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世界から見た日本の教育

358-1(1548)世界から見た日本の教育
編著 ローレンス・マクドナルド、日本図書センター、2009
海外の研究者らが日本の教育について論じたものを以下の三つに分類し、収録、分析したものが本書である。

社会化プロセス
教育改革
国際化とマイノリティ

第一部日本の教育の社会学
(1) クラスサイズ
日本の教育者は、「大きな学級は教員にとって運営しやすいものではないが、子ども同士の相互作用の機会が増えるので生徒にとってはよいことだ」という認識を持っていた。9
しかし、実際には子どもたちが扱いにくくなったと、多くの教員が感じている。また、学年がすすむにつれて、学習格差は大きくなり、クラスサイズは小さい方がよいという考え方は、小学校5年生においてより強くなる。10

(2) 生徒に学び方を教えること
「日本の教師たちが、かなり画一的なやり方で学習を組織している。」(ガードナーのいうような多次元的知性を活用していない。)11
より伝統的な方法でうまくいかない生徒になって、多様な学び手であるという認識にたったオルタナティブな方法が、有益であろう。
「もし児童たちの認識能力の得手不得手がさまざまだとすれば、児童たちが自分独自の学習方法を発見することにつながるような、また潜在的により効果的な学習を促進するような、オルタナティブな学習戦略を用意しないであることは手抜かりとなるだろう。」11

(3) しつけ
日本の教育者のアプローチは、仲間の圧力に重きを置く。しかし、いま現状では共感的アプローチが機能しにくくなっているのではないかと著者は指摘する。

(4) 教師/生徒の関係
日本の教育者は、生徒の道徳的、社会的発達を積極的に追求している。

(5) 小集団
半システムは、学級で課題を達成するための効率的なやり方である。「集団的自律性」

これらの分析の上で、著者は以下の点を指摘する。16


◯個々の子どもの学習ニーズにあわせる、学習差の存在には、大きな学級規模では適合できない。
◯学習スタイルの多様さ
◯規律の問題
◯閉じた社会構造の中に、外国人生徒が受け入れられにくい。


第二部日本における教育改革
(1)学校選択制
(2)習熟度別クラス編制
(3)中等教育の多様化
(4)「ゆとり」教育と学力低下論争
著者はゆとり教育、総合学習の中で実践された地域調査、探究型学習を支持し、OECDのデータに基づく研究には疑問を呈する。128
近年の教育改革論議が新保守主義サイドにシフトしており、これは他の先進国と一致するトレンドである。129

第三部日本の教育システムにおけるナショナリズム、インターナショナリズムとマイノリティ
(1)教育によるアイデンティティの形成
「歴史的には、現代教育システムは国家建設プロジェクトの産物であり、多様な言語と文化的背景によってばらばらだった人びとを象徴的アイデンティティへと東郷する。」264「ナショナル・アイデンティティは、自然に生じた事象ではない。」「ポスト・モダニストが論じるように、教育により創造される国家の文化は、もはや維持できない。」

(2) 日本の教室のマイノリティ


最後に「筆写からみれば、日本人は『』としてアイデンティティを持っており、教育によってナショナリズムを強化しようといった要求は余計なことである。しかしながら、日本においては教育が主たる政治的な闘争の場であり続ける、ということは断言できるだろう。教員と生徒がこの政治的な論争の真ん中に投げ込まれているという、不幸な状況は今後も続くのであろう。
日本の教員たちは学問的な基礎と創造的な教育実践とのバランスを取り続けていくだろうという確信がある。」

同意、だね。

論文や参考文献がていねいに整理、紹介されており、読みやすい。

Transcending Stereotypes: Discovering Japanese Culture and Education, 1991
by eric-blog | 2010-08-10 11:33 | ■週5 プロジェクト10
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