58-3(251-257) 身近な科学=文庫7册
教材開発のためのネタをひらおうと本屋に出かけたら、ちょうど具合のいいことに「自由価格本コーナー」に、科学関係の文庫がどっさり。ちょっと、ポポフ*という名前から誤解して買ってしまった本も含めて、いっきょに7册。 *ポポフ、アレクサンダー1859-1905 ロシアの物理学者。無線の創始期に活躍。 ------------------------------------- 251 エピソード科学史I 化学編 サトクリッフ、A. & A.P.D.、現代教養文庫736、1971年、1987年36刷 252 金属格子の中の文明-自由電子のもつ自由 山口幸夫、現代教養文庫906、1976年、1984年6刷 253 太陽とともに=自然と共存する技術 ボイル、G.、現代教養文庫960、1978年 なんと高木仁三郎と近藤和子の共訳 254 君の家にある宇宙=宇宙科学の実験 ラビザ、F.V.、現代教養文庫1337、1990年 255 水なんでも質問箱 鈴木宏明、現代教養文庫1021、1980年、2刷 256 竹べらとペン=考古学と随想 森浩一、現代教養文庫1213、1987年 257 楽しいバイクテクニック入門 ポポフ、J.S.、現代教養文庫1088、1983年 なんだ、現代教養文庫の安売りだったのね。社会思想社ってなくなったのかしら。2000年を最後に新しい本が出ていない。 ----------------------------- エピソード科学史I 化学編 サトクリッフ、A. & A.P.D.、現代教養文庫736、1971年、1987年36刷 紀元前3000年も4000年も前から使われているというガラス。*天然ソーダと砂がたき火の熱でガラスになった。炭酸ナトリウムと砂と熱というガラスを作るための要素がそこにあったという偶然。しかし、科学者にとって、あるいは科学の発展にとって大事なのは「観察する」こと「気づく」ことである。そして、それを「なぜ」と追求すること。 どうすれば、いまある世界を「当たり前」とか、思わずに、いつも驚きと発見を持って、対することができるか。社会が造り込まれていけばいくほど、大切な課題なのだろうな。 購入していないけれど、この同じシリーズで、物理、生物・医学、農業・技術の3册が出ている。 ------------------------------ 金属格子の中の文明-自由電子のもつ自由 山口幸夫、現代教養文庫906、1976年、1984年6刷 山口幸夫さんは、高木仁三郎さんなき後、高木基金などの運営にもあたっている人。湯浅さんなどと同じく、「科学」を疑う立場の人といっていいのだろうか。 おもしろいのは、経験的にわたしたちが金属と呼んできたものが、近代科学の中では、定義がどんどん難しいものになっていき、生物の中にも鉄や亜鉛が入っているというように、分かれば分かるほど、分かちがたくなるというジレンマがあることだ。 この本では金属を 1.固体状態で結晶をつくり 2.熱や電気をよく伝え 3.金属光沢をもち 4.線状に延ばしたり、薄い板に加工しやすい性質をもつ と定義しています。 しかし、次ぎのような変わった金属もあるそうです。 ・水に浮く金属 アルカリ金属 ・液体金属 常温で液体 水銀 ・泣く金属 スズ 115 固体状態で結晶をつくるもの=金属結晶、イオン結晶、共有結合結晶、分子性結晶 金属結晶は、自由電子の存在にって、熱伝導、電気伝導が高くなる。 116 地殻の化学組成: 酸素45、ケイ素25、アルミニウム、鉄、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、その他 地球の化学組成: 鉄38、酸素32、ケイ素15、... 54 日本の製鉄工場における「中央管理ビル」と「溶鉱炉のある現場」の「不公平な労働の形態」 57 道具の日本史* 168 金属の科学は 結晶学的性質、機械的性質、電気的性質、磁気的性質、光学的性質、熱的性質 の解明である。 この本は、「現代の博物誌」の7册の内の一冊。 「モンシロチョウの結婚指輪」「見る月・見られる月」「プルートーンの火」「水はめぐる」「縄文杉は何を見たか」「土は呼吸する」 おわりに248- 便利さの気掛かり 一 現代の便利さはどの人にもあてはまるか 二 便利さのおかげで手に入れた時間を何に使っているか 三 この便利さを生命の安全を犠牲にして手に入れているのではないか 環境倫理の4つの視点にもつながっていく視点だと思います。 ----------------------------------------- 太陽とともに=自然と共存する技術 ボイル、G.、現代教養文庫960、1978年 なんと高木仁三郎と近藤和子の共訳 ボイルは1945年生まれ。この本を執筆したときには、グロスタシャーの小屋で、「長年説いてきたことを実践に移しつつ」あったそうだ。原著1975年。Living On the Sun ポスト化石燃料の時代に、更新性のエネルギー資源利用のすすめではなく、「人間の欲求と、できる限りエネルギーを消費せずにそれを満足させる手段の研究」としての科学、政治経済学の本。 16 太陽の総ワット数は170兆キロワット/時=年間150京キロワット時のエネルギー。 食物を除く全世界の年間エネルギー消費量=60兆キロワット時。太陽のエネルギーの25000分の一。 