344-3(1496)闇の中に光を見いだす 貧困・自殺の現場から
清水康之、湯浅誠、岩波ブックレット780、2010
湯浅さんの本はすでにいろいろ紹介しているので、どこかにこっそり追加的に紹介しておこうかと思ったのですが、新刊である。清水さんは「NPO法人 自殺対策支援センター」を設立し、自殺対策基本法制定に動いている人である。貧困と自殺、それぞれが活動していたら、どこかで出会うことがあるだろうと。満を持しての対談。
共通する課題として、これまでにないサービスを生み出す苦しみを「行政の壁」のところで語っている。「形だけ福祉」(山井和則さん、厚労大臣政務次官)と、行政自身が自嘲的に言うのだから。
2008年末の日比谷公園テント村
2009年末の代々木オリンピックセンター
ソフトは昨年より落ちている。48
利用者の立場にたつという視点がないから。
「みんな、助けてもらってありがたかったという気持ちを持っているんだ。だけど、ああいう対応されたら、だんだんその気持ちが失われていくのがわかる。自分はこんな気持ちになりたくないのに、それが悲しい。頼むから、こんな気持ちにさせないでくれ」49
当然、みんなでがんばっていこうという気持ちも薄れていく。
余談であるが、清水さんの祖父が「この人が100歳まで生きないで、他に誰が生きるんだ」というぐらいの人が、93歳の入院でそのまま病院でなくなった。「私が見舞いに行くと、祖父は手で首を切る仕草をしていた」56
ライフリンクがまとめた『自殺実態白書』第二版、2008年。
個人的事情で死ぬのであれば、年によってもっと変動があるはずだ。その社会には3万数千人がセーフティ・ネットからこぼれていく構造的な欠陥があるのだと。