コルトハーヘン氏「省察モデル」ワークショップ

コルトハーヘン氏「省察モデル」ワークショップ

オランダ、ユトレヒト大学の教師教育学者、フレット・コルトハーヘン氏によるワークショップの概要。

2010年9月24日 17時-20時 教職教育期間にある学生対象、約20名
2010年9月25日 10時-13時 東京都教育委員会、指導主事、その他約20名

省察については、これまでもこのブログでも、ERICの研修でも取り上げてきている。行動の氷山モデルも、対立の解決などのスキル・トレーニングの中で紹介してきた。そういう意味では、新しい学びは、その構成と、教師教育に対するメッセージだろう。
ぜひ、このモデルが多くの大学における教師教育の現場で広がってほしいと願う。

気づかされたことは、ワークシッョプの組み立てである。
26日の講演会に出ていないのでわからないのだが、コルトハーヘン氏の持ち札はこれだけではない。しかるに、「省察」に焦点を当てた3時間として、非常にうまく構成されている。その筋立てを紹介しよう。この組み立てそのものを伝導師として実践できるファシリテーターを何人か育ててはどうだろうか?

1.「学習」についての考え方の変化 「専門家から学ぶ」から「自らが学ぶ」へ  時代の要請の大きな変化 問い: この変化はなぜ?
2.「変化」の背景: 時代の変化の加速化=学んだことの陳腐化・時代遅れ化、成長し続ける力、自信、構成主義的学習者理解、新しい学習観への対応
3.そのために「省察」を、教員養成における学びに取り入れる
4.「省察モデル」: ①教えている状況 ②状況をふりかえる ③本質への気づき ④行動の代替案を作りだす ⑤試行してみる
5.「行動の氷山モデル」: 目に見える「行動」の海面下には、「考えていること」「感じていること」「欲していること」が隠されている。
6.「省察モデル」で本質にせまるための問いの構造:  「行動」「考えていること」「感じていること」「欲していること」についての4つの問いを、教える側だけではなく、学ぶ側についても、推察してみる。
7.省察モデルの実践ワーク: ペアで、ある状況について協力して省察する。
8.省察の演習:「実践ワークをふりかえる」 何を省察したか。成功例か失敗例か。
9.成功例をふりかえる
10.学校現場に当てはめる: 子どもにとって、大切なことは?
11.ワークショップそのものをふりかえる。「何が重要だったか」「それをどう活用するか」

それぞれのふりかえりから共有された「事例」を元に省察を深めていく方法が省察のリアルが見れてよかった。あれは、なかなか、誰にでもできることではないね。


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□印象的なコメント
・省察モデルの「第二局面」から「第四局面」に飛び込む人が多い。「どうしたらいいのか、答えがほしい」。第三局面の「もっとも大事な、本質的なことは何か」を抜かしてしまうと、枝葉末節な行動主義的改善だけに終わってしまう。
・「あなたにとって重要なこと」しか、育てられない。
・「Reflection in action」行動の中で省察する。
・Teacher as researcher. 調査研究者としての教員。
・子どもをよく観察する。強みを見いだし「名付ける」言語化する。Name it.


□ワークをサポートする「調査」研究の引用
・ミハイ・チクセントミハイ「フロー理論」
目の輝きによって、意欲や集中を「見る」ことができる。また、そのような時の学習は「速い」Learning go very fast.
・Martin Seligman 「ポジティブ心理学」
自分自身の強みを発見し、その強みを一日三回「強化」する機会を持ち、一週間実践し続ける。すると人は「幸福度」が増す。半年後でも、対照群とは有意に幸福度が違っていた。

□用語について
mentorメンター
『教師教育学』翻訳チームはmentor teacherのことを「指導教諭」と訳している。現場の学校における担当教員にあたる。米国、英国の事例で、大学の指導者がmentorする例があることは知っているが、日本ではどうなのだろうか? 教育実習の指導実態を知らないので、mentor teacherを、現場の学校限定的な役職名で訳していいのかどうか、ためらう。
strength力、強み
「力」と訳すと、内在的、内発的、自律的。「強み」と訳すと、相対的、比較の尺度のように、思えてしまい、とまどった。他と比較した「強み」を見いだすのか、その人に内在する「力」を見いだすのか。わたしとまったく逆のニュアンスを感じる人もいるんだろうなあ。
Growth competency 成長しつづける能力
これは、コルトハーヘン氏がミニレクチャーの中の重要なキーワードとして位置づけていると指摘した単語。「し続ける」と訳している翻訳者の感覚に、賛成である。が、訳しにくい言葉だよね。Competencyには「ある専門職にとって求められる標準として設定される力」遂行能力というニュアンスがあるから、もう少し「必須」という意味を強めたいところだ。
Counter-culture, comfort zone
文化的な快適感覚帯を脅かす、広げることを「counter-culture」文化対抗的な、と表現したのだろうが、「カウンターカルチャー」とか「サブカルチャー」とかって、特有のニュアンスがあるので、とまどうね。
Behave, act, action
Behaveは「振る舞い」や「態度」と訳される方に近い行動。Actはラテン語からで、その時の動き的なもの。
こだわり
参加者の発言で使われた「important重要だと思うこと」についての表現。Concernとか、particular, peculiarは心配とか偏りを感じさせるけど、「あなたにとって」と問われれば、出てくる言葉だよね。ぴったり訳せないけど。
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by eric-blog | 2010-09-27 19:08 | ☆よりよい質の教育へBQOE | Comments(0)
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