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2011年度 ESDファシリテーター養成講座 人権教育

2000年度から実施してきているESD 持続可能な開発のための教育 ファシリテーター養成講座は
1989年に設立されたERIC国際理解教育資料・情報センターが、
海外からの参加型学習実践の紹介を踏まえて、独自のカリキュラムとして実践しているものです。

1989年から1999年の初期の10数年は、学びの時期でした。
ERICは、その学んできた参加型学習を三つの類型に整理しています。

第一期: 気づきから行動へ、行動のための概念の学び
   1989年に翻訳した『ワールド・スタディーズ』や1992年に訳した『PLT木と学ぼう』は、世界を読み解くための「主要概念」について、経験学習的アプローチで参加者みずからが「気づき」、その概念を点検の視点として「行動」できるようになるための「気づきから行動へ」というねらいをもったアクティビティで構成されたカリキュラムです。ERICが出版した『フード・ファースト・カリキュラム』や『地球のみかた』『未来を学ぼう』などが、この分類にあたるものです。
    わたしたちの社会はさまざまな共通の課題を抱えている。たくさんの個別課題についての学びを、並列的に繰り返すのではなく、それらに共通するモノは何かを発見することと、共通するものの見方・考え方を学ぶことが「気づきから行動へ」のアクティビティおよびカリキュラムがめざしているものです。
    その背景には「世界の中のコロンバス、コロンバスの中の世界」プロジェクトの推進者である国際政治学者、チャドウィック・アルジャーさんの思想が流れています。「世界のものごとはつながっていて、わたしたちの生活と無関係ではない。にもかかわらず、人が行動しないのは、無関心だからだ。無関心だから無知である。無知であるから行動できない。その無関心の悪循環を断つことがいちばん大切なことなのだ」と。そこからThink Globally, Act Locallyというスローガンも生まれているのです。 

第二期: スキル・トレーニングとしての参加型学習
  「気づきから行動へ」、地球市民的行動が共通の課題解決のためには必要です。しかし、「気づき」によって無関心の悪循環を断つことができても、どう行動すればよいのか、一人ひとりの行動力は、どうすれば育てられるのでしょうか?
  「わたし一人が何かしたって」とか、「わたしには何もできないわ」という無力感が次の壁であったのです。そして、無力感は学習される。近代という時代が引き起こす無力感。学校教育という装置が強制する序列化の無力感。社会が抑圧する行動を見せつけられる無力感。すべて、人間が学び続けることで学習してしまっている無力感であるのです。「気づきから行動へ」という、人類共通の課題に対する行動力は、これらの無力感の学習の連鎖を断つように、カリキュラム化される必要があるのです。
  責任、協力というような社会的行動を身につけるには、まず「自信」から、そして幼少期からの学びを再検討する必要がある。スキル・トレーニングにとりかかる人々が共通して開発したのが幼児期からのセルフ・エスティームを高めるためのカリキュラムでした。マイノリティに対する教育が「ヘッドスタート」初期からの関与として始まったことにも関係しているのかもしれません。
  ERICが出している『いっしょにできるよ!』『いっしょに学ぼう!』などが、幼少期からの自尊感情、協力、自己表現などを身につけるためのアイデア・アクティビティ集です。『対立から学ぼう』は中等教育段階のカリキュラムです。また、大人のためのスキル・トレーニングも存在しますが、「からだでできるようになる」ためのものは、繰り返し行うこと、環境的に習熟・実践を助ける支援的風土が存在することがとても大切です。

第三期: 社会的合意形成のための参加型手法
  1980年代は、さまざまな合意形成の方法が開発された時期でもありました。「参加型学習」という表現は、『ワールドスタディーズ』を翻訳したときにERICの翻訳チームが「学習者中心のアクティビティ主体の学習」をあらわす訳語として使い始めたのが最初です。ですから、逆に PRA Participatory Rural Appraisal参加型地域評価法という名称を聞いた時は、驚きました。そして、それは地域社会における合意形成の方法論に、国際開発学者であるロバート・チェンバースさんが開発したものでした。
  そして、彼らの試みはParticipatory Learning Approachとして、開発協力よりも、「学び」により接近していくのです。
  その後ERICでは「フューチャーサーチ会議」「コンセンサス会議」のような方法論を学び、日本国内でも何度か実践をすすめてきています。

思えば、2000年に「『ワールド・スタディーズ』からの10年」に、著者の一人を招いた時、彼が「対立の解決センター」に勤務するようになっていたことも、驚くような軌跡の一致でした。

これらの学びを踏まえたERIC独自のカリキュラム。ESD ファシリテーター養成講座。ぜひ、共に学びをすすめましょう。

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今年度は、東日本大震災を踏まえて、「子どもの権利」について、『いっしょに考えて! 人権』『いっしょにすすめよう! 人権』から、実践したい人権研修のプログラムを作成していきます。

ぜひ、ご参加ください。問い合わせ先 eric@eric-net.org

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研修プログラム
7月30日(土)
セッション1 共通基盤づくり
11.00-13.00
1. 自己紹介 「子どもの権利と大人の責任 知っていること・知りたいこと」
2. 研修への期待と二日間のすすめ方
3. 参加型学習について、知っていること、知りたいこと

セッション2 流れのあるプログラムの体験
14.00-15.50
1. 厳しい状況にある子ども
2. 子どもの気持ち
3. 肯定的な交流体験
4. 安心と信頼のための大人の責任

セッション3 参加型学習の特徴とファシリテーターの役割
16.00-18.00
1. 参加型学習の特徴
2. 価値観は育ったかな?
3. 参加型学習で伝えたい気づきと築きのスキル
4. ファシリテーターの役割

7月31日(日)
セッション4 プログラムづくりとファシリテーション実践
9.00-11.00

セッション5 プログラムの評価
12.00-13.50

セッション6 「みんな」の頭で考える・「みんな」の力で推進する
14.00-16.00
1. 子どもの権利と大人の責任「社会的養護」について考える
2. 現状分析
3. 行動計画づくり
by eric-blog | 2011-07-16 11:01 | △研修その他案内
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