Art of Hosting
の創始者の一人、デンマーク人のTOKAさん。 コンセンサス会議、シナリオ・ワークショップなどの、参加型市民合意形成の方法論を生み出したのはDBTデンマーク技術局だ。 そんな土壌のデンマークで始まった。心地よく共に語り合う場から生まれるものを信じて行われた会話の場。 どのようにそれが始まったのか。 Tokaさんたちが、対話の場づくりのための学習を始めたのは1995年から96年頃。学校の教員のためのワークシッョプとして導入し、5ヶ月にわたって、1ヶ月に一度ずつ集まった。最初はワールドカフェ、次はサークル、そしてオープン・スペースと、一つずつの手法を学び、一ヶ月の間に、それらを自分たちの現場で実践してみる。そしてその結果を共有し、「学びを収穫し」方法論を練り上げた。 では、なぜWorld CaféやAppreciative Inquiryが日本でこんなに広がったのか。 ・4人一組というのが、大集団の苦手な日本人の気質にあった。 ・聞く姿勢がすでに日本的なコミュニケーションのスタイルに存在した。 ・人と出会う、つながることができる場が求められていた。 ・ワールド・カフェの場での学びが、本人を変え、そして、それが日常での行動にも影響を与えた。 この二つの問いでほとんどの時間が過ぎてしまった。2時間半なんて短いねぇ。 ポイントは「問い」と「収穫」。TokaさんはHarvestingすることの価値を強調していた。この会合からも学ぶべきだし、得られたものを共有し、発信していこうと。それがデンマークでは意思決定者らの目に留まり、変化につながったのだと。 参加しているときに、『ポジティブ病』の本のエピソードを、読み返しているかのような感覚に陥った。 この場では、批判、ネガティブなという日本的意味合いでも、クリティカルという英語そのもの、分析的であることも、歓迎されないということが、つきささるようだった。 ほとんどが若い世代の参加者で、日本社会の生きづらさから解放される方法論と出会い、広げようとしている。解放の戦略段階だ。 そう、ちょうど20年前のERICに参加していたわたしたちの世代のように。 ふりかえってみると、戦後の市民参加と言えば、おおよそこのような変化をしてきたのであろう。 ◯社会主義革命を信じた労働運動の時代 ◯社会改革を求めた学生運動の時代 ◯食の安全を求めた消費者運動の時代 ◯南北格差の解消を求めた海外協力の時代 ◯持続可能な社会を目指した環境保護運動の時代 これら、市民参加第一期「諸運動の時代」は、国際社会の動きともあいまって、公式的な「市民参加」の時代の扉を開いた。これらの運動が「主流」に対する「アンチ」や対抗文化ではなく、「参加」と位置づけられるようになった。いまだに「運動」そのものを「アカ」と呼ぶような皮膚感覚は、克服されていないと思うものの、「市民参加の公式的市民権」が明文化されたことは事実だ。 社会に屹立して参加してきたという自負が、これらの担い手世代で、いまも続けている人びとには、あることだろう。 第二期は、NGO/NPOの時代だ。NPO法が成立したのは1998年。しかし、運動団体がNPOステイタスへとシフトした数以上に、「公共サービスの提供者」としてのNPOが爆発的に増えた。バブルの名残のような助成金や事業委託が、そこにはあった。いまの「仕分け」の時代、どれほどが生き残れることやら。「参加の文化」の一要素である「寄付」の文化がまだ育っていないまま、「ボランティア」をすることのできる労働条件も整わぬまま、公的資金が先細る中、非営利団体を維持することは難しい。 そして、それらのかっちりとした「組織」のいずれにも、企業文化と同じ「日本社会」の息苦しさを嗅ぎ取った世代(運動の時代の組織に対して、わたし自身もそのように感じ、忌避感を抱いたものだ。よくわかる)による「ゆるやかな参加」の時代が、いまなのだ。その特徴は、こんな風だ。 ・企業のためのコーチングや問題解決ファシリテーターが ・あるいはそのような役割が求められる企業から ・夜の短時間のカフェや週末に ・自分自身のスキルアップを求めて ・学生やスタッフのステイタスで 参加している。 収穫される合意事項の多くは「意識改革」だ。大多数の人びとの意識がシフトすれば、世界は変わる。