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内部被曝の脅威 原爆から劣化ウラン弾まで

内部被曝の脅威 原爆から劣化ウラン弾まで
肥田瞬太郎、鎌仲ひとみ、ちくま新書、2005

劣化ウラン弾が何なのか。知らなかった。
装甲車をぶち抜き、内部を燃やす大きなエネルギーを持つミサイルだ。
そのエネルギーは核エネルギーから来ている。

劣化ウラン(ウラン238)とは、明らかに放射性物質なのである。それを戦争中にばらまくなどということが許されている。そして、当然のことだが、その武器が使われたイラクで、放射線被曝の症状が、子どもたちに、そして大人に現れている。湾岸戦争前の4倍の白血病や癌。145

劣化ウラン弾を製造、研究、試射、貯蔵、廃棄等をする施設は全米に55カ所。確実に被曝は広がっている。144

長期的被曝については、毎年1mSvで一万人から10万人に一人の割合で、将来のある時点で癌にかかるリスクが付加される。128

内部被曝となればどうなるか。

「人間の肉体の生命活動を作り出す細胞内の新陳代謝活動は、酸素、水素、窒素、炭素など多数の分子が行う化学反応によって維持されているが、そのエネルギーはすべて電子ボルトという単位で表される。これに対して放射線分子の持つエネルギーは100万倍。メガ電子ボルトで表すほど桁違いに大きい。低線量放射線が体内から放射されると、重大な障害が起こすのは、100万倍もの桁違いに大きいエネルギーによる。
生体内では0.25-7.9電子ボルトという小さな単位のエネルギーがやりとりされている。  ウラン235が放出するアルファ線分子は一個の粒子が420万電子ボルトのエネルギーをもって新陳代謝の中に割り込んでくる。089


放射線分子の大きさは細胞の約6兆分の一。分子の大きさを仁丹の粒、直径1mmの大きさに拡大すると、人間の身長は富士山の約9倍。3万4000メートル。

それって大気圏を突き抜けているし。

肥田さんのヒロシマなどでの医者としての経験も書かれている。

1946年、「広島・長崎の原爆被害はアメリカ軍の機密であり、何びとも被害の実際について見たこと、聞いたこと、知ったことを、話したり、書いたり、絵にしたり、写真に撮ったりしてはならない。違反したものは厳罰に処す」という厚生大臣の通達があった。043

1949年アメリカのABCC Atomic Bomb Casualty Commissionが比治山に開所。被爆者の診察、検査を行い、死亡者は解剖してアメリカに送った。治療はいっさいしない。048

いったい、わたしたちの社会はどうしてしまったのか? 日本は核爆弾に反対してきたのではなかったか。

福島県産のきゅうりでも、買おう、と思った。避けても仕方がないと。避けなくてもかまわないと。たった一日たって、ぽつぽつと凹みがくされたように変色した。これまで見たこともない、きゅうりの腐り方だった。凹みを包丁でこそげたが、中まで黄色く変色していた。深く。

茨城も群馬も千葉も、産地が値札に書かれた野菜たち。その野菜たちの顔が、しんどくなってしまった。北海道、長野だって、安心を提供してくれない。かといって、フードマイレージの高い関西のものを買うのか、というと、合理的な選択だとは思えない。

これが、何十年も続くのかと、うんざりした気持ちになるのを止められない。

生命の本質が劣化させられている。
by eric-blog | 2011-11-01 11:01 | ■週5プロジェクト11
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