30%は反射して宇宙へ(反射)。47%は蓄積され、暖める(加熱)。23%は水を蒸発させるエネルギーに(蒸発)。 0.02%が光合成。 20 人類が更新性のエネルギーを利用する方法; 帆船、風車、水車、蓄熱壁、木や植物の燃焼による酸化反応。 「AT=もう一つの技術システム」についての高木さんの解説つき。 家庭のエネルギー消費、植物の力、太陽光利用、風力、水力について、さまざまなエネルギーの計算をしている本なので、これ以上紹介することできないが、関連して考えるとすれば「廃棄物会計」がおもしろいかもしれない。 -------------------------- 君の家にある宇宙=宇宙科学の実験 ラビザ、F.V.、現代教養文庫1337、1990年 原著は1984年。訳者は藤川誠さん。高校の先生らしい。 真空、無重力、熱、運動の法則、反動、光り、時間、宇宙空間など、宇宙に関する現象を理解するために必要な項目について、実験できることを紹介している。さらに原著に紹介されているものの中から、身近な実験材料でできそうなものに限定して紹介されているそうだ。書名は、「自分たちの家で、実験で確かめられる」ということから。 --------------------------- 水なんでも質問箱 鈴木宏明、現代教養文庫1021、1980年、2刷 水資源、水の利用、水の質、水の値段、水と法律、水の供給、水の災害、水の浄化、水問題と対策、水の未来の10章構成からなる。一項目2ページ程度で、100項目。 ---------------------- 竹べらとペン=考古学と随想 森浩一、現代教養文庫1213、1987年 随筆集なのだが、なかなか示唆に富んでいる。 20「天皇陵古墳を疑う」 "仁徳天皇陵"的な遺跡名を使っている研究者は a. 実際にそれらの名称のあらわす天皇がそこに埋葬されているのは確実だと信じている b. 被葬者の当否の証明が困難なことに気づきながらも、学界の慣習のためか、宮内庁への遠慮で使っている c. そのようなことより高邁な研究に取り組んでいるので、無視している。 d. このような提案の意義がまったく理解できない。 いずれかのタイプである。 64 小学生や中学生の手紙は自己顕示欲が少なく、読んでいて清清しい。高校生や大学生のは、特定の事柄の質問が多く、それに答えるにはこちらが論文ひとつまとめることになるので、たいてい捨てる。また他人に解答を求めるという態度が私の考えにあわない。もちろん、自分の考えを述べて、それへの短評を求めているのは別である。 [まったく、賛成だ] 94-95 おそらく人類がもっている語彙のうちで、これほど嫌なものはあるまい。...命乞いという言葉が、その前提として人間の生命を掌握している個人または組織がむあるということである。...理由のいかんにかかわらず、人間の生命をもてあそんでいることである。 [高遠さんの「明日の命が知れぬ人に命乞いをしている」ことへの気づきを想起する。] 114「日本学の品物百種」* 154石人のない日本[全然関係ないけど、昨日つれあいと個人名を通りや公共建築物、特に空港につけない、ということについて、検討した。その共通文化圏は中国、韓国、日本だとつれあいは言う] 170「魚の煮付け型」「トンカツ型」 「トンカツ型」とは、山奥の旅館で、マグロやカツオの刺身を希望する人のこと。 197博物館で一日学ぶ子どもたち。 なぜこの本が「竹べら」となっているかというと、それが発掘の基本だからだそうだ。それらはすべて手作りなのだそうである。何本も、何種類も。 -------------------------- 楽しいバイクテクニック入門 ポポフ、J.S.、現代教養文庫1088、1983年 これがわたしが著者名でだまされて買った本。くやしいから、こんなことを考えてみた。 25 ギヤの選択とエンジンの回転数、とスピード。 27、137 コーナリングにおけるバンク角 コーナーのラインの取り方。 81 流れの速い川はななめに渡る いずれにしても、「頭のいい人」が上手なライダーということになるだろう。そして「頭がいい」というのは、経験学習の力、特に応用する力ということになるのだろうな。 こんなわたしは「負けず嫌い」ということになるのだろうか。 -----アクティビティのアイデア----------------- *身近な素材の歴史=PLTの「木でできているもの」の応用。「昔は木でできていた/いまは木ではないもの」のような分析を、身近な素材について行って、さらに、それらの素材がいつ頃から活用されているのかを年代別に並べてみる。 *同じく身近な技術についての歴史を確認する。「生活の便利を振り返る」の応用。 *「道具の日本史と世界との交流」というのもいいね。 *職業別に必要な知識 *趣味別に必要な知識 *日本を紹介するもの百を出し、その中から科学技術のあるなしについて分類する --------------------- 「わかりやすさ」「誰もが入手できる」などを基準に、学校で教わることがだんだんおもしろくなくなったということはあるのだろうな。そこをカバーするのが個々の教員であっただろうに。教員が「おもしろい」と思う気持ちを忘れているということなのだろうか。
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