そのために、メッセージをどう広げるか。 そのこと自体は悪くない。すでにテッド・トレイナーは1980年代に「今求められることは、大多数の人びとの意識を、このままでは続かないということに目覚めさせることだ」と言っている。 しかし、インターネット、ツィッター、『もしも、世界が100人の村ならば』の再話、再々話などを見ていると、メッセージも、消費されていることに気づく。 どんなに突拍子もないメッセージでも、「広がるメッセージ」がよいメッセージなのだ。 そう、だから市民参加第三期は「ゆるやかなメッセージ」の時代。 理屈っぽい話は、みんなわかっている。貧困、地球温暖化、環境破壊、肥満、不公平、不公正、格差、虐待、いじめ、ひきこもり、社会的びくびく人間、コミュニケーション不全症候群、パラサイト、ニート、プレカリアート、フリーター、非正規雇用、You just name it! Just Name It! 名付けたもの勝ち。名付けの流行が人びとの意識の上を慰撫していく。 メッセージなのか、名付けなのか、分析なのか、再発見なのか、再定義なのか。どこにも、時代の先を示すものはない。 いま必要なのは、役割を学ぶことではなく、人間を生きることだ。一人ひとりが、自分の人間を生きることだ。 ちょうど見た番組で、勝海舟のことばが紹介されていた。 「一人ひとりが思うように生きよ。世界は広い。どんなふうに生きていも、ちっとも困りはしない。」 http://cgi4.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=400&date=2010-11-14&ch=21&eid=27975 まさしく、このことがいま、求められることなのだ。 そのことの役に立たない「参加」の手法など、反動であったり、解放の空間であったり、代償であったりする ものなど、まやかしは要らない。 「本質的なもの」ということばが「正しさ」にとってかわっただけならば、 「正義」を求めていた人びとや時代と、いまとの違いはどこにあるのだろうか。 具体を語ろう、とBobさんは言った。 AoHのあの場で、「ワールド・カフェの場でも、こんな風に集まるだけでは、どこにも行かないのではないか、という声も出ているんですよね」という発言があったことも具体的だ。しかも、その人のからだが、引いていっていたことも、具体的だ。 分析的に深めようとすると、不安そうな表情を浮かべた大学生の存在も具体的だ。「両親が東京都の教員で、高校と小学校。教育の世界は、中からは変わらないと思う。教員にはならない。」と語ったのも、具体的だ。 「5年後、あなたはワールド・カフェをやっているか」という問いに、「いや、別にスタッフを手伝っているだけなので」と答えた人、 「まだ、わからない」と答えた人も具体的だ。 体験したことを語ることだけが具体的な語りというわけではない。 これらの発言の背景のたくさんに積み上がっているものを、共有できないなんてどうかしている。 わたしの思念は、リアルだ。 「わたしたちのやっていることの結果や変化は、わたしたちが生きている間には来ないようなことなのだよ」と言われたとき、そうだろうと思いはしつつ、「男のお前に言われたくない」とふくれあがったわたしの怒りは、リアルだ。 おまけに、そのとばっちりで、頭をコツンとたたかれたつれあいの痛みは、リアルだ。 「ポジティブな報告しか聞かない」ブッシュ前大統領は、きっと、大統領という役割を演じきるために、スタニスラフスキー的アプローチを自ら取っていたのだろうなあ。「大丈夫」というメッセージを、Genuineに、かつ自然に、内在的にメディアにさらし続けるために。 だんだん、日本における『ポジティブ病』も、心配になってきた。 確かにファシリテーターは、アファーマティブで、ポジティブであることが望ましいが、それは、 「絶望こそが希望である」ようなくぐりぬけが、必要なのではないのだろうか? うむむむむむ。 タイプの違い?
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| 2010-11-17 14:46
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