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知事抹殺   つくられた福島汚職事件

知事抹殺   つくられた福島汚職事件
佐藤栄佐久、平凡社、2009

1939年生まれ
JC日本青年会議所の活動を経て、40歳
1983年、44歳で参議院議員初当選。大平総理の急死に伴い、「手作り」選挙の形に。それがその後の基盤と。
1988年、49歳で福島県知事。88万票を獲得して、圧倒的支持。
2006年、第五期18年目に知事辞職、逮捕。2008年有罪判決、5年間の執行猶予。控訴中。

雪深い福島には、墓場に墓碑標をたてて、雪の中に埋まる墓を探すための目印とする風習がある。自分の死期が近いことを知る老人が頼むのだそうだ。

この本は墓碑標なのだという。心ある人が、そこを探せば、墓を見つけることができる墓碑標なのだと。「死んだ」のは、佐藤一人ではない。手作り選挙の応援団に参集したたくさんの人が、検察の取り調べに呼び出された。

杉山浩二総務部長、自殺未遂、入院中。もう一人、会津の支持者、自殺。
東急建設の支店長、二名、自殺。

そして、知事の弟も、共同正犯者として起訴、有罪判決を受ける。

知事になった時、まさに、リゾート開発まっただ中。「福島県リゾート地における景観形成条例」を制定し、マンション建設の高さ制限を可能にする。「うつくしま、ふくしま」をスローガンに。
2000年の大型店出店自由化によって寂れて行くまちに対して、「商業街づくり推進条例」を制定し、「集う」「商う」「住まう」まちなか再生三事業。アメリカやイギリスなどにも地域づくりの理念をもって、大型店の出店については地域との協議がなされていることにも学ぶ。

福島原発が最終的に使用済み燃料の保管場所にならないようにと、「使用済みの燃料は持ち出す」ことを、当時の通産省の担当課長と確認。しかし、一年後の1994年原子力委員会は「2010年ごろに、再処理に関する方針を決定する。」と原子力政策を変えた。

「国と福島県の約束を反故にして、福島県を代表する知事をだますということは、210万県民をだますこと」63

役人には顔がない。63

原子力政策を、国は事業体に丸投げしている。「国や電力会社だけに任せておけない」

2001年、エネルギー政策について「県民の声を聞く会」開催を始める。
2005年までに35回開催される。

「構造化されたパターナリズム」77

地方分権の道筋。権限、財源の委譲と役割分担の明確化の三位一体改革。その発信となったのが、福島県だ。しかし、バリアは大きい。

官僚制の「自己保存」の頑丈さ。国はムジナなのだ。

そして、第6章「逮捕」から180ページほどは、取り調べから裁判まで。
「なかったこと」を証明することの難しさ。「ある」とする証言には根拠を求めないのに、「ない」という側には「ないことの証明」を求める裁判。
取り調べにあたったのは、山上秀明検事。この人の名前も覚えておこう。
逮捕に連なる事態がくすぶり始めるのは2003年から2004年ぐらいから。執念深いね。

重い、本です。

福島県民は、自ら選んだ知事を殺され、そして、いま、原発事故で、殺されようとしているのか、中央に。という無念さが頭から去らない。

いまの枠組みで考えている以上、「同じ構造で同じ事故」が起こる。原発でも、えん罪でも。

どれだけのことが「隠されているのか」以下は、河野太郎さんの、「原発事故隠し」の指摘も。
まだまだ隠蔽されています
http://www.taro.org/2011/09/post-1092.php
by eric-blog | 2011-09-21 10:26 | ■週5プロジェクト11
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