360-1(1552)心的外傷と回復
ジュディス・ハーマン、みすず書房、1996
PTSDとその後の治療や支援による回復について、トータルに書かれた本である。
「心的外傷とは権力を持たない者が苦しむものである。」46
外傷を受ける時点においては、被害者は圧倒的な外力によって無力化、孤立無援化されている。外力が自然の力である時、これは災害である。外力が自分以外の人間である時、これを残虐行為という。
外傷的事件が正常範囲を逸脱しているのは、・・・人間の人生への適応行動をめちゃめちゃにしてしまうからである。
回復のためには
基本的な安全の再建
自己肯定
親密性と攻撃性のバランス
男性は感情的に孤立しても、ほしいままに暴力を振っても、それに対する社会的許容度が広い。94
結局はこのことが、・・・いちばん身近な人たちと疎遠になる。95
心的外傷の体験の中核は・・・無力化と他者からの離断である。だからこそ、回復の基礎はその後を生きる者に有力化を行い、他者との新しい結びつきを創ることにある。205
外傷には伝染性がある。・・・そのため治療者はPTSDのさまざまな症状を自分の中で体験しはじめてもふしぎではない。217
援助を受け入れることは強さの証拠である。というリフレーミングを行なう必要がある。247
殴り殴られる関係においては、加害者側の誓約にもとづく安全の保障はありえない。・・・それは被害者の自己防衛能力にもとづくものでなければならない。263
虐待者は、相手を強制的にコントロールするという関係を取り戻そうとおもっており、被害者のほうはそれに抵抗したいと思っている。262
「たたかうことを学ぶ」310
21・22日、二日間の人権研修を行なった。
関係性とは応答性のことであり、応答性とはプロセスである。
人権尊重とは答えとしての知識や行動ではなく、対等な関係で作り上げられていく関係性と社会性のことなのだと、思う。
人権教育の場は、そんな対等な応答性、気軽に「ノー」を言えたり、気軽に修整を加えたり、疑ってみたり、試してみたり、することができ、一人ひとりが気づき、学びが深まる、人を伸ばすプロセスが展開している場なのだと思った。
決して対等ではありえないわたしたちが、努力と有力化によってしか、成し遂げられないこと、それが人権尊重ということなのだろうなあ。
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