見ているジャパン・サミット、英語ネイティブが司会を勤めていて、何やらグローバルな見かけだが、先端的知性を持つ女性たちは影もない。日本社会にいることが心地よい英語ネイティブが喜んで、メディエーターをやっている。どうやら、日本は、そのような知性から見放されてしまっているようだ。 「人間は、自分で自分の歴史をつくる。しかし、自由自在に、自分で勝手に選んだ状況のもとで歴史をつくるのではなくて、直接にありあわせる、あたえられた、過去からうけついだ状況のもとでつくるのである」マルクスの言葉はこちらだったか?
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| 2011-12-12 12:08
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