372-1(1591) 人権は「普遍」なのか 世界人権宣言の50年とこれから
小林善彦、樋口陽一、岩波ブックレット480、1999 世界人権宣言から50年を記念して行なわれたシンポジウムの報告。 「アジアにおける人権」とは何か 坪井善明さんが指摘している「日本にとっての三つの課題」が、わたし自身が人権研修で指摘していることと類似しているので、あらためてまとめておきたい。 ERICのメンバーも参加して1991年から93年にかけて行なった「日本型コンフリクト研究会」の成果として「日本社会の○△□」という日本社会の特徴をまとめるにいたった。 ◯均質さを好む △上下の力の格差の感覚が大 □ 変化を好まない、リスクを避ける そして、わたし自身は、これらの傾向と、現在の普遍的人権を追求する国際社会の課題との関係での課題を以下のように整理した。 ◯Diversity 多様性 △ Power Shared 力の分有とequity □ Process-oriented, future-oriented プロセス志向、問題解決・協力 坪井さんが26-27ページで指摘しているのは次のような課題だ。 1.人間関係のベースを上下から水平な関係に直す 2.閉じた社会から、もっと開かれた社会に 3.過去志向から脱して未来志向になる 前例を踏襲している生き方を過去志向と著者は言います。これらの三つをラディカルに変えることで、日本は非ヨーロッパの中で最初に先進国になった栄光と悲惨の両方を持ちつつ、「名誉ある地位」を占めることができるようになると、彼は、日本の再生に希望を語っています。 ちなみに、『人権は「普遍」なのか』の中でも「プロセスとしての人権」という考え方も、増田一夫さんという方が提言している。 果たして、その後10年、日本社会は、ラディカルな変革には踏み切れず、いまだにさまよい続けているようです。 さて、坪井さんは1994年に岩波新書から『ヴェトナム「豊かさ」への夜明け』を出しているヴェトナム研究者でもあります。今回、どちらの本を中心に紹介しようかと、迷いましたが。 わたしがカンボジアにいたのが1994年2月から3月。この本が出たのが1994年7月でした。どちらの国も、戦争の傷跡から抜け出そうとしていた時であったわけですが、歴史は、留まることを知らないですね。 人権をもとめる心が普遍なのだ。互いが人権を求めることを認めあい、未来のウィンウィンを目ざして協力する。それが人権教育か伝えるメッセージだと思います。 どのようなあり方が、環境、社会、文化のウィンウィンにつながるのでしょうか。ヴェトナム戦争から20年を経てまとめられた『ヴェトナム「豊かさ」への夜明け』は、社会主義と経済発展の間で葛藤する復興の姿でもあります。 ヴェトナムが、女性の権利が伝統的に強いお国柄であることも、学べました。ラオスやカンボジアとの関係も整理されていて、特にカンボジアの人びとが「アンコール王朝の偉大で栄光ある歴史の後継者として、文化的伝統の卓越性を「民俗の誇り」として一人ひとりが強く持っている。」53 という下りには激しくうなづいた。 都市から農村へと、距離が、空間が離れるだけでなく、時代をさかのぼる感じがあると、著者は指摘する。それを「2000年の共存」と彼は表現しているのだが、それは人間のなかに内在してもいるのだと。 これは、青木保さんが指摘した「日本文化の重層性」とも一致するし、日本の現実の一面でもあるなあと、感じた。 日本の援助の姿勢についても、著者は、その文化的な複雑も含めて「内在的に相手を理解した上で」援助する姿勢をと、提言する。担当者を専門家として育てず、2-3年で入れ替えていくことへの問題提起だ。 アジアっておもしろいなあ。
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| 2010-11-16 09:07
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